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第1部 本

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いちばんやさしい衛星データビジネスの教本(神武直彦)

『いちばんやさしい衛星データビジネスの教本 人気講師が教えるデータを駆使した宇宙ビジネス最前線 (いちばんやさしい教本)』2022/6/16
神武直彦 (著), 恩田靖 (著), 片岡義明 (著)


(感想)
 最強のリサーチツール「衛星画像」を活用したビジネスを総合的に教えてくれる教科書で、内容は次の通りです。
Chapter1 身近になった衛星データについて知ろう
Chapter2 衛星データが社会に生み出す価値を理解しよう
Chapter3 衛星データを使った新規事業を考えてみよう
Chapter4 衛星データを提供するビジネスを学ぼう
Chapter5 衛星データを扱うためのプラットフォームを知ろう
Chapter6 衛星データの分析・解析でさまざまな課題を解決しよう
Chapter7 分析結果を活用して既存ビジネスを強化しよう
Chapter8 自分の手で衛星データを扱ってみよう!
Chapter9 衛星データビジネスの未来について考えてみよう
   *
 衛星データ(衛星画像)のビジネス利用が急速に進んでいます。とくに近年は、Google Earth Engine(Google)やTellus(さくらインターネット)といったクラウドサービスの登場で、誰でも簡単・安価に衛星データにアクセスできるようになりました。こうして手軽に入手できる衛星データと、企業などが持つデータを組み合わせることで、従来は得られなかった新たな知見を得ることが可能になってきたのです。
 例えば「衛星画像に写る「石油タンクの蓋の影」から石油の需要を推計する投資情報サービス」や、「工場内の人流データから生産量を推測したり、工場から港への移動を追跡して物流の状況を把握する「サプライチェーン監視」」など、多くの業界で急速に利用が進んでいます。
「はじめに」によると、なんと地球の周りをまわっている人工衛星の数は5,000機以上、2021年だけでも1,000機以上が新規運用開始しているそうです。……ええ! そんなに!
 そして「Chapter1 身近になった衛星データについて知ろう」によると、人工衛星の3つの役割は、「観測(光学センサー、レーダーなどのセンサー)、「測位(位置や時刻情報)」、「通信・放送」で、衛星に搭載されているセンサーの種類には、次のものがあるそうです。
1)光学センサー(デジタルカメラのように地上を撮影)
  (可視光線、赤外線(近赤外線、中間赤外線、熱赤外線))
2)マイクロ波センサー(天候に左右されずに観測可能)
  (能動型(合成開口レーダー、降雨レーダー、マイクロ波高度計、マイクロ波散乱計))
(受動型(マイクロ波放射計))
   *
 また衛星データを利用するための衛星データ分析プラットフォームとして、「Google Earth Engine」や日本の「Tellus」などがあり、専門的な知識や高性能コンピュータなしで誰もが簡単に使えるクラウドサービスとして提供されているそうです。……衛星データ、本当に身近になってきているんですね!
「Chapter3 衛星データを使った新規事業を考えてみよう」では、衛星画像が撮影されてから実際に利用されるまでの流れに沿って、衛星データを活用した事業の方法を学ぶことができます(実践例:パイナップルに適した農園かどうか判断するなど)。
「Chapter4 衛星データを提供するビジネスを学ぼう」では、衛星データが驚くほど簡単に買えることを知りました。例えば、約200機の衛星を使える衛星画像サービスPlanetでは、「衛星が対象エリアを撮影後、4~12時間で画像検索と衛星データのダウンロードが可能になる。購入は専用サイトで欲しいエリアと希望時間を指定し、カートに入れてクリックするだけ」なのだとか!
 また「Chapter5 衛星データを扱うためのプラットフォームを知ろう」では、次のような著名な衛星データプラットフォームの概要を知ることが出来ます。
1)汎用プラットフォーム
 Google Earth Engine(Googleのサーバーを利用。誰もが普通のパソコンで膨大な人工衛星データにアクセス、分析可)
 Tellus(日本初のプラットフォーム、衛星データを学ぶための日本語コンテンツが充実)
 Orbital Insight GO
 EO Browser
2)特定分野向けプラットフォーム
 農業向け:EOS Crop Monitoring
 水産養殖向け:UMITRON PLUSE
 土地評価用:天地人コンパス
 土地変化検知用:GRASP EARTH
3)特定の衛星群に特化したプラットフォーム
 Axel Globe、Planet Monitoring、GSMap、P-Tree
   *
 有名なのはGoogle Earth Engineですが、初心者は、まずは日本のTellusの「衛星データを学ぶための日本語コンテンツ」で学んでみると、とても参考になるのではないでしょうか。
 さらに「Chapter6 衛星データの分析・解析でさまざまな課題を解決しよう」では、「衛星防災情報サービス:SAR衛星を活用することで、航空機やヘリコプターでは撮影が困難な悪天候や夜間でも状況把握が可能に」とか、「全地球変化検知サービスGRASP EARTH:地球上のあらゆる地点で衛星データを時系列に比較」などの活用例を知ることができますし、「Chapter7 分析結果を活用して既存ビジネスを強化しよう」では、次のようなビジネスでの事例が紹介されています。
・農家が自分で使える「収穫時期の予測システム」(米作り)
・インデックスの結果で保険金を支払う新しい農業保険(保険商品)
・衛星データを活用して森林の変化情報を管理(森林管理)
・水産養殖を効率化するスマート給餌機(水産養殖)
・衛星データ解析により全世界の3D地形データを整備(3D地形データ))
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 衛星データは、すでに農業や漁業、金融、マーケティング、製造業など、多くの業界で急速に利用が進んでいるそうです。これまで人間が行っていた業務を、衛星データの活用で自動化するなど、DXの観点からも注目を集めています。
 この本では、衛星データの基本や、衛星データプラットフォーム、最新のビジネス事例を総合的に学べるので、これから衛星データビジネスを検討しようと思っている方には、とても参考になると思います。ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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