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第1部 本

ペーパークラフトの本(日本の作家)

折り紙

折紙の文化史(小林一夫)

『折り、願い、遊ぶー折紙の文化史』2021/4/20
小林一夫 (著)


(感想)
「お茶の水・おりがみ会館」館長で、明治18年創業の和紙の老舗「ゆしまの小林」の4代目の小林さんが、和紙や日本の伝承折り紙の歴史をオールカラーで紹介してくれる「初めての折紙文化史」です。
 世界の共通語の「ORIGAMI」(折紙)は、集中力、創造力、色彩感覚を養う効果があり、また脳を刺激し老化を防ぐという医学的な効用も認められています。さらに近年は、宇宙、病理、建築などの製造分野にも応用されてもいます。
 そんな折紙の原点は、「神社の注連縄にさした紙垂(しで)」なのだとか。
「神社の注連縄にさした紙垂は、和紙を折り畳み切ったもので、これが折紙の原点である。その後、竹笹に吊るす七夕の投網、江戸時代の「紋切り遊び」、寄席の切り絵などは、いわゆる折紙とは異なる遊びや技法として発展した。しかしこれらも、紙を折り畳んで切り込みを入れるとシンメトリーの文様が現れる折紙細工である。」
 また「日本の紙のはじまり」については、次のように書いてありました。
「日本最古の歴史書『古事記』と勅撰正史『日本書紀』によると、610年に高麗より渡ってきた僧・曇徴(どんちょう)が「溜め漉き」技法という紙の製法を日本に伝えたとされる。(中略)
 大陸より伝わった「溜め漉き」技法は、やがて製紙技術や加工技術が飛躍的に向上し、確かな記録はないが、「流し漉き」という薄くて強靭な抄造技法が延暦年間(782~806)頃には編み出された。」
 そして鎌倉時代になると、折形が礼法にもなったそうです。
「公家社会では、「平包み」という絹などの布帛で物を包む方式が広がり、その包みが解けない工夫と装飾を兼ねた絹などの「組紐」が作られた。
 一方、武家社会では、白い紙を縒って糊を引く「水引」によって中身の「モノ」が象徴される「包みの折り形」が考案された。」
 さらに明治時代になると、万国博覧会に出展され、学校教育にも取り入れられました。
「1867年 パリ万国博覧会に奉書、鳥子、美濃紙など日本の文様紙1000枚が出展され、世界の表舞台で、「世界一の紙」だと公認された。」
「1885年 文部大臣・森有礼の勧めで「折紙」が教育に採用」
 また2005年には、折紙の記号が規格統一されたそうです。
「2005年 6月に内閣府認証NPO法人国際おりがみ協会が設立され、各国でばらばらだった破線記号を規格統一して世界に発信した。」
 さらに「《第八章》創作折紙と著作権」には、さまざまなトラブルのケースが書いてありました。心が癒される「折紙」にも、いろんな著作権問題の歴史があったんですね……。
「偶然同じものが発表されることがある場合、お互いに依拠していなければ、著作権侵害にはならない」そうです(双方が独立した別個の著作物として著作権が与えられる)。
 そして個人的に最も面白かったのは、「《第十章》未来につなぐ」。次のような折り紙のいろんな新しい応用方法を知ることが出来ました。
・「蛇腹折り」は太陽光パネル、自動車のエアバック、プリーツを生かすファッションなどに応用が広がっている。
・七夕の網飾りをヒントに、ハチの巣状のハニカムコアが開発され、建築用パネルやパッキング材などに応用されている。
・血管内の掃除をする超ミクロな自己折りロボット、折紙の展開収縮機能を使った巨大なソーラーセイル、防振器、簡単に折り畳めるペットボトルや厚紙の箱など
・「ミウラ折り」は宇宙交信に使う巨大なアンテナを折り畳む方法に利用されている。
・2001年 繁富香織は、細胞を折紙のように立体的に培養できる3次元技術「細胞折紙」を開発し、バイオ折紙エンジニアとして再生医療に役立たせた。
 ……などなど。
『折紙の文化史』を総合的に紹介してくれる本でした。各章の章扉には折紙作品の写真があり、その大部分に「作り方」の解説もあります。例えば「《第一章》古代から平安時代」には「紙垂」の作り方が、「《第十章》未来につなぐ」には素敵な「竜船」の折り方解説があるので、それらの作品を作って楽しむことも出来ると思います(ちょっと難しそうな作品もありますが)。折り紙に興味のある方は、ぜひ眺めてみてください☆

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