ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

動く&錯視錯覚の本

錯視錯覚絵本

空想の絵本

『空想の絵本』1999/10
安野 光雅 (著)


(感想)
 とても知的な遊び心に満ちた、不思議な絵本です。絵本というより画集というべきかもしれません。絵本というと、対象は主に子どものようですが、この本の絵は、目の錯覚や発想の逆転をテーマにしているので、柔軟な子供の目で見るより、ちょっと固くなってきた大人の目の方に、より斬新に映ると思うからです。その上、どの絵も、確かな画力で丁寧に描かれた、芸術性の高いものばかりです。
 「一次元を見る眼鏡」の不条理さ、「マクスウェルの悪魔」の困惑した表情など、どれも印象的で、いつの間にか、脳細胞の深いところまで忍び込まれているような気がします。
 そして、なんと、この不思議な絵の一枚一枚に、安野さん自身が制作秘話をつけています。絵を描いた時の「種明かし」まで、してくれているのです☆ 風刺画的な絵の場合は、世相がアイデアの種になっているせいか、他の人に類似した絵を先に発表されて、他の絵に描き直した……というエピソードのあるボツ画もありました。パクったわけではないので、そのまま発表しても良かったのでは、と思いましたが、芸術家としての矜持、あるいは誠実さのあらわれなのでしょう。
 それにしても……どれだけ引き出しがあるんですか、安野さん!
 炸裂する遊び心と知性、ANNOワールドに目がくらみそうな一冊です。
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 安野光雅さんのその他の本、『旅の絵本』、『きつねがひろったイソップものがたり (1)』、『きつねがひろったイソップものがたり (2)』、『ふしぎなたね』、『ふしぎなえ』、『安野光雅の世界―1974→2001』に関する記事もごらんください。
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 安野光雅さんには、この他にも素敵に不思議な本が多数あります。
 『安野光雅の画集』は、この本と同じく超☆不思議な画集ですし、『蚤の市』は『旅の絵本』的な絵さがしも楽しめる絵本、『もじあそび』はパズルのように楽しいひらがなの本です。
 また『魔法使いのABC』、『魔法使いのあいうえお』は、「アナモルフォーシス」という珍しい技法を楽しむ絵本(「アナモルフォーシス」とは、ゆがんだ画像を円筒などに投影したり角度を変えてみたりすることで、正常な形が見えてくるデザイン技法のことです)。
 さらに、『新編 語前語後』は、安野さんの旺盛な好奇心や卓越した視点の原点をちょっぴり見せてくれる自選エッセイ集。そして『あけるな』は、谷川俊太郎×安野光雅の伝説のコラボ作品で、「あけてはいけない」と書かれた扉からのヘンテコ世界の絵本です。
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 また、別の作家の本ですが、『ふしぎなナイフ』も、この本と同じような不思議な本で、とても人気のあるロングセラーです。

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