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第1部 本

ビジネス・その他

Web3時代のAI戦略 社会課題解決を成長ビジネスに変える正のスパイラル(大植択真)

『Web3時代のAI戦略 社会課題解決を成長ビジネスに変える正のスパイラル』2022/8/26
大植 択真 (著)


(感想)
 時代がWeb3によって大きく変わろうとしています。ブロックチェーン、NFT、SBT、メタバースといった技術が後押しし、中央集権から非中央集権へネットの構造が変わる……Web3による変化が、過去10年にわたってWeb2.0の潮流とともに「ぐるぐるモデル」で世界を変えてきたAI(人工知能)と融合しながら、さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速することを教えてくれる本で、主な内容は次の通りです。
第1部 Web3とAI
第1章 急速に高まるWeb3への関心、本質は価値観の変化
第2章 Web3時代に必須なAIのぐるぐるモデルとデータの価値化
第3章 Web3時代のAI・DX戦略
第4章 重なり合う公共とビジネスの課題解決
第5章 社会課題解決フレームワーク「BASICs」
第2部 AIが10の社会課題を解決
第6章 世界が直面する10の社会課題とは
第7章 心身とも健康を保ち続ける
第8章 環境変化に対応し持続する
第9章 地域やビジネスを強くする
第3部 Web3時代のAI戦略を成功に導く組織・スキル・マインドセット
第10章 「体」自律的な組織でAIファクトリーに変貌
第11章 「技」デジタルとイノベーティブの2つのスキルを獲得する
第12章 「心」前向きなマインドセットが成長につながる
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 第1部では、Web3がもたらす変化の本質「AIのぐるぐるモデル」と、社会課題解決が急成長ビジネスになる理由を解説し、さらにこれら変革のカギとなる独自のBASICsフレームワークを紹介しています。第2部では、Web2.0、Web3とAIによる国内外の30を超す注目事例を。そして第3部では、Web3時代の勝者となる企業の組織・スキル・マインドセットがどうあるべきかを解説してくれます。
 なお、AIのぐるぐるモデルとは、次のようなものです。
「AIのぐるぐるモデルは可能な限りすべてのバリューチェーンと顧客のデータを集めてAIを活用する。多くのデータを集めることによりAIの質が高まり、質の高まったAIへの利用が増えると、効果を期待して新たなデータが集まり、さらにAIの質が向上するループが起こる。この繰り返しの中で指数関数的に企業が創造する価値が伸びる。」
 ……AIとデータが好循環を駆動してくれるというモデルです。
 そして社会解決のフレームワーク「BASICs」は、「行動変容」、「効果の可視化」、「規模の追求と継続的改良」、「持続できる経済性、データ価値の創出」の英単語の頭文字から命名されたものです。
「第2章 Web3時代に必須なAIのぐるぐるモデルとデータの価値化」では、AIの実力の一例として、ワクチンの開発に必要なウィルスの立体構造の3Dモデル化に、AlphaFold2というAIが大きく貢献したという事例が書いてありました。
「AIファクトリー(注:AIをベースにした企業)の好循環を実現するには、意思決定のレベルにまでAIが入ることが重要」なのだそうです。次のように書いてありました。
「AIに意思決定を任せる場合、重要なのは現場のオペレーションをできる限り自動化することだ。自動化されたシステムは正確な数字、デジタルデータをはじき出す。自動化が進めば進むほど、データのサイロが破壊され全社からデータが集まり始めるため、AIの判断はより迅速で的を射たものになる。この過程で、各種の決定に伴う担当者の勘や属人的な判断のかたよりがなくせる。
 正確な計画は業績にプラスの影響を与える。(後略)」
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 そして事例として、イケアが、多様な顧客の要望に応えるためリアル店舗とオンラインショップのデータを統合してAIに学習させ、商品のレコメンドでAIのぐるぐるモデルが回るようにしたことや、ヤマト運輸が、AIアルゴリズムを確実かつ定期的に更新できる「MLOps」と呼ぶ手法を導入したことなどが紹介されていました。
「第3章 Web3時代のAI・DX戦略」では、AI駆動型企業について、次のように言っています。
「AIのぐるぐるモデルを駆使するAI駆動型企業は、顧客に関係する多くのデータを収集し、分析することで一人ひとりの特性・好みに応じたサービスが提供可能になり、これによってサービス品質が高まり、さらにユーザーが増え、新たな顧客データが集まる好循環が続く。顧客中心の好循環の中で、AIを活用しサービス提供にかかわる意思決定をしていく。」
 本書では他にもWeb3の先進事例がいろいろ紹介されていて、Web3やAIのぐるぐるモデルがどんなものかのイメージをつかみやすいと思います。その一例をあげると、次のような感じです。
・AIプラットフォームで介護士と利用者をマッチング(米オナーテクノロジー)
・高齢者の歩行動画をAIが解析、転倒リスクの可視化で行動変容(エクサウィザーズ))
・チャットボットによるAI診断、ひっ迫解消と医療の個別化を実現(英バビロンヘルス)
・店舗の来客者数を気象と人流データからAIが予測(日本気象協会、ソフトバンク))
・5倍の生産量を実現し、スケールが容易な次世代植物工場(プランテックス)
・AIネゴシエーションサービス(米ウォルマート、米パックタム)
・行政ビッグデータとAIで空き家を可視化、防犯や街づくりに(前橋市、帝国データバンク、東京大学など)
・地域のDAOやNFTが続々登場、多様な人材参加で盛り上げる(岩手県紫波町、MAKOTOキャピタル、新潟県山古志地域)
・AIで技術を伝承し、持続可能な製造業を実現する(日本製鉄、エクスウィザーズ))
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「第3部 Web3時代のAI戦略を成功に導く組織・スキル・マインドセット」では、「AIファクトリー」実現までのステップが、次のように紹介されていました。
1)改善着手:サイロ化データ活用
2)実績創出:パイロットステージ(データ統合が始まりサイロ化が一部解消、各部門でのパイロット実施)
3)最適化:データハブ(全社的にデータ統合、データを活用できるよう組織を再構築)
4)トランスフォーメーション:AIファクトリー(組織全体にAIスキルを移植、コンポーネントのライブラリーやAPIを全社で共有))
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 Web3時代の勝者となるためのAI戦略を、具体的事例とともに解説してくれる本で、未来の社会や組織を考える上で、とても参考になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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