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第1部 本
天文・宇宙・時空
宇宙人と出会う前に読む本(高水裕一)
『宇宙人と出会う前に読む本 全宇宙で共通の教養を身につけよう (ブルーバックス 2176)』2021/7/15
高水 裕一 (著)
(感想)
「あなたはどこから来ましたか?」
さまざまな惑星の宇宙人が集う社交の場で、もしそう尋ねられたら、あなたならどう答えますか?
いつか宇宙人と出会ったとき、恥をかかずに交流できるようになるには、地球の常識にとらわれず、宇宙のすべてにおいて通用する普遍的な教養を必要がある……そんな「宇宙共通の教養」を教えてくれる本で、主な内容は次の通りです。
プロローグ 宇宙のとあるカフェにて
第1章 あなたはどこから来たのですか?
第2章 あなたは何でできていますか?
第3章 あなたたちの太陽はいくつですか?
第4章 あなたは力をいくつ知っていますか?
第5章 宇宙の破壊者を知っていますか?
第6章 宇宙の創造者を知っていますか?
第7章 宇宙最古の文書を知っていますか?
第8章 あなたは左右対称ですか?
第9章 数のなりたちを知っていますか?
第10章 宇宙人の孤独を知っていますか?
第11章 エネルギーは何を使っていますか?
*
この本は、惑星際宇宙ステーションに地球チームの一員として乗り込んだあなたが、そこで遭遇する宇宙人がつぎつぎ繰り出してくる突拍子もない質問に答えていくうちに、宇宙で本当に必要な科学知識とは何か、宇宙的思考法とはどういうものかが、自然とわかってくるように構成されているそうです。しかも宇宙教養がどれだけ身についたかを「宇宙偏差値」を算出してチェックすることもできます(笑)。
「第1章 あなたはどこから来たのですか?」では、「地球から」という答えでは通じないとして、次のように書いてありました。
「(前略)宇宙人が自分の住んでいる惑星の位置を伝える場合、その惑星が公転している「恒星」、つまりその宇宙人にとっての「太陽」の位置情報を基本とすることになるはずです。」
……確かに……。この質問にはもちろん「地球から」と答えてしまいましたが……このアドバイスを聞いた後でも、「太陽」があまりにも熱すぎるだけに「太陽から」とは言いにくいです。せめて「太陽系から」と言いたいような……。第3章によると、地球の住所は、次の通りだそうです。
「うお座くじら座超銀河団Complex おとめ座超銀河団 おとめ座銀河団 局所銀河群 天の川銀河オリオン腕 太陽系第3惑星地球」
ここでは他に次のようなことも……
・「(前略)天の川銀河の直径は約10万光年もあり、その中には約1000億個の恒星があります。」
・「(前略)私たちの太陽は、銀河の中心から約2.6万光年離れたところにあるとみられています。銀河の半径が約5万光年なので、太陽は中心から端までのほぼ真ん中に位置しているということです。」
……銀河はおよそ2兆個あり、その中にそれぞれ1000億個の恒星があるとしたら、恒星の数は無数にあるとも言えますが、なんとすべての恒星は、「色」で次の7種類に大別できるそうです!
1)青:OB型、寿命は1000万~1億、重量型、寿命が短くて生命誕生は無理
2)青白:A型、寿命は4億~12億、標準型、寿命が短くて生命誕生は無理
3)クリーム:F型、寿命は30億、中量型、生命は短期間だが誕生するかも?
4)黄(緑)色:G型、寿命は100億~150億、軽量型、生命誕生可能?
5)オレンジ:K型、寿命は200億~1000億、低温型、生命誕生可能?
6)赤:M型、寿命は1000億~10兆、極低温型で巨大型、生命誕生可能?
7)褐色:LYT型、寿命は10兆~ほぼ死なないほどの長寿、未熟型(星になりかけのもの)、エネルギー不足で生命誕生は無理
*
……恒星の「色」でこんなに違いが分かるとは……驚きでした。
続く「第2章 あなたは何でできていますか?」では、答えを「タンパク質と……」と言いかけて、いやいや「酸素、炭素、水素、窒素とか……」と言い直しました(元素なら宇宙共通だから)。
そんな元素の合成は、なんと「宇宙最初の3分後から20分後までの17分間」で行われたそうです! 次のように書いてありました。
・ビッグバン元素合成では、原子番号1(水素)から原子番号5(ホウ素)までが作られた。
・その後、恒星内元素合成で、3つのヘリウムから原子番号6の炭素が合成され、さらに重い元素が、次々連鎖反応で合成された(原子番号26の鉄まで)。(なお太陽の重量程度では原子番号6までしか合成できないので、それ以上はさらに重い恒星で作られたそうです。)
・超新星元素合成で、鉄より重い元素が作られた(原子番号92のウランまで)。
……そして、これ以上の元素は自然界では作られないそうです。
とても驚かされたのが、「第3章 あなたたちの太陽はいくつですか?」。地球のような恒星1個で衛星も1個という星は、とても珍しいそうで、なんと星の半数以上が「連星」だそうです。
……この時点では、ふーん、そうなんだとしか思いませんでしたが(苦笑)、連星のカレンダーは、次のようにとても複雑なのだとか(1日の時間も変わってくる)。
「太陽が2つあると、まず日の出をどちらの太陽が出たときにするかで悩む。どちらかの太陽が圧倒的に大きければそっちを基準にすればいいが、同じくらいの大きさだと、そもそも区別もつけにくい。そして日の出が決まらなければ、一日の始まりも決められない」
……ここでは連星のカレンダーの説明を読むだけで、頭がくらくらしてきました……。
さて、日本では主に太陽暦を使用していますが、月の動きを利用した陰暦を使っている国も多いそうです。太陰暦に使われているのは、「月の公転周期ではない」ことを初めて知りました。
「暦に利用されるのは、月の「公転周期」ではなく「会合周期」と呼ばれるものです。公転周期は月が地球を一周する周期で、27.3日です。しかし、これは暦に使われませんでした。なぜなら月が地球を一周してもとの位置に戻ったとき、地球も太陽の周囲を公転していることによってもとの位置にはいないので、地球と月は27.3日前と同じ位置関係にならず、地球からは同じ月に見えないからです。
そこで、先に進んだ地球に月が追いつくまでの時間も加えたものが会合周期です。その周期は29.5日で、これが暦に利用されました。たとえば満月から次の満月までがこの周期となります。こうして、月を利用した暦では会合周期が暦の1ヵ月の単位となったのです。」
……言われてみれば、その通りですね!
そして第5、6章では、宇宙の物質の95%以上を占める未知のもの(ダークマター、ダークエネルギー)についての説明が、とても面白く感じました。
宇宙は3つの時代に分けられるそうです。宇宙のはじまりから……
1)光の時代(約5万年間)
2)物質の時代(約100億年間)
3)ダークエネルギーの時代(現在)
……となっているそうで、なんと現在は「ダークエネルギーの時代」なのです!
そして「ダークマター」と「ダークエネルギー」は似たようなものかと思っていましたが、実はまったく正反対のもので、「ダークマター=創造神」、「ダークエネルギー=破壊神」なのだとか。
「(前略)ダークマターは過去に宇宙を創造し、ダークエネルギーは未来の宇宙を破壊するのです。」
「第6章 宇宙の創造者を知っていますか?」によると、宇宙が始まるときの急激な加速膨張によって、密度の濃淡ができた(原始ゆらぎ)のですが、この「濃いめの場所」にたくさんの水素やヘリウムが集まって来て、それらがかたまって星になり、さらに銀河、惑星、衛星、恒星系をつくったそうです。そして、このような構造をつくるための「濃いめの場所」がダークマターで、つまりダークマターが土台となって銀河や銀河団という大規模構造ができ上がってきたようです。
一方、ダークエネルギーの方は、「基本的な性質として、宇宙を加速度的に膨張させる」ので、最終的に銀河同士は、お互いの光がまったく届かないほど引き離されることになり、宇宙は「空っぽの虚無」のような状態になってしまうようです。
『宇宙人と出会う前に読む本 全宇宙で共通の教養を身につけよう』……読む前は、名前のイメージから、面白系トンデモ本か、あるいは「地球紹介」本(外国人に日本を教えるイメージで、宇宙人に地球のことを教えるための知識の本)かなーと想像していたのですが、意外にも(?)ガチで「宇宙に通用する教養」を使って、宇宙人と会話するための本でした(笑)。
とても科学的で、かなり難しい内容を含む本でしたが、「宇宙共通」という視点が新鮮で、とても勉強になりました(視野が宇宙まで広がった感じです)。みなさんも、宇宙人と出会う前に、ぜひ読んでみてください☆
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『宇宙人と出会う前に読む本』