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第1部 本

脳&心理&人工知能

AI入門講座 人工知能の可能性・限界・脅威を知る(野口悠紀雄)

『AI入門講座 人工知能の可能性・限界・脅威を知る』2018/11/12
野口 悠紀雄 (著)


(感想)
 これからさらに進むであろうAIの社会進出に、私たち個々に問われるのは、AIをいかに活用しそれを武器として生き抜く手段を見出すかということ……野口悠紀雄さんがAIの可能性と限界などを、分かりやすく教えてくれる『AI入門講座』です。
 AIスピーカーなど、AIはすっかり私たちの身近な存在になりつつありますが、個人的に気になっているのは、AIを活用した「ユーザーの個性に合わせた広告」。自分が注目しているジャンルの商品をお勧めしてくれるので便利でもある反面、危ないものでもあるなー、と感じてしまいます。というのも、知らないうちに自分の購入履歴や検索履歴などを収集・吟味されているだけでなく、「視野」を狭めてしまいかねないものだからです。
 この本でも、「第3章 AIができること(2) プロファイリングとフィルタリング」で、その危険性が指摘されていました。
「また「知らないうちに誘導される」という問題もある。イーライ・パリサーは、『閉じこもるインターネット』で、「検索履歴を参照する結果の順位付けなどによって、人々は偏った情報を入手する」と指摘した。パリサーはこれを「フィルターバブル」と呼んだ。人々は、すでにレコメンデーションによって、企業が望むように誘導されているのかもしれない。こうした問題を監視することも必要だ。」
 まったくその通りですね。しかも最近は、AIは、商品の売り込みだけでなく、選挙活動でも活用されているのです。
「アメリカ大統領選挙でトランプ陣営が契約していたのが、データ分析会社ケンブリッジ・アナリティカ(CA)だ。同社がフェイスブック利用者の個人情報を集めてプロファイリングを行った。CAのシステム開発担当者は、コシンスキイのグループの研究成果に触発されたと述べている。そしてアプリを用いてデータ収集を行い、分析したのだ。これを用いてトランプの陣営は、大統領選挙において、セグメント分けされた対象ごとに異なるメッセージを送っていたと言われている。」
 そして最も気になったのは、「第8章 深刻な「中国問題」」。
「警察は、標準的な情報収集の際においても、指紋やてのひら採取、顔写真、尿およびDNAサンプルといった生体認証データ、そして音声パタンを収集する。公安部のデータベースには、10億人以上の顔データと、4000万人のDNAサンプルが記録されているという。そうしたデータは、公民身分番号とリンクされ、銀行口座記録や、高速鉄道や飛行機での旅行歴、そしてホテルの滞在記録などの詳細な個人情報と統合管理される可能性がある。それだけのデータがあれば、かなり詳細に個人の行動追跡することが可能だろう。」
「中国のAI技術は、いまや世界の最先端を走っている。」そうです。AIをこのように活用している中国社会は、国民を幸福にしていくのかどうか、これからも注目していきたいと思います。
 また、「第9章 AIはいかなる社会を作るか?」によると、未来社会では、人間不在でも動き続けられる「完全自動組織」が生まれる可能性があるそうです。
「AIとブロックチェーンが結合すると、「完全自動組織」が出現する可能性がある。(中略)例えば、AIによって自動運転が可能になればタクシーは無人になる。そのような企業において、いくつかの経営上の問題がある。例えば料金をどのように設定するか、ガソリンはどのような価格でどの給油所で給油するか、夜の駐車場はどうするか、修理補修をどうするかといった問題である。このような問題はルーティン的な決定であるから、ブロックチェーンで代替することが可能だ。すると、このタクシー会社は完全自動企業になるわけだ。これ以外にも様々な分野において、AIとブロックチェーンが結合した完全自動会社が現れるだろう。こうして、AIとブロックチェーンが組み合わさると、まったく人手を介さないわけではないものの、ほとんど自動的に事業を遂行することができる。では、そうした事業が事故を起こした時、どう対処するのか?」
 ……少子高齢化が進みつつある現在、このような「完全自動組織」の出現は不可避と予想できますし、それは必ずしも悪いことではないとも思います。ただし、その運用には注意が必要で、問題があったら「人間が積極的に介入して、場合によっては運用を長期間停止したり、構造を大きく変革したりすることが出来る」ようにしておくべきではないでしょうか。
 AIについて、いろいろなことを考えさせられる本でした。AIについてあまり知らない一般の方にとっては、AIがどんなものか(学習方式や機能も含めて)を知る手がかりになりますし、すでに知っている人も、今後、AIが社会にどのように影響を及ぼすようになるかを予想するのに役に立つと思います。ぜひ、読んでみてください。
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 野口さんの他の本、『世界史を創ったビジネスモデル』、『仮想通貨革命で働き方が変わる』、『仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない』、『ブロックチェーン革命 分散自律型社会の出現』、『データ資本主義 21世紀ゴールドラッシュの勝者は誰か』に関する記事もごらんください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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