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第1部 本

生物・進化

ミツバチの秘密(高橋純一)

『ミツバチの秘密』2023/8/29
高橋 純一 (著)


(感想)
 ミツバチの種類、生態、行動・習性、病気や天敵、ハチミツなどの生産物や人との関係まで、ミツバチについて網羅的に解説してくれる本で、主な内容は次の通りです。なお冒頭には、ハチやハチの巣などのカラー写真も8ページあります。
序章  ミツバチとハチミツにまつわる8のQ&A
第1章 世界のミツバチ
第2章 ミツバチのからだ8のヒミツ
第3章 知ってた? ミツバチの行動や習性
第4章 DNA解析でわかる繁殖生態と特殊能力
第5章 ミツバチからの8つの恵み
第6章 ミツバチの病害虫・天敵
第7章 ミツバチ博士のフィールド・レポート
第8章 ミツバチと人との関係
参考文献

「はじめに」によると、高橋さんがハチに興味をもったのは、高校生の時にスズメバチに頭を刺されて3日間熱を出して寝込んだことがきっかけだったとか。小さなハチの持つ毒の強さに感激したそうですが……これ、普通はトラウマ案件では? 豪胆さに驚きました。
 そして私も好きなハチミツの作り方の概要も、次のように書いてありました(本書内では、もっと詳しい説明があります)。
「(前略)まず、ハチミツの材料である花蜜を集める材料調達係の働きバチは、花から集めた花蜜を「蜜胃」と呼ばれる器官に貯め、巣に持ち帰ります。巣に戻った働きバチは、巣の中で待っていた運搬兼分解係の働きバチに、蜜胃から吐き出した花蜜を食べさせます。運搬兼分解係の働きバチは、蜜を貯蔵する巣房へ移動します。このとき、花蜜を受け取った働きバチの体内では、花蜜の主成分であるショ糖(スクロース<多糖類>)が、消化・吸収しやすいブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)に分解されます。分解された花蜜は巣房に運ばれますが、この花蜜は水分量が多く貯蔵に向きません。このため、乾燥係の働きバチが翅をはばたかせて風を送り続けます。こうして1カ月ほどかけて水分量が20%前後になるまで徐々に水分を蒸発させ、ハチミツが完成します。ハチミツが完成すると、貯蔵のために蓋閉め係の働きバチがミツロウで巣房に蓋をします。作られたハチミツは、蓋を開ければいつでも食べることのできる保存食となるのです。」
 ……作るだけでなく、乾燥まで行っていたんですね!
 また、ミツバチの巣の中は、1年中、33度前後だそうですが、その温度調節は、寒い時期には働きバチが胸の筋肉を振動させて発熱することで巣内を温め、熱い時期は巣の入り口にいる働きバチが翅を使って空気を入れ替える、という方法で行われているそうです……冬の間は、ハチミツなどで飢えをしのぎつつ、ずーっと筋肉を振動させて発熱している……ミツバチって、すごく頑張っている昆虫なんですね……。
 また「第4章  DNA解析でわかる繁殖生態と特殊能力」では、メスとオスの染色体数が違っていることに驚かされました。なんと、有性生殖をした受精卵からはメスが、単為生殖の未受精卵からはオスが生まれるので、オスの染色体はメスの半数しかないそうです! このような特殊な性決定様式をとる理由は、仮に有害遺伝子が発生しても、その遺伝子を持つオスが死亡することで、集団から有害遺伝子を排除しやすいからと推測されているのだとか……そうなんだ……。
 そして「第5章 ミツバチからの8つの恵み」では、次の8つについて解説されていました。
1 ハチミツ
2 ローヤルゼリー
3 花粉荷とハチパン
4 プロポリス
5 ミツロウ・蜂ろう
6 ハチの子
7 蜂針療法
8 ポリネーション(花粉交配)
   *
 嬉しいことに、「ハチミツには、人間の健康維持に必要なミネラルがほぼ含まれています。」だそうですが、とても健康に良いハチミツの品質管理は、HMFやジアスターゼ活性など、さまざまな品質検査を使って行われているようです。
 ハチミツは包装前に加熱しないので、「赤ちゃんにハチミツを食べさせてはいけない」とも言われているように、まれにボツリヌス菌が混入していることがありますが(子どもや大人には問題がないほど少ないのですが、赤ちゃんには悪影響がある場合があるようです)、加熱しなくても、きちんと品質管理されているので、子どもや大人は安心して食べられるんですね。
 また驚いたのが、健康食品として有名な「プロポリス」。これはなんと、「ミツバチが巣の補強や隙間を埋めるのに使用している、植物由来の固形天然物質」なんだそうです! へえー、ハチにとっては食べ物じゃなかったんだ……。
 ……ハチに関して、体の構造や社会構造、人間との関わりの歴史などの知識や最新の知見が、ぎっしり詰まった本でした。
 この他にも「第7章 ミツバチ博士のフィールド・レポート」として、次の8カ所でのレポートがあり、日本国内や世界のハチ事情を垣間見ることが出来ます。
1 国境の島・対馬の伝統養蜂
2 和歌山が誇る熊野蜜と南高梅
3 台湾の龍眼ハチミツと漢族の養蜂
4 昆虫食豊かなラオスでハチを食べる
5 ニュージーランドの養蜂とマヌカハニー
6 スリランカの世界遺産でオオミツバチの集団営巣を見る
7 ボルネオ島で幻のミツバチを探す
8 ネパールで命懸けのハニーハント
   *
 ミツバチの驚くべき能力や、働きバチ・女王バチ・オスバチの一生など、ミツバチの知られざる生態を知ることができて、とても参考になりました。興味のある方は、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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