ちょき☆ぱたん 写真補正の豆知識 (chokipatan.com)

第4部 画像データと印刷の基礎知識

4 画像データのカラーマネジメント(色合わせ)

4-4 カラーマネジメント

4-4-1 カラーマネジメントとは

 カラーマネジメントとは文字通り「色の管理」です。現状のパソコンシステムで使用されている色は、機器ごとに固有の色を持っていて、厳密な統一管理はなされていませんが、ある程度はされています。
 ディスプレイの色の再現方法が「光の三原色(RGB)の加法混色」で、印刷機の色の再現方法は「色の三原色(CMYK)の減法混色」なのですから、ディスプレイで表示しながら加工した写真を印刷機で印刷するまでの間に、RGB→カラーマネジメントシステム→CMYKと色空間を変換するシステムが必要なのです。
 このカラーマネジメントシステムは、入力された色をいったん「機器に依存しない絶対的な色(Lab色空間)」に変換します。そしてこれを出力機器用の色空間に変換します。たとえばディスプレイ→印刷機の場合は、RGB色空間→Lab色空間→CMYK色空間と変換します。このLab色空間は、「CIE XYZ」や「CIE Lab」などとも呼ばれていて、CIE(国際照明委員会)が定めた、人間の色覚測定をベースにした色空間です。
 ところでデジカメとディスプレイのような、再現方法が同じRGBを採用している機器であっても、このカラーマネジメントシステムによる変換が必要になります。色表現は「R:10%、G:15%、B:20%」のように相対的にあらわされているので、A社のディスプレイとB社のディスプレイでは違ってきます。機器が違うと、現実的な色の実現方法は違うのです。「R:10%、G:15%、B:20%」という数値が同じでも、実際に赤(R)の表現をするLEDや液晶の素材によっても色は違ってくるからです。
 このように厳密に「色を合わせる」ことは、非常に困難なことです。そのため、カラーマネジメントシステムは、色を完全に一致させることを実現してはいません。それぞれの機器(ディスプレイ、印刷機)が持つ固有の色を、機器に依存しない色空間(Lab色空間)を通して、できるだけ近似させようとしているのが、現状のカラーマネジメントシステムなのです。
 この記事ではWindowsユーザーのペーパークラフト愛好者を主に対象にしていますが、残念ながらWindowsはカラーマネジメントシステムに力を入れてきませんでした。プロのデザイナーさんたちにMacintoshユーザーが多いのは、Macintoshはかなり昔から「WYSIWYG」という「ディスプレイの表示内容と印刷結果を一致させる技術・概念」を目指していたので、意図した色の実現がWindowsよりは容易に出来たからです。現時点でもMacintoshの方が色管理に関しては優れていますが、WindowsもVistaぐらいからカラーマネジメントシステムに力を入れ始めたので、今後は向上が期待できるのではないでしょうか。
 ところで、この「カラーマネジメント」の項目でだけ、なぜか「プリンタ」を「印刷機」という表現にしているのに気づいたでしょうか。実は商業印刷用の印刷機のカラーマネジメントは「CMYK」なのですが、家庭用のプリンタ(インクジェット)については、カラーマネジメントとしては「RGB」のままで良いものが多いのです(プリンタ内部で、「RGB」の写真データをインクで印刷するまでに、どのような処理を行っているのかは不明ですが、おそらくプリンタごとに違うのでしょう)。家庭用のプリンタを使うのは、普通のデジカメ(RGB)で撮影した写真を年賀状に印刷したり、手紙を書いたりするごく普通の人々だと思いますので、面倒なカラーマネジメントのことを知らなくても、うまく印刷できるようにとのメーカーや業界の配慮なのでしょう。実際、一般向けのPhotoshop Elementsでは「RGB」を「CMYK」に変換する機能すらありませんし……(この機能はプロ用のPhotoshopにしかありません)。ですから、この面倒くさいカラーマネジメントの記事は、「ふーん、そういうこともあるの……」程度にどんどん読み飛ばしてくれて構いません(汗)。
 また最近のインクジェット・プリンタはCMYKの4色だけでなく、7色や8色のインクを使っているものが増えてきましたが、これは、より鮮やかに美しい色再現をするためです。家庭用インクジェット・プリンタは、商業用印刷機と違って、「標準的な色を出す」ことを目指しているわけではないので、メーカーも鮮やかな色表現をいろいろ自由に工夫しているようですね。やっぱり色がプリンタごとに「色々な」状況は、まだ当分続きそうです……。

スポンサードリンク