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第1部 本

健康&エクササイズ

精神科医の本音(益田裕介)

『精神科医の本音 (SB新書)』2022/8/6
益田 裕介 (著)


(感想)
 登録者数20万人を超えるYouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」の運営者で、開業医でもある益田さんが、「精神科」の裏側を具体的に紹介してくれる本で、内容は次の通りです
第一章 精神科医の本音とは
第二章 精神科医をどう選ぶか
第三章 精神科診療の実態
第四章 医者が言わない薬物療法・精神療法の現実
第五章 患者に伝えたい本当のところ
第六章 病院・クリニックの現実
終章 これからの精神科医療
   *
「第一章 精神科医の本音とは」では、精神科医療には「ガイドライン(日本では「DSM-5」として22のカテゴリーの精神疾患の診断基準)」があって、誰でも同じ診断ができるよう、治療が標準化されていることが書いてありました(薬の出し方にもガイドラインがあるそうです)。
 検査はほとんど行わずに問診が中心のようですが、検査をせずに、なぜうつ病などが診断できるのか? という疑問への回答としては、次のように書いてありました。
「過去100年以上にわたり、さまざまな地域で患者さんの症状や経過を記録し続けた結果、同じような症状の経過を辿るもの(うつ病などの疾患)が見つかっており、それに近いものをあてはめているからです。」
 ……なるほど。
 ちなみに「うつ病」と「抑うつ状態」は違うそうです。
「「抑うつ状態」というのは落ち込んでいる状態、身体のエネルギーが落ちている状態です。食欲が落ちる、なかなか眠れない、気分が落ち込む、意欲が湧かない、頭がぼんやりするといった症状がでますが、この症状が即ち、異常というわけではありません。」
「「うつ病」というのは、古典的な理解だと「脳の病気が原因で、周期的にうつ状態を繰り返す疾患」を指し、現在では操作的診断の診断項目で、9個中5個の症状があれば、「うつ病」ということになります。」
 …うつ病の場合は脳の病気なので、ストレスから離れてもすぐに回復することは困難なのだとか。
 また「うつ病」と「適応障害」も違うそうで……
「定義としては、「ストレス」が原因で抑うつ状態になることを「適応障害」と呼びます。適応障害と診断されるのは、ストレスの原因・問題が明らかであること、ストレスの原因・問題が解消された場合/もしくは原因・問題から離れることができた場合、症状が回復する(6カ月以上持続することがない)ことが特徴的です。」
 ……それでも、うつ病でも適応障害でも、治療として大事なポイントは変わらないそうです。
「どちらにせよ、まず大事なのは、休むこと。しっかりと寝て、のんびりと過ごして、しっかりと食べることです。ストレス要因から距離をとるようにする必要もあります。」
 ……これは本当に大事なポイントですね!
 そして、この本を読んで驚いたのは、精神科の診療時間の短さ! 診察時間は、初診は30分から1時間程度、再診は5分+αというのが一般的な外来診療だそうです。
その理由は、診療報酬制度と、精神科医が少ないのに患者数は多いことから、このようになっているのだとか。益田さんもこの時間の短さには苦心しているようで、その対策として「病気や薬の説明をクリニックのHPに動画掲載している」そうです。こうすることで5分の再診時間のうちの、病気や薬の説明時間を減らすことができて、その分、悩み事を聞く時間が増えたのだとか。
 益田さんのクリニックのHPには、問診表も掲載しているそうなので、精神科に通うかどうか迷っている方は、このHPがとても参考になりそうです(もちろんこの問診表は本書にも掲載されています)。
 また精神科の治療スケジュールは、初診以降の通院間隔は月1~2回が一般的で、治療期間は年単位が珍しくないそうです。費用としては、「保険点数の内訳として、一般的なのは「再診料+通院精神療法+処方箋料」で、だいたい患者さん1人あたりの負担額は1500円くらいで、病院には5000円程度が入る計算になります。」ということまで紹介されていました。
 また、なんと初診まで1か月程度かかることが多いそうです! 精神科医が少なすぎるので、予約なしの初診は基本的に無理なのが実態なのだとか。
 そして治療がいつ終わるのかについては……
「精神科の扱う病気の場合、「これで完治しましたよ」と判断し、告げるのが難しいのです。そのため、「完治しました」という宣言は、精神科医療ではほとんど出せません。」
 ……そうなんですか。だから患者さんの経過がよくなってきても、「しばらく様子をみましょう」、「いったんやめましょうか」などと言うことになるようです。しかも精神科では再発も多いので、いったん通院を終了するときには、「また悪くなったら、いつでも来てください」という声かけが重要なのだとか。
「精神科医療で扱う病気の場合、「治療」とは「元の状態に戻る」というよりも、「受け入れる」や「共存する」のイメージの方が近い気がします。」「患者さんが病気や症状を「受け入れる」「共存する」のを助けるのも治療です。」
とも書いてありました。
 そして精神科を受診する目安としては、「他の人からの勧め」の他、「食事は摂れているか?」「眠れているか?」「動悸がしたり、涙がでたりしていないか?」「残業時間の多さ」「死にたい気持ちがあるか」などがあるそうです。
 ……精神科の治療について、具体的に紹介してくれる本でした。
「なぜ精神科医は5分しか診てくれないのか?」
「なぜ病院を替えたら診断が変わるのか?」
「なぜ処方される薬が変わっていくのか?」
「なぜ通い続けても一向に良くならないのか?」
など、患者が医者に対して不信感を抱きやすい疑問への回答をたくさん読むことができる他、「名医とヤブ医者」の見分け方、「薬やカウンセリング」の効果、医療制度の問題まで総合的に知ることができて、とても参考になりました。
 精神科医療に興味のある方や、受診を考えている方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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