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海底二万里

『海底二万里』2012/8/27
ジュール ヴェルヌ (著)


(感想)
 潜水艦で海底を旅する空想科学小説です☆ 現代SFの父といわれるジュール・ヴェルヌさんの不滅の傑作といわれる作品なので、子供の頃に読んだ方も多いと思います。これが書かれたのは、なんと1870年(明治2年!)なのですが、今、読み返しても、とても心を打ちます☆
 ところで1870年には、潜水艦は「できたてほやほや」の最新鋭科学発明品といっても良いものでした。1620年には潜水艇が作られていたのですが実戦投入はされず、1864年に、最初の動力(非人力)潜水艦として、フランス海軍の「プロンジュール」が潜水試験に成功したばかりだったのです。これはタンクに貯蔵された圧縮空気を使った空気エンジンで推進し、エンジンは80馬力、4ノットの速度で5海里 (9 km) の航続距離があったそうで、最大潜行深度10m、衝角と電気発火式の外装水雷で武装した潜水艦でした。この物語に登場する潜水艦ノーチラス号は、これをさらに進化させたもののようです。また作中で、海底電線まで出て来るので驚きです。
 物語は、一八六六年に起こった奇妙な事件、「動く暗礁」が次々に海難事故を引き起こすところから始まります。パリ科学博物館のアロナックス教授は、従者の若者コンセーユとともに、この事故の原因究明のため太平洋に向かいました。
 ……『地底旅行』の旅先が海底に変わっただけかよ!という突っ込みがあるかもしれませんが(汗)、今回のアロナックス教授はきわめて精神的に落ち着いている常識人で、前回のリデンブロック教授のような破天荒な面白さはありません。そのため今回の旅行は「珍道中」ではなく、「海底の科学的調査」や「人間らしく生きるとはどういうことか」を究めていく旅になります。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
 さて、フリゲート艦で太平洋に向かった彼らは、日本近海で巨大な怪物「電気一角」と遭遇しますが、衝突と竜巻でアロナックス教授たちは艦から放り出され、銛打ちのネッドとともに浮島にたどり着いて命びろいをします。実はこの浮島こそが、反逆者ネモ船長指揮する潜水艦ノーチラス号だったのでした。こうして彼らは、ネモ船長に拾われ、潜水艦で世界中の海を探検することになるのです。
 自由と海を愛するネモ船長はとても紳士的で、捕囚の身となったアロナックス教授たちは、陸地には戻さないと告げられはしたものの、意外に快適な生活を送ることが出来ます。潜水艦から眺める海底の情景に興奮し、潜水服を着て海底を歩き(!)、さまざまな生物を見て食べて……研究者として心躍る生活が始まったのでした(笑)。この潜水艦の暮らしや海底の様子がすごく具体的に詳しく描写されるので、読みすすめていくと、本当に潜水艦の窓から海底を覗き込んでいるような気がします。
 また平和主義者・進歩主義者で知られるヴェルヌさんらしく、インド近海で真珠採りを行う人々が、少ない報酬でいかに過酷な労働を行っているかなどの状況も語られます。
 そして、どんな状況でも冷静さを失わず、考え工夫し行動するネモ船長の心の底には、実は激しい怒りや復讐心が渦巻いていることも明かされていきます。
 南極の厚い氷や巨大なタコとの死闘……今回も、はらはらしながら読み進めているうちに、神秘と驚異の大海洋に関する深い知識を知ることが出来ます。
 そしてこの『海底二万里』は、そればかりではなく、人間として気高く生きるとはどういうことか、ということまで考えさせてくれます。素晴らしい作品です。ぜひ一度は読んでみてください☆
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 ヴェルヌさんの他の本、『地底旅行』、『神秘の島』、『二年間の休暇(十五少年漂流記)』に関する記事もごらんください。
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 ヴェルヌさんは、他にも『月世界へ行く』などの本を出しています。

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