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第1部 本

脳&心理&人工知能

意識をめぐる冒険(クリストフ・コッホ)

『意識をめぐる冒険』2014/8/7
クリストフ・コッホ (著), 土谷 尚嗣 (翻訳), 小畑 史哉 (翻訳)


(感想)
 意識研究で世界をリードするクリストフ・コッホさんの、「意識」をめぐる哲学的・科学的考察集です。これ以前に出されたコッホさんの『意識の探求』よりも短いので読みやすいですし、コッホさんの考え方も、より分かりやすく説明されているような気がします。「意識」というものの実体は、まだ科学的に解明されてはいませんが、この本を読むと、クリストフ・コッホさんの「意識」研究に対する姿勢とともに、その研究の最前線の状況がよく分かって、とても参考になります☆
「意識」とか「無意識」とかいう言葉を、私たちはなんとなく使っていますが、その実態は何かを考えてみると、なんだか分からなくなります(汗)。でも無意識に、なにかぼんやりと理解できているような気もするのですが……。「思考の総体?」、それとも「魂」みたいな感じ? やっぱりよく分からない……。
 コッホさんはある日、歯がズキズキ痛んで眠れなかったことから、その痛さがどこから来るのかを考えたそうです。歯髄から脳に送られた信号のせい? でも、単に有機物の塊にすぎない脳の何が、どう痛いという感覚を生むのだろうか……。
 こうしてコッホさんは、意識をめぐる冒険(研究)へと踏み込んでいきます。時には、コンピュータ(アンドロイド)に意識を持たせることは出来るのかを考え、人間に画像を見せるなどの調査を行い、ネズミなどの脳細胞を使って実験を行い……あらゆる手法を使って、解決不能とも思える「意識とは何か」という問題を解明しようと試みます。
 ところで、そもそも「意識」については、明確な定義が確立されてすらいません。コッホさんは、本書の中で、彼の次の四つの定義を紹介してくれています。
1)常識的な定義:意識は、私たちが日々経験する精神生活そのものである。
2)外から見て判断できる動作や行動をもとにした定義(行動科学的定義):いくつかの反応や行動を満たせば、その生物には意識があると判定する(例:グラスゴー昏睡尺度など)
3)神経レベルの定義(神経学的定義):意識が成立するために必要最小限の生理学的な仕組みに着目する。
4)哲学的定義:意識とは「何かを感じるときの感じ」。(経験主体にしか分からない、言葉では説明できないもの)
 この中で、2)と3)が研究を進めるのに最も役立つと、コッホさんは考えています。
 そして研究の最終目的は、物理法則の支配する物質世界が主観的経験を生み出す仕組みを説明し、なぜある種の神経活動だけが意識を生み出すのかをも説明する理論を完成させること。その理論は具体的で定量的で検証可能なものでなければならない、と言います。
 これは、300年前に哲学者のデカルトが、ボヘミアのエリザベス王女に投げかけられた疑問、「物質ではない魂が、物としての脳に対して、どのようにして何らかの影響を与えて、脳を操ることが出来るのか?」に対する答えを見出そうとする試みそのものだと思います。
 この『意識をめぐる冒険』でコッホさんは、自分の世界観・人生観をベースに、科学から宗教まで幅広く考察をめぐらしていて、読み進めるにつれて、さまざまなことを深く考えさせられます。
 土屋さん、小畑さんが、分かりやすさを心がけて翻訳してくれたおかげで、とても読みやすく分かりやすくなっていますので、ぜひ読んでみてください☆
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 コッホさんの他の本『意識の探求』や、コッホさんとともに研究してきたクリックさんの『DNAに魂はあるか―驚異の仮説』に関する記事もごらんください。
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 別の作家の本ですが、『意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論』、『〈わたし〉はどこにあるのか: ガザニガ脳科学講義』、『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』、『コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか』など、脳や意識に関する本は多数あります。

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