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第1部 本

描画参考資料

ダマして生きのびる 虫の擬態(海野和男)

『ダマして生きのびる 虫の擬態』2022/6/1
海野 和男 (著, 写真)


(感想)
 昆虫写真家として約50年のキャリアがある海野さんが、世界のいろいろな擬態昆虫の写真をまとめた、ご自身の『昆虫の擬態』(平凡社、自然写真協会賞)などの写真集から、選りすぐりのカットを採用して長年の活動の成果を見せてくれる本(QRコードもついているので、昆虫の精細動画を見ることもできます)。昆虫の「擬態」という不思議な生態を、じっくり眺められる昆虫の擬態の入門書(図鑑)です。
「擬態」は英国の博物学者でダーウィンなどと同時代のベイツなどにより発見された現象で、植物の葉(コノハムシなど)、枝や木の皮(カレエダカマキリやナナフシ)、 花弁(ハナカマキリ)などに擬態(そっくり真似る)することから始まり、 強い虫(アリやハチや毒虫)のカタチや模様を真似するもの、ヤママユ蛾などのような ビックリするような色彩やメダマ模様を隠していて、触れると突然それを見せて威嚇するものなど、何種類かのパターンがあるそうです。

 最初に登場するのは、「植物の葉を真似る虫」たち。コノハバッタ、メダマコノハギス、オオコノハツユムシ、ヒラタツユムシなど、本当に葉っぱそっくり! なんとコノハムシは、光まで操って擬態しているそうです。と言うのも、本物の植物の葉と違ってコノハムシには内臓が詰まっている腹があるので、それを隠すために光を乱反射させて、腹の影をぼかしているのだとか……うーん、そこまでやるとは……。
 また「おとり」を作って身を隠すのものあるそうで、たとえばホンミスジやスミナガシの幼虫は、蛹になる前にまわりの葉っぱを枯らして「おとり」を用意してから、それとそっくりの蛹になって身を隠します。実際に写真を見ても、どっちが蛹なのか、よく分からないほどです……やるなあ。
 さらにヨモギの花の擬態するハイイロセダカモクメ。これはなんと日本にいる虫ですが、本当にそっくり!
 続いての登場は「背景に溶け込む」虫たち。樹皮の表面や砂や小石の広がる地面に自分の姿を溶け込ませます。
 そして「強いやつの真似をする」虫たち。蜂や毒虫そっくりに擬態しています。ここで驚いたのが「アリに化けるカマキリ」。え? アリに化ける? でもカマキリの方が強そうな気が……と思ったら、アリに擬態するのは幼虫の小さなころだけで、成虫になると緑色のカマキリ(アリカマキリ)になるそうです。実はアリはギ酸という毒を持つ上に、強い顎があるので、けっこう強いのだとか。この幼虫たちは4~5日はいっしょに群れているそうで……写真を見ても、アリの群れにしか見えません……凄いな。
 さらに「驚かせてチャンスをつかめ」とばかりに「突然、顔(目)が出る」虫たち。羽を広げると目玉模様が出てくる蛾とかで、これも擬態なんですね。
 ここで面白かった(気持ち悪かった)のが、人面に見える模様を持つ虫。ジンメンカメムシはユーモラスなお面みたいだし、ドクロメンガタスズメは心霊写真みたい……。
 そして最後に「死んだふり」をする虫たち。「動かなくなる」というのは、意外に効果的な生存戦略なのでしょう。
 本書に掲載されているのは選りすぐりの擬態昆虫写真ばかりなので、本当に見事で、見ごたえがありました。捕食者を騙して生き残るために、こういう進化を遂げたのだとは思いますが……生物って、本当に不思議で面白いですね! 昆虫好きの方は、ぜひ眺めてみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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