ちょき☆ぱたん 紙の豆知識 (chokipatan.com)

2-2-5 インクジェット・プリンタ用インク(顔料、染料)

 家庭用インクジェット・プリンタ用のインクには、染料系と顔料系の二種類があります。
 染料と顔料の大きな違いは、水や油などの溶媒に溶けるか溶けないかで、溶媒に溶かして使われるものが染料、溶媒に分散させて使われるのが顔料です。
 現在、家庭用のプリンタで使われるインクは染料系のものが多いですが、染料系インクは水で滲むことがあり、耐光性・保存性も劣るので、飾って楽しむことの多いペーパークラフト用の印刷には、顔料系のインクを利用した方が良いと思います。
 とはいえ顔料系インクが染料系インクより、ペーパークラフト用につかう場合の、すべてにおいて優れているわけではありません。顔料系インクは、染料系インクよりも、紙を折ったときにインクが剥がれ落ちることが多いのです。顔料系インクは紙との相性が大切ですので、顔料系インクのプリンタを使う場合は、顔料系用のインクジェット用紙を選んでください。(顔料系インクと相性のよいインクジェット用紙には、その旨、記載があります。記載のないインクジェット用紙は、通常は、染料系インク用だと考えてください)
 染料系、顔料系インクの特徴を以下に紹介しますので、インク(プリンタ)選びの参考にしてください。

(1) 染料系インク
 染料は水や油、アルコールなどに溶ける性質があり、粒子を持たない物質で、液体全体に色がついています。顔料のように色を塗るのではなく、紙の繊維の中に浸透して発色します。つまり、「染」料とあるとおり、紙を「染める」ことで透明感のある色を表現できるインクです。
 透明性があって、インクを重ねて印刷することができるため、写真などの高画質のプリントに向いています。染料系インクは顔料系よりも色素数が多く、濃度の高い美しい発色ができますし、用紙の表面にインクの凹凸ができないため、印刷のできあがりもきれいになります。
 ただし、用紙を濡らすと、紙の繊維に浸透しているインクと水が混ざって、滲んでくる場合があります。また、インクの液体を紙に染み込ませるという性質上、十分乾燥してから保存しなければならないので、紙が薄いと波打つ場合もあります。そして染料系インクは、顔料系と比べて保存期間が短く、色褪せしやすいという欠点もあります。
 このように染料系インクは、顔料系インクに比べて、耐水性・耐候性・耐光性・保存性では劣りますが、プリンタヘッドのノズルの詰まりに対して信頼性が高いこと、発色が美しいこと、安定性に優れていて扱いやすいなどの特徴から、現在の家庭用プリンタでは、染料系のインクが主流になっています。

(2) 顔料系インク
 顔料系インクは、インクの細かい粒子を紙の表面に残して着色するものです。顔料系インクは水に溶け込まない粒子で出来ているため、水に溶け込んでいる染料系インクよりも、色素数が少なく濃度も低くなりますが、染料系インクよりも耐水性の面で優れています。つまり、染料が水に溶けて繊維に染み込んで着色するのに対し、顔料は水や油に溶けきらず細かい色粒子を紙の表面にとどまらせて着色する(「絵の具を画用紙の上に塗りつける」というイメージ)という性質から、顔料系インクは、マットであまり透明性はありませんが、耐水性があって滲まないのです。用紙の中でインクと水が混ざりにくいため、水に濡れても滲みが抑えられるからです。
 また紫外線などへの耐候性もあります。このため顔料系インクは、耐水性・耐光性・耐候性の要求される屋外のポスターなどに向いています。
 その反面、紙に染み込んで着色しているのではなく、紙の上に塗りつけられて着色しているという性格上、光沢紙のような表面がツルツルした用紙に印刷したとき、表面をこするとインクがはがれてしまうことがあります(最近では、顔料インクでも、はがれにくい光沢紙も発売されています)。


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