ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

健康&エクササイズ

BREATH呼吸の科学(ネスター)

『BREATH: 呼吸の科学』2022/6/8
ジェームズ・ネスター (著), James Nestor (著), 近藤 隆文 (翻訳)


(感想)
 人生は「呼吸」で決まる……不眠、睡眠時無呼吸症候群、肥満、うつ、虫歯、高血圧、喘息、ADHD……「呼吸の技術」は、あらゆる現代病に効く可能性があることを教えてくれる本です。
「イントロダクション」には次のように書いてありました。
「(前略)そう、呼吸パターンの違いは実際に体重や健康全般に影響をおよぼすのだ。そう、呼吸の仕方はたしかに肺の大きさや機能を左右する。そう、呼吸によってわれわれは自分の神経系をハックし、免疫反応をコントロールして、健康を回復させることができる。そう、呼吸の仕方を変えることには寿命を延ばす効果もあるのだ。
 何を食べ、どれだけ運動し、どれだけ遺伝子に復元力があろうと、どれだけ痩せていようと若かろうと賢かろうと、正しく呼吸していなければ、何の意味もない。まさにそのことを研究者たちは発見した。健康に欠けている柱とは呼吸だ。そこからすべては始まる。」
 本書は体調不良に悩まされていたネスターさんが、ちょっと怪しい感じの(笑)呼吸教室を訪れる場面から始まります。
 メロディアスな声に従って、ゆっくりと鼻から吸い、ゆっくりと吐く。呼吸に意識を集中するように……それを続けていただけなのに、終了後にはなぜか大量の汗をかいていて、肩と首のこりがなくなっていたという不思議な体験をしたネスターさんは、がぜん「呼吸」に興味を抱いて、人類100万年の歴史をさかのぼり、人間が正しく呼吸をする能力を失って数々の病気に苦しむようになった原因の解明に乗り出します。
 すると……いびき、睡眠時無呼吸症候群、喘息、自己免疫疾患、アレルギーなどの病気の症状を、正しい呼吸法で軽減・治療できた事例をたくさん見出していくことになるのです。
 ネスターさんは自ら実験台(過酷な実験です!)となって、口呼吸の弊害(気道まで変化して悪循環に陥る)と鼻呼吸の効用を証明し、さらに最先端の呼吸器学、人体生理学の知見なども学びます。
 健康的な呼吸法は「鼻呼吸」だそうです。
「鼻甲介の各領域が連携して、空気を温めたり、きれいにしたり、動きを遅くしたり、圧力をかけたりするおかげで、肺はひと呼吸ごとにより多くの酸素を取り込める。これこそ、鼻呼吸が口呼吸よりもはるかに健康的で効率的な理由だ。」
 残念なことに、私たち現代人が呼吸に問題を抱えるようになったのは、実は「進化」によるものなのかもしれません。人類の祖先が食べ物を調理(石で叩く・焼く)して柔らかくしたことで、脳を発達させ、さらに産業革命以来、食の工業化によってさらに咀嚼のストレスが減った人類の口は、発育が妨げられるようになり、気道が閉塞しやすくなってしまったそうです(現代人は歯並びも悪いのです)。いびきもこのせいで増えてしまったのだとか(ちなみに本書では、いびきの対処法として「スリープテープ」という方法が具体的に紹介されていました)。
 また現代人は酸素過多の状態にある人が多く、二酸化炭素不足の状況にあるので、深呼吸ではなく、むしろ、ゆっくりと少ない量を呼吸すべきだと言っています。体内の酸素と二酸化炭素はどちらも多すぎても少なすぎてもダメで、濃度のバランスをとらなければいけないそうです。そのためには息をゆっくり吸って吐くのが良いそうです。呼吸に一番大切なのは「酸素」だとばかり思っていたので、「二酸化炭素」も大事だという話には、ちょっと驚かされました。特にアスリートや喘息患者には、呼吸を減らす「低換気トレーニング」が有効なようです。
 最も効率の高い呼吸リズムは、「5.5秒かけて穏やかに息を吸い、5.5秒かけて静かに息を吐く(共鳴呼吸)」なのだとか。
 この他にも、古代からの人類の叡智として受け継がれてきた「呼吸法」をいろいろ体験し、その効用を紹介してもくれます。
 なんと正しい呼吸法(トレーニング)を行うことは病気の改善に役立つだけでなく、口や顔に新しい骨まで作られることがあるのです!
 嬉しいことに、本書で紹介されている呼吸法は、巻末の付録として簡潔にまとめて紹介されているので、読者が自ら試してみたいときにも、とても便利に利用できます。
 ちなみに付録で紹介される主な呼吸法は次の通りです。
1)交互鼻孔呼吸(右と左の鼻孔を交互に手で閉じて、繰り返し呼吸する方法)
2)呼吸協調(ゆっくり呼吸する(横隔膜を動かす))
3)共鳴呼吸(5.5秒かけて穏やかに息を吸い、5.5秒かけて静かに息を吐く)
4)プテイコ呼吸(呼吸量を恒常的に減らすためのトレーニング)
5)咀嚼(ガム、口腔内器具、口蓋拡大)
6)ツンモ(過呼吸により神経系をハックするチベットの呼吸術)
7)スダルシャン・クリヤ(詠唱、呼吸制限、ペース呼吸、激しい呼吸の4段階で行われる)
 この他、本書の本文では取り上げられなかった「ヨガ呼吸」、「ボックス呼吸」、「息止めウォーキング」、「4-7-8呼吸」も簡潔に紹介されていました。
「呼吸」と「呼吸法」について幅広く、実体験も含めて紹介してくれる、まさに『BREATH: 呼吸の科学』でした。
「呼吸法はわれわれに、肺を広げて体をまっすぐにし、血流を促進し、心と気分のバランスを取り、分子のなかの電子を活性化する手立てを与えてくれる。よく眠り、速く走り、深く泳ぎ、長く生き、さらに進化するために。
 そしてもたらされる生命の神秘と魔法は新たに息をするたび少しずつ明らかになる。」
 ……身体になんらかの不調があって悩んでいる方は、もしかしたら呼吸法で改善できるのかもしれません。とても参考になる本なので、健康や呼吸に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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