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第1部 本

地質・地理・気象・地球環境

見えない絶景 深海底巨大地形(藤岡換太郎)

『見えない絶景 深海底巨大地形 (ブルーバックス)』2020/5/21
藤岡 換太郎 (著)


(感想)
 深海に潜り空を飛ぶ(!)仮想の潜水艇「ヴァーチャルブルー」で、「見えない絶景」をめぐる世界一周の旅に出る本です。
 まるで現代の『海底二万里』みたいな、わくわく深海観光世界一周旅行☆ しかも世界じゅうの海に潜ってきた藤岡さんが、要所要所で自らの経験談や、科学的調査で分かってきた最新情報などを教えてくれるので、すごく興味深くて勉強にもなりました。
 例えば、日本海溝では、こんな感じ。
「日本列島の東には地球上で最大の海、太平洋が広がっています。太平洋のはるか沖、南米大陸の手前には、東太平洋海膨という海嶺、すなわち海底火山の山脈があります。ここでは、地下からたえず上昇してくるマグマによって太平洋プレートというプレートが製造されていて、新しいプレートは1年間に平均すると10cmほどの速度で日本列島に近づいています。しかし、太平洋プレートが日本列島に衝突することはありません。その手前で海底に沈みこみ、地球の内部へと呑み込まれていくからです。この沈み込みの場所が、日本海溝です。」
 ……日本海溝って、そんな場所だったんだ。
 この「第1章 深海底世界一周」では、ところどころ(ヒマラヤ山脈、アンデス山脈、ナミブ砂漠)で空を飛びつつ、世界の深海をぐるりと巡ります(第〇景:世界一周のロードマップ、第一景:日本海溝、第二景:深海大平原、第三景:シャツキー海台、第四景:ハワイ諸島ホットスポット、第五景:巨大断裂帯、第六景:東太平洋海膨、第七景:チリ海溝、第八景:大西洋中央海嶺、第九景:中央インド洋海嶺、第十景:坂東深海盆)。
 海底には、巨大な地形が広がっていました。なかでも「海嶺」の巨大さには驚かされました。
「地球上の海嶺は、じつは全部つながっています。つまり、すべての海嶺を「一つの地形」とみなすことができるのです。そう考えたときの海嶺の長さの総和はなんと、約8万km! これは地球2周分に相当します。まさに次元の違う巨大さと言えるでしょう。」
 ……深海底からマグマが上がってきてプレートをつくる場所、「海嶺」って、全部がつながってたんだ。凄いですね!
 そして、この本のさらに素晴らしいところは、深海の世界一周旅行だけでは終わらないこと。なんと、世界の「見えない絶景」を堪能した後には、深海の巨大地形と地球形成史についても解説してもらえるのです。2章以降の目次は、次の通りです。
第2章 深海底巨大地形の謎に挑む
第3章 プレートテクトニクスのはじまり
第4章 冥王代の物語
終 章 深海底と宇宙
   *
 巨大地形の謎や地球創生だけでなく、最終章では「宇宙」の話まで教えてもらえました。
 驚いたのが、2019年に『繰り返す天変地異』を上梓したマイケル・R・ランビーノさんの説。
「彼(ランビーノ)は、太陽系は円盤状の天の川銀河を上下運動しながら周回していて、銀河平面を通過する時に可視物質やダークマターと遭遇すると、それが刺激となって弾き飛ばされた彗星や小惑星が地球を直撃し、天変地異が起こると主張しています。そして、それは約2600万年周期で起こると述べています。たしかに、地球史のなかで生物の絶滅はこれまで大きなものが5回、小さなものは20回ほど起こっていますが、その間隔はおよそ2200万~3000万年とされていますので、話としては辻褄が合っています。この考えが正しければ、天変地異や大量絶滅は周期的に繰り返される天文学的な現象ということになります。」
 へー、天の川銀河を周回しているときの太陽系の位置で、「天変地異」が繰り返し起こってきた……なんだか、説得力が感じられますね! もしこれが本当なら、次の「天変地異」が予測可能になるのでしょうか。今後も、人間(またはAI)がどんどん進化することで、なんとか回避(あるいは、逆手にとって活用)できるようになると良いですね。
 深海の「見えない絶景」を楽しみつつ、「地球」を学べる本でした。「絶景(?)」写真は少なかったし、モノクロだけだったことが残念でしたが、藤岡さんの海底の描写力と解説の分かりやすさが、それを補ってくれていて、とても楽しめました。地学に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 藤岡さんの他の本『三つの石で地球がわかる』、『フォッサマグナ』に関する記事もごらんください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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