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第1部 本
教育(学習)読書
英国エリート名門校が教える最高の教養(ノーマン)
『英国エリート名門校が教える最高の教養』2024/4/8
ジョー・ノーマン (著), 上杉 隼人 (翻訳)

(感想)
英国の名門パブリックスクール(中高一貫校)が伝授する「本物の教養」を教えてくれる本で、主な内容は次の通りです。
はじめに
Chapter1 何を読むか
Chapter2 どう読むか
Chapter3 どう書くか
Chapter4 エッセイをどう構成するか
Chapter5 ストーリーをどう語るか
おわりに
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「はじめに」には、英国エリート名門校(ウインチェスター・カレッジ)をほかの学校と違うものにしたのは、「役に立たない学び」だと書いてありました(笑)。
通常は、「給料が高いよい仕事を得るために教育をする(道具主義)」ことが多いのですが、ここで言う「役に立たない学び」は、利益を求めない学び。楽しいから、学ぶことそれ自体に価値があるから学ぶものだそうです。
著者のノーマンさんは英国エリート名門校で十から十三歳の子供たちを指導しているそうで、その子たちが「三十年後も覚えていられるようなことを教えたい」と考えているようです。もっとも、その前提にあるのは、「名門校生徒の両親は高学歴・裕福・意識も高いので、子どもは学業で失敗することはない」という安心感もあるようでしたが(笑)。
さて「Chapter1 何を読むか」では、「英国エリート名門校の秘伝「教養のための必読リスト144冊」」が解説つきで紹介されています。
例えば「ノンフィクション(原則、笑えない)」の最初の五冊は……
『サピエンス全史』『ホモ・デウス』(ユヴァル・ノア・ハラリ)
『ホーキング、宇宙を語る』(スティーヴン・ホーキング)
『フェルマーの最終定理』(サイモン・シン)
『21世紀の資本』(トマ・ピケティ)
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(マックス・ウェーバー)
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続いて「フィクション(あまり笑えない)」ジャンルの最初の五冊は……
『動物農場 おとぎばなし』(ジョージ・オーウェル)
『虫とけものと家族たち』(ジェラルド・ダレル)
『不思議の国のアリス』(ルイス・キャロル)
『ドリアン・グレイの肖像』(オスカー・ワイルド)
『バーバリー・レーン28番地 メリー・アン・シングルトンの物語1』(アーミステッド・モーピン)
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そして「フィクション(笑えるかも)」ジャンルの最初の五冊は……
『たのしい川べ』(ケネス・グレーアム)
『ふくろうくんとこねこちゃん』(エドワード・リア)
エドワード・ゴーリー 作品を問わず何でも
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(J・D・サリンジャー)
『ポスト・オフィス』(チャールズ・ブコウスキー)、『孤独な娘』(ナサニエル・ウエスト)
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さらに「フィクション(笑える)」ジャンルの最初の三冊は……
『銀河ヒッチハイク・ガイド』(ダグラス・アダムス)
『こわいい動物』(ロアルド・ダール)
『キャッツ ポッサムおじさんの猫とつき合う方』(T・S・エリオット)
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……この他にも「コミックとグラフィックノベル」、「アジアの作家」「ノンフィクションのウェブサイト」などのジャンルの本が紹介されていました。
ここで紹介されている本を見ても分かるように、とても十から十三歳の子供たちが読むようなものには思えないほど「難しい本」が多くて驚きました。「ノンフィクション」には他にも『国家』(プラトン)、『ファスト&スロー』(カーネマン)、『利己的な遺伝子』(ドーキンス)、『君主論』(マキアヴェッリ)、『リヴァイアサン』(ホッブス)、『新訂 孫子』などがあげられていました……「大人向けの教養」の本も充実しています。
その一方で、「フィクション(あまり笑えない)」ジャンル以降は児童書の比率がぐんと高くなり、本が嫌いな人にも読みやすい本も充実しているので、とてもバランスがいいのかもしれません。
さて、本書のタイトルは『英国エリート名門校が教える 最高の教養』ですが、内容的には「国語」の授業に近いような気がします。目次でも分かるように「読む・書く」がメインテーマです。
どの章もとても参考になったのですが、個人的に特に勉強になったのが、「Chapter4 エッセイをどう構成するか」。以下にその一部を抜粋紹介します。
・「エッセイ(essay)は、「試す」を意味するフランス語のessayerから来ている。「質問に答えること」だ。」
・エッセイを書き出す最良の方法は、まずはふたつの対立する意見による「二項対立」を設定すること。
・「「自分の意見に賛成しない」ことは、考え方を二倍に増やすよい方法であるだけでなく、エッセイを自然なものにもできる。段落ごとに、「賛成」「反対」「賛成」「反対」を順に示すことで、構成をきっちり整え、ドライブ感をもたせることができるのだ。それだけでなく、自分は公平である、と思わせることもできる。」
・「(前略)誰かの反対意見に耳を傾けて、受け入れるべきことを受け入れるのは、自分にとって意味があり、価値があることだ。なぜなら、反対意見に自分の見解を照らし合わせてこれでよいのだろうかと疑うことをしなければ、本当の意味で考えているとは言えないからだ。だから必ずしも全面的に賛同できない新聞や雑誌も読むようにしている。それによって、考えが改まることも少なくないし、自分の考えが深まることもよくある。」
・「(前略)本物でもまやかしでも、率直に話せば信頼が築かれるのだ。」
・「シンプル・イズ・ベスト。簡単に記すのがいちばんだ。」
・アリストテレスによる「自分の主張の正しさを納得させる」三つの方法
1)エトス:倫理(適切に行動すること、道徳的に行動すること)
2)ロゴス:論理(事実と数字)
3)パトス:情熱、苦しみ、感情(物事の決断には、感情が大きな役割を果たす)
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『英国エリート名門校が教える最高の教養』……「本物の教養」を支える〈読み〉〈書き〉〈ストーリーづくり〉について、具体的に教えてくれる本でした。114冊のブックガイドは小学生高学年から大人の方にとって、とても参考になると思いますし、とりわけ「国語」が苦手な方には、とても勉強になるアドバイスがたくさんあると思います。自分の教養を高めたいと考えている方は、ぜひ読んでみてください☆
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『英国エリート名門校が教える最高の教養』