ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
健康&エクササイズ
からだの「衰え」は口から(水口俊介)
『からだの「衰え」は口から 歯と健康の科学 健康寿命を左右する口のケアの最前線 (ブルーバックス B 2288)』2025/2/20
水口 俊介 (著)
(感想)
体の衰えは口から始まる……歯と健康の関係に最新科学で迫っている本で、巻末には、専門家が伝授する正しい歯磨きの方法や、気になる疑問をまとめたQ&Aもあります。主な内容は次の通りです。
序章 「健康」は口から――日本人の歯の現状
第1章 口の中に広がる世界――知っているようで知らない構造
第2章 「噛む」を科学する――咀嚼は脳と口の共同作業
第3章 歯周病とむし歯――歯の健康と全身の病気との関わり
第4章 中高年は歯のケアが健康のカギ――歯を守って「衰え」を防ぐ
第5章 「歯が抜けた」から始まる連鎖――フレイルサイクルに陥らないために
第6章 高齢者の歯科治療
第7章 最新歯科技術はどこまで進んでいるか
第8章 健康長寿を口もとから
実践編 今日から始める 「正しい歯磨き」
付録1 歯磨き よくある疑問 Q&A
付録2 歯にまつわる素朴な疑問 Q&A
*
「序章」では、「オーラルフレイル」という言葉について、次のように解説されていました。
「(前略)口腔の機能の弱まりを表す概念で、口の中のむし歯や歯周病によって、かたい物が噛めなくなり、食事の栄養バランスが崩れることも一因と考えられています。」
個人的にとても勉強になったのが、「第3章 歯周病とむし歯」。次のように書いてありました。
・「歯周病は、(中略)「歯ぐきが腫れて血や膿が出る」というイメージは正しいものの、歯ぐきの病気ではありません。魚の骨が歯ぐきに刺さって腫れて血や膿が出るのは、歯周病ではないのです。歯周病は、「歯」と「歯を支えている歯槽骨」の間にある歯根膜の病気のことをいいます。」
・「(前略)歯は、歯槽骨の中にハンモックのように吊り下げられているということになります。そして、この歯根膜繊維で吊り下げられた28本の歯は、自分の体重あるいは自分の背筋力と同程度の噛む力を発揮するのです。」
*
……歯周病は全身の状態に関連しているようです。
「(前略)歯周病による全身性の炎症反応の亢進が血管障害の発症および進行に関与することが示唆されています。」
また、むし歯(う蝕)については……
「歯冠部に比べて根面は、う蝕になるリスクが高いのですが、その理由の一つが構成成分の違いです。根面のセメント質は薄く、脱灰は象牙質でも進行していきますが、象牙質はミネラルに加え、格子状になったコラーゲンと水が約30%含まれています。そのため、脱灰ではミネラルの溶出とともに、細菌の酵素によりコラーゲンが分解されます。しかし、唾液にはコラーゲンを修復する作用がないため、エナメル質よりも象牙質のう蝕は進行しやすいのです。」
……なるほど。私も歯の下の方がむし歯になることが多いような気がしていましたが、こんな理由があったんですね。
歯周病や根面う蝕の予防法は、フッ素入りの歯磨剤で歯磨きすることと歯垢の除去をすることだそうです。
そして「第4章 中高年は歯のケアが健康のカギ」では、オーラルフレイルになるのを予防するために……
「(前略)オーラルフレイル期に突入しない、また一度なったとしても、その状態を脱して健康な状態に戻すためには、口腔リテラシーを高めて口腔清掃を励行し、う蝕や歯周病の発生を押さえて歯の欠損を防止するとともに、欠損が生じた場合には適切な義歯を装着することが大切です。また、良好になった口腔で友達とのお喋りなどをして、かたい物でもどんどん食べ、栄養バランスを確保することが重要です。」
……と書いてありました。ちなみにオーラルフレイルの基準は……
「(前略)新しいオーラルフレイルの基準は「残存歯数の減少」「咀嚼困難感」「嚥下困難感」「口腔乾燥感」「活舌低下(下口唇運動機能の低下)」の5項目となっており、このうちの2つ以上が該当すると「オーラルフレイル」であるとされています。」
……重要なのは「咀嚼能力+栄養指導」のセットだそうです。
また「第6章 高齢者の歯科治療」では、他の疾患に対する配慮が非常に重要になるので、患者に求められることは、自分が持つ病気についてできるだけ詳しく理解すること、自分の体の状況を、歯科治療の際に話すことと書いてありました。
巻末の「実践編 今日から始める 「正しい歯磨き」」では、歯ブラシの動かし方が、イラスト入りで説明されていました。(なおライオン株式会社のホームページで、このイラストを見ることができるようです)
そして「付録1 歯磨き よくある疑問 Q&A」には、例えば次のようなQAがありました。
・「Q8 歯磨き後、口をゆすぎすぎないほうがよいのですか?」
「A8 はい。フッ素入り歯磨剤でなるべく長く歯を磨き、フッ素成分を口の中にできるだけ長く留めておくためにも、ゆすぎすぎないようにしてください。(後略)」
*
『からだの「衰え」は口から 歯と健康の科学 健康寿命を左右する口のケアの最前線』……口の中の構造や、咀嚼の科学的解説とともに、歯の健康を守るための実践的な方法も教えてくれる本で、とても参考になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
* * *
なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
Amazon商品リンク
興味のある方は、ここをクリックしてAmazonで実際の商品をご覧ください。
『からだの「衰え」は口から』