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第1部 本
天文・宇宙・時空
宇宙はどうやってつくられたのか(吉田直紀)
『本当に感動する サイエンス超入門!宇宙はどうやってつくられたのか (サイエンス超入門!シリーズ)』2024/12/16
吉田 直紀 (監修)
(感想)
宇宙はいったいどのようにして誕生したのか……宇宙の成り立ちを軸に、太陽系や銀河といった天体、そして宇宙の“生涯“について、やさしく解説してくれる本で、主な内容は次の通りです。
はじめに
第1章 宇宙はどれだけ広いのか
第2章 宇宙はどのようにして誕生したのか
第3章 ダークマターとダークエネルギーの謎
第4章 「宇宙の果て」はあるのか
第5章 天体時代と宇宙の終わり
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この本は科学雑誌Newtonの本なので、「宇宙はどうやってつくられたのか」については、ビッグバンなどが、いつものNewtonらしく分かりやすく解説されていました(いつもの超美麗イラストはありませんが、分かりやすいイラストはあります)。
個人的にとても興味深かったのが、「第3章 ダークマターとダークエネルギーの謎」以降。
まず「ダークマター」については、次の二つの謎が、「ダークマター」の存在を示唆しているようです。
1)渦巻銀河は中心に恒星が集中しているので、中心から遠いほど回転速度が遅くなりそうなのに、何故かそうなっていない
2)銀河団の個々の銀河はちりぢりになってもおかしくないのに、何故かまとまりを保っている
……銀河や銀河団をダークマターが覆っていて、その重力で銀河たちを繋ぎ止めているのかもしれないようです。次のように書いてありました。
「ダークマターの正体は謎ですが、「見えない」「普通の物質をすり抜ける」「質量をもつ」という性質を持つと考えられています。(中略)
これらの特徴から、ダークマターは「未発見の素粒子」でできているのではないか、と考えられています。現在知られている素粒子(それ以上分割できない粒子)は、前述した三つの特徴をみたしていません。つまり、新たな素粒子がダークマターの正体だと考えられるのです。」
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そして「ダークエネルギー」については……
「宇宙が加速膨張をしている理由は、宇宙を収縮させる重力に空間の「斥力(反発力)」が勝っているためだと考えられています。そして、この空間の斥力の正体がダークエネルギーだと考えられています。
ダークマターは普通の物質と同じように周囲に重力を及ぼします。そしてその正体は未発見の「粒子」と考えられています。一方、ダークエネルギーは「宇宙空間に均一に満ちている」ようです。
宇宙の中のある領域から、ダークマターの粒子を含むすべての物質を取りのぞいて真空にしたとしても、ダークエネルギーはまだその空間に満ちていると考えられています。ダークエネルギーはどうやら、「空間(真空)自体がもつ性質」のようなのです。そのため宇宙が膨張しても“薄まらない”と考えられています。」
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どちらもまだ「正体不明」のようですが、本当に不思議なものですね……。
そしてもう一つ興味津々だったのが、「第5章 天体時代と宇宙の終わり」。なんと今から数十億年後には、天の川銀河とアンドロメダ銀河は衝突するようです。ただしぶつかっても銀河の中はスカスカなので、銀河どうしが衝突しても、恒星どうしが衝突することはほとんどないようですが……。
「(前略)このとき、銀河の構造は大きく乱れます。相手の銀河の重力の影響を受け、それぞれの星の運動が変化するのです。(中略)
さて、一度はすり抜けて距離がはなれた両銀河は、たがいの重力によって引き合い、ふたたび接近します。二つの銀河はこうした衝突をくりかえしていくのです。
もともと渦を巻いていた両銀河の形は、衝突のたびに大きく崩れていきます。そして約60億年後、最終的には両者は一つにまとまり、巨大な「楕円銀河」になると考えられています。」
……驚きの事態が発生してしまうんですね! あれ? でも「宇宙は膨張している」のに、こんなに離れている二つの銀河が衝突するって、矛盾してない? と思う人がいるかもしれません。実は、宇宙空間が膨張していても、複数の銀河が近くにある場合、重力で結びついているので、宇宙膨張によって離れていくことはないそうです(宇宙膨張の効果より、重力の方が強いから)。天の川銀河とアンドロメダ銀河は「十分近い」ので、重力で引き合ってしまうようです。
そして太陽系の未来は……
「(前略)今から約60億年後、太陽の中心部では核融合の燃料である水素がつきてしまうと考えられています。水素がつきると、太陽は急激に膨れ始めます。」
……その後、太陽は赤色巨星になってしまい、水星や地球は、巨大化した太陽に飲み込まれてしまうのかもしれないようです。
さらに1000億年後には、超巨大銀河が誕生し、見える範囲に他の銀河はなくなってしまいます。恒星の材料もなくなり、宇宙は暗くなっていくようです……。
・「赤色矮星が燃えつきたあと銀河に残っている天体は、大小さまざまなブラックホール、重い恒星の残骸である中性子星、軽い恒星の残骸である白色矮星が冷えて暗くなった天体(「黒色矮星」と呼ばれることもあります)、そして褐色矮星や惑星、衛星、小惑星などです。」
・「銀河から明るい天体はほとんどなくなり、宇宙は暗闇となります。そして銀河もしだいに“蒸発”して小さくなっていきます。」
・「陽子崩壊後にしばらく残っていたブラックホールも、周囲に飲み込む物がなくなると、それ以上大きくなれなくなります。するとブラックホールは蒸発(ブラックホールが光や電子などを放出し、少しずつ軽く小さくなっていく現象)により、少しずつ小さくなります。」
・「さて、宇宙の加速膨張がつづいていくと、素粒子の密度はゼロに近づいていき、素粒子どうしが近づくことさえほぼなくなっていきます。(中略)このような宇宙では、何も変化が起きません。時間がたっても何も変わらないわけですから、時間が意味をなさなくなります。事実上の「時間の終わり」と言えるでしょう。」(ビッグフリーズ)
……これが今のところ最も可能性が高い、宇宙の最後のシナリオのようですが、別の仮説もあります。
・「ビッグフリーズに達した宇宙は、トンネル効果によって大きな「障壁」をこえ、ミクロな宇宙に生まれ変わると考えられています。」
……このミクロな宇宙は、宇宙誕生時に起きたインフレーションと同じような状態になり、また新しい宇宙の歴史を創っていくのかもしれません。
この他にもダークエネルギーの密度との関係で、宇宙の終わりには、「ビッグリップ」仮説や、「ビッグクランチ」仮説という、いつくかの仮説もあることが解説されていました。
『本当に感動する サイエンス超入門!宇宙はどうやってつくられたのか』……宇宙の「はじまり」と「終わり」について、最新研究をもとに分かりやすく解説してくれる本で、とても勉強になりました。宇宙に興味がある方は、ぜひ読んでみてください☆
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『宇宙はどうやってつくられたのか』