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第1部 本

ユーモア

弦のないハープ またはイアプラス氏小説を書く。(ゴーリー)

『弦のないハープ またはイアプラス氏小説を書く。』2003/11/23
エドワード ゴーリー (著), 柴田 元幸 (翻訳)


(感想)
 高名な小説家、イアブラス氏の日常を描いた絵本です(笑)。なお『弦のないハープ』というのは、作中で彼が執筆中の小説のタイトルです。
 表紙の絵の中で、弦のないハープに手をおいて宙を見据えるような表情をしているのが、そのイアブラス氏で、創作の構想の苦悩し、執筆した原稿の推敲を重ねる日常が、ゴーリーさんらしい不思議なユーモアにくるまれて描かれています。
 実は、この作品はゴーリーさんの記念すべき一作目(!)だそうで、当時、彼は本のデザインの仕事をしていて、作家の暮らしについては何も知らずにこの本を書いたそうなのですが……すごく「それっぽい」生活感(リアリティ)にあふれていて、さすがはゴーリーさん、「直感的に核心をとらえる」能力は、すでにこの頃から開化していたのですね☆ 後のゴーリーさんを彷彿させるイアブラス氏の日常については、ゴーリーさん自身、創作だったはずのものが、「後から現実になってしまった」と言っていたそうです。
 この作品は、全体が短編になるぐらい文量が多いので、残念ながら原文は載っていないのですが、日本語版には、柴田元幸さんのいつもの見事な翻訳があるだけでなく、この作品にまつわる「訳者あとがき」の内容もとても興味深いので、ぜひ日本語版でお読みください。
 イアブラスの日常……小説家だけでなく、創作活動を仕事にしている方には、どのページにも思い当たるところがあって、ニヤニヤしないではいられないと思います。
 また、イラストの中の骨董店で売られていたファントッド(何か妙な生き物)が、後の方で、ちゃっかり戸棚の上に載っているなど、イラストを細かく見ていくと、さまざまな発見があるのも楽しいです。
 この作品には、ゴーリーさんらしい怖さがほとんどなくて(イラストはちょっと怖いですが)、知的なユーモアに満ちているので、『うろんな客』ともども、ゴーリーさんの本を初めて読む方でも、とても楽しめると思います☆
   *   *   *
 ゴーリーさんの他の本、『まったき動物園』、『ウエスト・ウイング(The West Wing)』、他に関する記事もごらんください。

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