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第1部 本

自己啓発・精神力

スタンフォードのストレスを力に変える教科書(マクゴニガル)

『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』2015/10/22
ケリー・マクゴニガル (著), 神崎 朗子 (翻訳)


(感想)
 ストレスは心身の健康にとって害になると考えられていますが、むしろ心身の健康に良い場合もあることを教えてくれる本です。
 一般的に、ストレスは心臓病、うつ病、依存症などさまざまな病気のリスクを高めると言われていて、健康心理学者のマクゴニガルさん自身も、これまで「ストレスを緩和するコツ」をアドバイスしてきたそうです。
 でも、1998年にアメリカの3万人の成人を対象に行われた調査で、「強度のストレスを受けていながらも、ストレスは健康に悪いと思っていなかった人たち」は、「ストレスがほとんどない人たち」よりも死亡リスクが低いことが明らかになりました。マクゴニガルさんは、この結果に愕然とし、自分自身の「ストレスは健康に悪い」という思い込みを捨てて、ストレスについてあらためて調査することにしました。
 その結果、ストレスには害もありますが、実は、効用もかなりあることが分かってきたそうです。
 例えば、金融機関のUBSで、「ストレスは体の回復力を向上させ、集中力を高め、人との結びつきを強め、個人の価値観を強化するのに役立ちます」というストレス・マネジメント研修を受けた社員は、健康面で向上し仕事の生産性もあがったという事例など、多くの調査結果が出てきました。
 ストレスには、実は、次の3つの効果もあるようです。
 1)困難にうまく対処する
 2)人とのつながりを強める
 3)学び、成長する。
 実は私自身には、この本を読む前から、すでに「ストレス=悪」という固定観念はなくなっていたので、これらの調査結果や効用を素直に受け止めることが出来ました。
 正直に言って、昔は、重い荷物を運ぶと、ただただ疲れてしまったり、理不尽な言動で困らせてくる人に怒りを感じたりと、ストレスを感じることが多かったのですが(しかも苦痛を口に出せないまま、ストレスをため込んでいました)、ある時ふと、「でも、これって悪いことばかりなのかな?」と思ったことがあり、これらのことは、むしろ自分にとって良いこともあるんじゃないかな、と考えるようになったのです。
 重い荷物を運ぶことで身体が鍛えられると思えば、何も持たずに歩くより、むしろ同じ時間を有効活用しているのだとも言えますし、理不尽な言動で困らせる人のおかげで、他の嫌な人たちと話をする機会があっても、じっと我慢して聴く忍耐力がつき、やがては思い切って反論できるようになる精神力を育てることができたのです。このように、同じ行動をしていても、自分の捉え方ひとつで、それをストレスにもトレーニングにも変えられることに気づきました。
 その後、ジム レーヤーさんの『メンタル・タフネス』などを読んで、「肉体と同じように、精神も鍛えられる」ということを知り、精神的にストレスを感じている時は、実は、自分の精神能力を高めるチャンスなのだという考えを強めることが出来ました。その後も、いろいろな自己啓発書を読むたびに、「ピンチはチャンス」というポジティブな気持ちに自分を導くことが出来て、最近では、あまりストレスを恐れなくなってきています。
 とは言っても、いままさに強いストレスのさなかにある方に、この本を勧められるかどうかは分かりません。人間の精神は、強さと弱さ、高揚と落ち込みの間で揺れ動いているのが普通だし、辛い環境のさなかで、頑張らなければならない……とじっと耐えて頑張っている人に、「頑張って!」と励ますことが、その人を追いつめてしまうことだってあります。しかも辛い時には、無理に自分をポジティブな気分に持っていくよりも、思いっきりネガティブに落ち込んだ方が、むしろその後の立ち直りがうまくいくことも多いのです。
 この本でも、「ストレスは力に変えることが出来ますよ、だから「ストレス=悪」と考えないようにしましょう!」と直接勧めているわけではありません。調査結果や事例の紹介を通して、そのことを、読者自身に判断してもらおうとしているように思えます。心理学者のマクゴニガルさんには、他人が「ストレスを力にかえましょう」と力説したところで、言われた本人が自分の心で、「そうしよう」と思わない限り、心を変えることは出来ないことが、よく分かっているのでしょう。
 それでもこの本をじっくり読むと、自分の「ストレス」を良い方向に変えていくことが、自分の心身に良い影響を及ぼしていくことを信じられるようになっていきます。
 そして自分で自分の「ストレス」を良い方向に活用したいと思う人には、章の終りにある「ストレスを見直すエクササイズ」、「ストレスを力に変えるエクササイズ」が、きっと手助けをしてくれることでしょう。
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 マクゴニガルさんの他の本、『図解でわかるスタンフォードの自分を変える教室』、『[生声CD付き]スタンフォードの「英語ができる自分」になる教室』、『スタンフォードの心理学講義 人生がうまくいくシンプルなルール』に関する記事もごらんください。
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 マクゴニガルさんは、他にも『スタンフォードの自分を変えるヨガ教室 DVD付き』や、『ケリー・マクゴニガルの痛みを癒すヨーガ』、『「呼吸法」で体と心が劇的に変わる (病気にならない! 太らない! ストレスに強くなる!)』などの本を出しています。
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 別の作家の本ですが、『スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック』、『スタンフォード大学 マインドフルネス教室』、『ハーバード集中力革命』、『自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義』など、自己啓発の参考になる本は多数あります。

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