ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

動く&錯視錯覚の本

錯視錯覚絵本

ウエスト・ウイング(The West Wing)

『洋書:The West Wing』2009/11
Edward Gorey (著)

『和書:ウエスト・ウイング』2002/11
エドワード ゴーリー (著), Edward Gorey (原著)


(感想)
 この本は、しかけ絵本とは言えないかもしれませんが、イラストの持つ魔力を思い知らせてくれるので紹介します。
 文字のない絵本です。ページには、どこかの西棟(ウエスト・ウイング)が、白黒の線画で細密に描かれています。でも、どう表現していいのか……なぜか、どこかが怖いのです。
 ページをめくると、西棟(ウエスト・ウイング)の中に、どんどん足を踏み入れていってしまいます。お化け屋敷のように「きゃーーーっ!」と叫びたくなる怖さはありません。でも、「なにかがおかしい……」そんな張りつめた雰囲気が漂っているのです。
 声を出せません。息すら潜めて、不安な目が、ただ彷徨っていきます。
 絶対に起こって欲しくない、なにかとてつもなく恐ろしいことが、ドアの向こうに潜んでいるような不穏な気配がしています。
 それなのに……どうして、こんなに怖いのか、なぜか言葉では説明できないのです。

 これは、残念ながら、お子さんに勧められる絵本ではありません。サスペンス映画好きの方にだけ、お勧めします。
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 ゴーリーさんの『まったき動物園』、『ユーモア』に関する記事もごらんください。
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 エドワード ゴーリーさんは、不思議な絵本を出しています。この『ウエスト・ウイング』は、その謎の魔力が凄すぎるので、「しかけ絵本」に近いものとして、ここで紹介させていただきましたが、絵本のなかで一番好きなのは、実は、面白シュール感溢れる『うろんな客』と『弦のないハープ』です。機会があったら、ぜひ読んでみてください。ここで紹介した『The West Wing』は文字がないので、洋書でも和書でも、どちらでも構わないと思いますが、それ以外のゴーリーさんの絵本は、柴田元幸さんの翻訳が秀逸なので、和書版を読まれることをお勧めします。
 ゴーリーさんの世界に興味を持たれた方には、『エドワード・ゴーリーの世界』、『どんどん変に…―エドワード・ゴーリーインタビュー集成』という本もあります。
 また翻訳家(東京大教授)の柴田元幸さんの本としては、作家の村上春樹さんとの共著の『翻訳夜話 (文春新書)(これには続編の『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』もあります)』や、『翻訳教室』がとても参考になります。『翻訳教室』は、2004年10月から2005年1月にかけて東大文学部で行なった授業「西洋近代語学近代文学演習第1部 翻訳演習」の内容をまとめたものです。さらに、短編集(エッセイ集?)の『それは私です』は、すごく面白いショートショートが満載なので、お勧めです。(最初の「自動翻訳のあけぼの」には大笑いさせられました☆)

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