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第1部 本

医学&薬学

ウイルスって何だろう(青野由利)

『ウイルスって何だろう ――どこから来るのか? (ちくまQブックス)』2022/7/14
青野 由利 (著)


(感想)
 歴史を見てもウイルスは人間社会に多大な影響を及ぼしてきましたが、同時にウイルスは人間社会の鏡でもあります。そんなウイルスの正体を、科学的に社会的に分かりやすく解説してくれる本で、内容は次の通りです。
はじめに
第1章 ウイルスは生き物なの?
第2章 新型コロナウイルスにはどんな特徴があるのか
第3章 新型ウイルスはどこから?
第4章 ウイルスと人類の闘い
第5章 感染症は社会を映す
次に読んでほしい本
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 2022年現在も新型コロナウイルスに苦しめられている私たちにとって、ウイルスはとても知りたい対象ですが、「第1章 ウイルスは生き物なの?」で、ウイルスに関する分かりやすい解説を読むことができます。
 個人的にちょっと驚いたのは、「第2章 新型コロナウイルスにはどんな特徴があるのか」によると、新型コロナでは、「多くの感染者は誰にもうつしていない」ということ! ほとんどの感染者の濃厚接触者は、感染していなかったことが、厚生労働省が出しているデータで明らかになっているそうで、感染者の一部だけが他の人に感染させているようです。これは、スーパースプレディング現象(一部の人が一度に多くの人に感染させて、感染が集団に広まっていく)と呼ばれているのだとか。
 だからこそ、対策は「三密」の回避(換気をよくして、密集した場所を避け、密接した距離での会話を避ける)。また、「家族など、いつも会っている人との接触を減らすより、普段会わない人との接触を減らすことが感染の抑制に大きな効果がある」そうです。
 そして興味津々だったのが、「第4章 ウイルスと人類の闘い」。今回の新型コロナウイルスのパンデミックで驚かされたのが、検査方法や有効なワクチンが驚くほど早く提供されたこと……過去にないスピードだったと思います。検査について、次のように書いてありました。
「今回、中国で原因不明の肺炎の集団感染が起きていることを世界保健機関(WHO)がキャッチしたのは2019年の年末でした。
 それから10日ほどで新型コロナウイルスの全遺伝情報(ゲノム情報)が公開されました。
 まず中国のチームが解読し、各国のチームもそれに続きました。
 これをもとに、新型コロナに感染しているかどうかを判別する検査が各国でできるようになりました。
 新型コロナウイルスの遺伝子に特徴的な配列をコピーして増やし、検出するのです(PCR検査)」
「検査には、ウイルスに特徴的な遺伝子配列を増幅して検出するPCR以外にも、抗原定性検査、抗原定量検査などがあります。
 抗原検査は、ウイルスの遺伝子ではなく、ウイルスに特徴的なたんぱく質を検出する方法です。」
 また「抗ウイルス薬」に関しては……
「ウイルスが体内に入って、細胞に感染し、細胞の機能を乗っ取って自分をたくさんコピーし、細胞を壊して外に出て、また次の細胞に感染する。このウイルスのサイクルをどこかで止めて、増殖を阻止するのが抗ウイルス薬の役割です。」
 そして「中和抗体」に関しては……
「ウイルスが細胞に感染するのを防ぐことができるのが中和抗体です。
 中和抗体は、こうした性質のある抗体を選び出して、たくさん増やした薬剤です。その性質上、点滴薬となります。」
 また……
「「抗炎症薬」は、ちょっと目的の違う薬です。新型コロナウイルスに感染した患者さんが重症化するひとつの要因に、有害な炎症反応があります。ウイルスと闘う免疫反応が体の細胞を傷つけてしまうのです。抗炎症薬はこれを抑える薬です。」
 ……などなど、新型コロナウイルスへの対抗策についても、いろいろ知ることが出来ました。
 さらに、今回の新型コロナウイルスでは、「こういう条件だったら、今後の感染状況はこうなる」というシナリオを示して対策へつなげていった「感染症の数理モデル」や「数理疫学」という科学が注目されましたが、それについても、次のようにありました。
「日本の政府が感染症対策を決める上で、数理モデルを実際に利用したのは、今回が初めてです。(中略)
 発展途上の分野ですが、次のパンデミックがやってきた時には、今回の経験を生かし、数理モデルをもっと有効に政策に反映させることができるようになるかもしれません。」
 ……本当にそうですね! 今後の展開にも期待したいと思います。
 科学ジャーナリストの青野さんが、「ウイルス」について分かりやすく教えてくれる本でした。新型コロナウイルスについても多くの説明をしてくれているので、実感として理解しやすいし、勉強になるだけでなく、ウイルスと闘う生活スタイルを維持する上でも役に立つと思います。巻末には「次に読んでほしい本」も紹介されているので、さらに詳しく知りたい方に参考になると思います。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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