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第1部 本

科学

Liquid 液体(ミーオドヴニク)

『Liquid 液体 : この素晴らしく、不思議で、危ないもの』2021/4/8
マーク・ミーオドヴニク (著), 松井信彦 (翻訳)


(感想)
 体液から地球の芯を流れる液体金属、石器時代の道具から最先端のラボオンチップ医療革命まで……身近にある「液体」の素晴らしくて不思議で危ない世界を紹介してくれる本です。「おわりに」で、ミーオドヴニクさんは次のように書いています。
「ロンドンからサンフランシスコまでのこの旅物語でお伝えしたかったのは、ケロシンからコーヒーまで、エポキシから液晶まで、多種多様な液体を私たちが理解して御しているからこそ、旅客機でのフライトが、それも快適なフライトが実現しているということだ。(中略)心がけたのは、私たちと液体との関係を描き出すことである。私たちは何千年と、この魅力的で卑劣、新鮮でどろどろ、生命の源で爆発物、美味で毒、という物質状態の理解に努めてきた。今のところは、液体の持てる力をかなり利用しつつ、その危険から身を守っている(津波や海面水位の上昇についてはともかく)。これからもこれまで同様、液体は暮らしのあちこちに顔を出すと思うが、液体との関係は深まるだろう。」
 この文章の通りに、本書は、飛行機での移動中に、私たちがいかに液体と関係しているかを、次のような内容で詳細に描き出していきます。
はじめに 不可解で謎めいた性質
第1章 爆発……現代の魔法のランプに乗って(ケロシン(燃料)やオイル、ガソリンなど)
第2章 陶酔……アルコールの風味と毒に魅せられる
第3章 深遠……水の振動と波の凄いエネルギー
第4章 粘着……モノをくっつけて文明は進化した(天然ゴム、接着剤など)
第5章 幻想……オスカー・ワイルドの夢をかなえた液晶
第6章 本能……健康に欠かせない体液が嫌がられるわけ(唾液、ホルモンなど)
第7章 一服……最高においしいコーヒー・紅茶を味わう
第8章 洗浄……液体石けんはアイデアの宝庫だ(乳濁液、界面活性剤など)
第9章 冷却……冷蔵庫から人工血液まで(液体の循環での冷却など)
第10章 不滅……ボールペンを生んだ液体工学の天才(重力と毛細管現象でのインクの流れの制御、非ニュートン流動化など)
第11章 曇天……上唇の水分子から放電する稲妻へ
第12章 溶融……流動する液体の星の上に暮らして
第13章 持続……都市を自己修復するテクノロジー(アスファルトなど)
おわりに 人類の未来と液体の力
   *
 気体でも固体でもない、その中間状態の「液体」について、その多様な性質・用途が次々に紹介されていきます。「液体」について、いろんな知識を知ることが出来てとても勉強になるのに、飛行機旅の途中で目に入るものをきっかけとして話が進んでいくので、読みやすくて分かりやすい……さすが前著『人類を変えた素晴らしき10の材料』も全米ベストセラーになっているミーオドヴニクさんらしい見事な手腕ですね☆
 それにしても本当に「液体」って不思議で凄いものだなーとあらためて感心させられるともに、知らなかった新しい液体に関する情報も得ることが出来て、すごく参考になりました。例えば、次のようなものです。
・高濃度の酸素を吸収できて人工血液になることが期待されるPFC(パーフルオロカーボン)。実験では、マウスは液体PFCにどっぷり浸かっていても呼吸できて、取り出されると再び空気で呼吸できた(液体呼吸)。
・自己修復できるアスファルト(アスファルト道路の内部で液体が流れて亀裂が自己修復される)。鋼鉄の微小繊維をアスファルトに混ぜることで、道路の機能が強化されるだけでなく、磁界をかけて電流を流して高温にすることで、アスファルトの自己修復機能を強化する研究が進んでいる(冬の低温対策にもなる)。また、アスファルトにヒマワリ油の微小カプセルをまぜることで、アスファルトの流動性を保つ研究も成果があがっている。
・ラボオンチップテクノロジー。自分の体液の試料を採取して、生化学組成を調べるための小型装置に入れると、チップが体液を分析する。心臓病から感染症、初期のがんまで何でも診断できる可能性があり、医療技術革命が期待できる新技術。(そのためには、小さな液滴を思い通りに動かせる仕組みが必要で、スイレンの葉の仕組みを参考に、素材を超疎水性にする表面加工の研究が進んでいる)
・情報を保存できる液体(2013年、デジタル写真のデータを液体に保存し、再び取り出すことが出来た)。DNAを使った液体コンピューターも開発中。
 ……などなど。この他にも多くの新しい情報を得ることが出来ました。
「命を支える究極の性質を持っているのは液体の力だ。何しろ、酸素のほかに、炭素ベースの分子をはじめ、さまざまな化学物質を溶かせるので、生命の発現に、新たな生き物の自然発生に欠かせない水環境をつくりだす。というか、少なくともそれが定説だ。ゆえに、ほかの惑星に生命を探す科学者は、液体の水を探す。ところが、液体の水は宇宙ではめったにお目にかかれない。」
 地球は宇宙でも珍しい「水の豊富な星」。私たちはその液体の恩恵をたっぷり受けて、快適に生きていけるんですね☆
 とても興味深い情報が満載の『Liquid 液体』。ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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