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第1部 本

歴史

21 Lessons(ハラリ)

『21 Lessons ; 21世紀の人類のための21の思考 (河出文庫)』2021/11/5
ユヴァル・ノア・ハラリ (著), 柴田 裕之 (翻訳)


(感想)
『サピエンス全史』で人類の「過去」を、『ホモ・デウス』で人類の「未来」を描き、世界中の読者に衝撃をあたえたユヴァル・ノア・ハラリさんが、人類の「現在」の問題を描いている本です。
 テクノロジーや政治をめぐる難題から、この世界における真実、そして人生の意味まで、われわれが直面している21の重要テーマを取り上げて、正解の見えない今の時代に、どのように思考し行動すべきかを問う……「いまを生きる現代人に贈る必読の21章」で、内容は次の通りです。
1 幻滅――先送りにされた「歴史の終わり」
2 雇用――あなたが大人になったときには、仕事がないかもしれない
3 自由――ビッグデータがあなたを見守っている
4 平等――データを制する者が未来を制する
5 コミュニティ――人間には身体がある
6 文明――世界にはたった一つの文明しかない
7 ナショナリズム――グローバルな問題はグローバルな答えを必要とする
8 宗教――今や神は国家に仕える
9 移民――文化にも良し悪しがあるかもしれない
10 テロ――パニックを起こすな
11 戦争――人間の愚かさをけっして過小評価してはならない
12 謙虚さ――あなたは世界の中心ではない
13 神――神の名をみだりに唱えてはならない
14 世俗主義――自らの陰の面を認めよ
15 無知――あなたは自分で思っているほど多くを知らない
16 正義――私たちの正義感は時代後れかもしれない
17 ポスト・トゥルース――いつまでも消えないフェイクニュースもある
18 SF――未来は映画で目にするものとは違う
19 教育――変化だけが唯一不変
20 意味――人生は物語ではない
21 瞑想――ひたすら観察せよ
   *
 この本でハラリさんは、テクノロジーの脅威と危険に警鐘を鳴らしていて、科学大好きの私には、ドキッとさせられることが多かったです。しかも、その指摘はすごく的確なように感じられ、どうしたらいいのかを深く考えさせられました。その一部を紹介すると、次のような感じです。
「2 雇用」からは……
「(AIと人間が協力する新しい仕事が創出されたとしても)こうした新しい仕事はみな、一つ問題を抱えている。おそらく、高度な専門技術や知識が求められ、したがって、非熟練労働者の失業問題を解決できないのだ。人間のために新しい仕事を創出するよりも、実際にその仕事に就かせるために人間を訓練するほうが難しいという結果になりかねない。過去に自動化の波が押し寄せたときには、人々はたいてい、それまでにやっていた、高度な技能を必要とせず、同じことを繰り返し行う仕事から、別の、やはり単純な仕事に移ることができた。(中略)
 したがって、人間のための新しい仕事が出来ても、新しい「無用者」階級の増大が起こるかもしれない。私たちは実際、高い失業率と熟練労働者の不足という、二重苦に陥りかねない。」
「3 自由」からは……
「一部の国や一部の状況では、人々はまったく選択肢を与えられず、ビッグデータアルゴリズムの決定に従うことを強制されかねない。とはいえ、自由社会とされている場所でさえも、アルゴリズムが権限を増すかもしれない。私たちはしだいに多くの事柄でアルゴリズムを信頼したほうがいいことを経験から学び、自ら決定する能力を徐々に失っていくだろう。考えてもみてほしい。わずか二〇年のうちに、何十億もの人が的確で信用できる情報を探すという、非常に重要な任務をグーグルの検索アルゴリズムに委ねるようになった。私たちはもう、情報を探さない。代わりに、「ググる(Googleで検索する)」。そして、答えを求めてしだいにグーグルを頼るようになるにつれて、自ら情報を探す能力が落ちる。そして今日、「真実」はグーグルでの検索で上位を占める結果によって定義される。」
「4 平等」からは……
「(前略)生物工学とAIの普及の組み合わせという、この二つの過程の相乗効果は、一握りの超人の階級と、厖大な数の無用のホモ・サピエンスから成る下層階級へと人類を二分しかねない。一般大衆が経済的重要性と政治権力を失えば、国家は彼らの健康と教育と福祉に投資する動機の少なくとも一部を失うかもしれないので、このすでに不吉な状況はさらに悪化するだろう。彼らが余剰人員と化すのは非常に危険だ。そのような事態が起ったら、一般大衆の将来は少数のエリート層の善意次第となる。善意は数十年間は存在するかもしれない。だが、気候変動による大災害のような危機を迎えたら、余剰な人員をどうしても見捨てたくなるだろうし、そうすることは簡単だろう。」
 ……うーん。どれをとっても悲観的な未来がまっていそう……とても恐ろしく、なんとかしなければと危機感を抱かされました。
 そして最終章の「21 瞑想」は、次のように締めくくられていました。
「テクノロジーが進歩するうちに、二つのことが起った。第一に、燧石で作ったナイフが徐々に核ミサイルに進歩すると、社会秩序を乱すのは、前より危険になった。第二に、洞窟壁画が長い時間をかけてテレビ放送に進化すると、人々を騙すのが前より簡単になった。近い将来、アルゴリズムはこの過程の仕上げをし、人々が自分自身についての現実を観察するのをほぼ不可能にするかもしれない。そのときには、私たちが何者で、自分自身について何を知るべきかは、私たちに代わってアルゴリズムが決めることになるだろう。
 あと数年あるいは数十年は、私たちにはまだ選択の余地が残されている。努力をすれば、私たちは自分が本当は何者なのかを、依然としてじっくり吟味することができる。だが、この機会を活用したければ、今すぐそうするしかないのだ。」
 ……インターネットの検索システムが登場し始めた頃には、Googleなどの検索システムがインターネットの「神」となって情報を支配することに懸念を感じて、対抗手段としてあえてYahoo!を利用するよう心掛けていましたが……今ではすっかりGoogleを信頼してしまっていることに気づかされました(残念ながら、それ以外の選択肢が、すでにほぼなくなっているような状態でもありますが……)。
 しかもビッグデータ分析を基にしたアルゴリズムを、すでに人間の判断より公平に感じてしまっています……これって危険なのかな……でも、やっぱり実際に人間の判断より公平でもあるような……うーん……こういう状況のなかでも、アルゴリズムにすべてを委ねてしまいかねない危険性は忘れてはいけないのですね……それは確かだけど、現実問題としては、かなり難しい気も……うーん……なんとか頑張っていきたいと思います……(すでに、ちょっと弱気)。
 鋭い切り口で、人類の「現在」の問題を深く考えさせてくれる本でした。この他の問題も満載です(苦笑)。みなさんも、ぜひ読んでみてください。だんぜん、お勧めです☆
 なお、私が実際に読んだのは単行本版でしたが、この本にはより新しい文庫本版があるので、以下の商品リンクでは文庫分版を紹介しています。
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