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第1部 本

文学(絵本・児童文学・小説)

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オズの魔法使い

『オズの魔法使い』2003/8/19
ライマン・フランク・ボーム (著)


(感想)
 大竜巻に家ごと吹き上げられた少女ドロシーが、愛犬トトとともに魔法の国を旅する冒険物語で、映画やミュージカルにもなっているアメリカの人気ファンタジー古典(1900年)です。
 故郷のカンザスに戻りたいという願いを叶えてもらうため、ドロシーは、エメラルドの都にいる大魔法使いオズに会いにいくのですが、その途中、「脳みそ」を欲しがるかかし、「心臓」を欲しがるブリキの木こり、「勇気」を欲しがるライオンが仲間に加わってきます。
 襲い掛かってくるさまざまな苦難を乗り越えて、彼らは無事に願いをかなえることが出来るのでしょうか?
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
 子どもの頃、ジュディ・ガーランドさんの名作古典ミュージカル映画『オズの魔法使い』を見て、美しくて不思議な魔法の世界にたちまち魅了されました。その後、続編の映画『オズ (Return To OZ)』や、しかけ絵本などでも楽しませてもらい、もちろんこの原作小説『オズの魔法使い』も楽しく読んだのですが……、今回、感想を書くために読み直して、すごく困惑してしまいました。
 えーと、いったいドロシーたちは、この冒険で何を得たのでしょうか?
 かかしは最初から賢かったし、木こりは根っから優しい人で、ライオンもみんなのために頑張る勇気がありました。そしてドロシーは……実はオズに降り立った直後から、戻るための重要アイテムを得ていたのです。
 子供の頃は、単純に、ドロシーやトト可愛い☆ かかし、木こり、ライオン、みんないい人たち☆ でも……魔女なんて倒せるのかな? というわくわくどきどきとか、家が吹き飛ばされるほどの大竜巻なんてスゴイ!(これは現実にも起こることがあると知ってとても驚き、気象への関心をかきたてられました)という、ごくごく普通の感想しか持たなかったのですが、今回は、読みながら、頭の中にどんどん「???」が積み重なっていって困りました(汗)。
 なぜなら……魔法の国の強力な魔法使いや魔女にも倒せないはずの邪悪な東と西の魔女を倒したのは、可愛い少女ドロシーの「不可抗力」と「弱点とは知らずに、つい、やっちゃって」だなんて、よく考えると、結構シュールですよね。しかも好都合にも二人とも「高齢すぎて」、死体を残さずに、たちまち、しぼんで消えてくれた上に、周囲みんなに感謝されるので、少女の心にトラウマもあまり残りません(笑)。
 うーむ。これはどう考えたらいいのか……果たしてこれでいいのか……と悩んでいたら、物語の最後の最後に、「いい人たち」のかかし、木こり、ライオン三人組が助け船を出してくれました。
「ドロシーは、実は、オズの国に来た初日からでも、カンザスに戻ることが出来たんですよ」と教えてくれた南の魔女グリンダに、彼らはそろって、「でもそうしていたら、わたしはすばらしい(脳みそ・心臓・勇気)をもらえませんでしたよ」と言うのです。
 ああ、そう、そうだ☆ 成長には、プロセスこそが重要なんだ!
 素晴らしい仲間と一緒に苦労して目的を達成した経験こそが、一番の宝なのだ!
(でも……よく考えると、かかしたちも別に「脳みそ・心臓・勇気」をあらためて「もらう」必要の方もなかった……という皮肉な事実には目をそらしつつ)
 うん☆ 人生って、そういうものですよね。なにしろ人生の最終目的地は「死」なんだし、人類がどんなに知恵を積み重ねても、太陽系どころか銀河系にも寿命があるんだし……(いきなり巨大スケール虚無のぶちかまし)。でも、それでも生きているうちは、素敵な仲間と一緒に苦労して頑張りましょう! そういう経験こそが、生きがい=人生の素晴らしい宝になると思います☆
 よし、これで、最後はうまくまとめた……のか?
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 この『オズの魔法使い』には、ボームさん自身による続編(以下の全14)の他、ルース・プラムリー・トンプソンさんなどによる続編も多数書かれています。また、映画や舞台としても何度も使われているのは……この作品の舞台となる魔法の国の美しさだけでなく、やはりその内容の不可思議さ(シュールさ)が、心にひっかかってしまうからなのでしょうか(笑)。
<参考(ボームさん自身による作品)>
「オズの魔法使い」、「オズの虹の国」、「オズのオズマ姫」、「オズと不思議な地下の国」、「オズへつづく道」、「オズのエメラルドの都」、「オズのつぎはぎ娘」、「オズのチクタク」、「オズのかかし」、「オズのリンキティンク」、「オズの消えたプリンセス」、「オズのブリキの木樵り」、「オズの魔法くらべ」、「オズのグリンダ」
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 この本を原作としたサブダさんのしかけ絵本『オズの魔法使い』に関する記事もごらんください。
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 『オズの魔法使い』には、ロビンソン,ニコラ・L.さんによるしかけ絵本や、映画『オズの魔法使』や、続編映画の『オズ はじまりの戦い』のDVDなどもあります。(以下ではBlu-ray版も紹介しています)(なお続編映画の1つ『Return to Oz』は残念ながら輸入盤しかないようでしたので、商品紹介は見送らせていただきました)
 なお小説の続編は、ハヤカワ文庫から『オズの虹の国』などがシリーズで出版されたようですが、かなり古くて入手しにくいようです。これらにはKindle版があるようなので、参考までに以下で紹介させていただきました。

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