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第1部 本
IT
新・半導体産業のすべて(菊地正典)
『新・半導体産業のすべて AIを支える先端企業から日本メーカーの展望まで』2025/1/8
菊地 正典 (著)
(感想)
「産業の米」と呼ばれ、クルマやパソコン、家電などあらゆる機器・製品に搭載されている半導体。半導体産業について総合的に詳しく解説してくれる本で、半導体業界の現状から過去の経緯、さらに半導体とはそもそも何か、どうやってつくられているのか、代表的な会社名、今後の展望の他、次の巻末資料も掲載されているという、まさに『新・半導体産業のすべて』の本です。
<巻末資料>
◎半導体メーカーと主要製品一覧
◎半導体用語集
◎海外と日本の半導体主要工場の新設状況
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半導体とは「導体と絶縁体の中間物」のことですが、その作り方についてはあまり詳しくありませんでした。この本によると、半導体を作る工程の概要は、次の通りのようです(本書ではもっと詳しい解説があります)。
<半導体を作る工程>
1)設計工程
1-1)設計:EDAツールを用いて合成・検証・シミュレーションを繰り返し、論理・回路・パターン・レイアウトの設計を行う
1-2)フォトマスク:シリコンウエハー上に多数のICを作り込むため、3次元構造を有するICの各層のパターンを転写するフォトマスク(レクチル)を作製する
2)前工程
2-1)FEOL:さまざまな装置と材料、およびフォトマスクを用い、シリコンウエハー上に多数のICを作り込む工程の前半部分(トランジスタなどの素子形成)
2-2)BEOL:さまざまな装置と材料、およびフォトマスクを用い、シリコンウエハー上に多数のICを作り込む工程の後半部分(配線形成)
2-3)ウエハー・プローブ検査:完成したシリコンウエハーのICチップの1個1個に探針(プローブ)を当て、電気特性を測ってチップの良・不良を判定する
3)後工程
3-1)ダイシング:検査の終わったシリコンウエハーを、ダイヤモンドカッター(ダイサー)により1個1個のチップに切り分ける
3-2)組立:選ばれた良品ICチップをパッケージに搭載し、チップ上の電極とパッケージのリード線を細いワイヤーで接続し、パッケージに封止・収納する
3-3)信頼性試験:ICの信頼性を評価する(バーン・インテスト)
3-4)最終検査:製品スペックに沿って、ICの特性を測定・検査し、ICとしての良品・不良品を判定する
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そして半導体産業には、その設計、製造から販売まで一貫して行うIDM(Integrated Device Manufacturer)から、IDMを取り巻く関連メーカー(EPA、IP、装置、材料)、ファブレス(工場をもたずに半導体の開発・設計のみ行う)、ファウンドリー(半導体製造の前工程作業を行う)、OSAT(半導体製造の後工程作業を行う)など、さまざまな種類の会社があるそうです。
例えば、代表的なIDMメーカーとしては、インテル(アメリカ)、サムソン電子(韓国)、キオクシア(日本)などが紹介されていました。
今後は、DXの進展、AIの普及、メタバース、自動運転、拡大するIoT技術などにより、半導体の需要がいっそう押し上げられることが予想されています。
本書では、さまざまな半導体の利用例も紹介されていましたが、なかでも興味深かったのが「医療用カプセル型内視鏡の中にも使われているIC」の例。
「胃カメラや大腸内視鏡などは昔から使われていますが、最近では先端的半導体技術を活用したものとして、カプセル型内視鏡も登場してきています。カプセル型内視鏡では、内部組織を照らすためのLED、撮影のためのイメージセンサー、外部とデータのやり取りをするための無線通信用IC、全体制御のためのマイコンやASIC(特定用途向けのIC)などが含まれています。」
……ということで、内部構造のイラスト付きで紹介されていました。小さなカプセルの中に、ボタン電池やアンテナもあって、小さいながらも周囲を撮影して無線で画像を送信する機能を備えた機械だということがよく分かります。
またエネルギーを扱う「パワー半導体」というものもあるそうで、これは電力の制御や変換をする半導体で、パワートランジスタなどがあるようです。
さらに今後、利用が拡大しそうなのがAI半導体で、これは……
「近年、生成AIの登場によって、処理にかかる計算量が爆発的に増大し、超並列かつ高効率で処理できる半導体が必要になっています。これに伴い、先に述べた各種半導体(プロセッサ)を1個のチップに搭載したSOC(System On a Chip)が開発されています。」
……というもの。このようなAI演算処理を高速かつ効率的に行うことに特化した半導体群の中には「右脳的な機能を持ったニューロモーフィックチップ」というものもあって、それは……
「これまでのノイマン型コンピュータは、演算と記憶が分離しているため、両者間の情報のやり取りが高速化・高性能化を阻害する要因、いわゆる「ノイマン・ボトルネック」になってきています。この問題を克服し、人間の脳に匹敵するAI(人工知能)ソリューションを実現するため、まったく新しい原理に基づくAIチップが研究・開発されています。このチップは「脳型」チップ(ニューロモーフィックチップ)と呼ばれ、その名の通りニューロンを模したハードウエア構造を持ったチップです。」
……脳型チップの例としては、IBMのTrueNorthなどがあるようです。なんか、凄いですね……。
『新・半導体産業のすべて AIを支える先端企業から日本メーカーの展望まで』……半導体産業について総合的に解説してくれる本で、とても勉強になりました。
半導体は「産業の米」、すでに幅広く利用されているだけでなく、今後も利用の拡大が見込まれているので、教養として知っておいて損はないと思います。半導体について知りたい方はもちろん、最新知識をアップデートしたい方も、ぜひ読んでみてください☆
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姉妹編の『新・半導体工場のすべて 設備・材料・プロセスからAI技術の活用まで』という本もあります。
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『新・半導体工場のすべて 設備・材料・プロセスからAI技術の活用まで』