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第1部 本

地質・地理・気象・地球環境

異常気象はなぜ増えたのか(森 朗)

『異常気象はなぜ増えたのか――ゼロからわかる天気のしくみ(祥伝社新書)』2017/10/2
森 朗 (著)


(感想)
 天気図の見方、雨・雪・風などのしくみや、実は謎が多い日本の気象、現在も解明が続く異常気象などの天気・気象現象を、TBS「ひるおび! 」でおなじみの気象予報士の森さんが分かりやすく説明してくれる本です。
『異常気象はなぜ増えたのか』というタイトルだったので、異常気象の解明が主題なのかと思ってしまいましたが、本書の大半は天気(気象)の基礎知識の説明だったので、サブタイトルの『ゼロからわかる天気のしくみ』の方をタイトルにすべきだったような気がします。……ということで、目新しく感じる情報はあまりなかったのですが、天気や気象の総合的な知識を分かりやすく復習することが出来たので、読んでよかったと感じました。
 なかでも「天気図」の解説は、「西高東低型」、「南高北低型」などの典型的な天気図とともに書かれている説明の文章を読んでいるうちに、森さんのテレビでのいつもの天気予報の画像が思い出されてきて、そうか、「西高東低型」は典型的な冬の気圧配置で、日本海側で雨や雪、太平洋側で晴れになりやすいのかーという気象知識を、実感とともに学ぶことが出来ました(笑)。
 また驚かされたのは、「台風は自力では進めない」ということ! 次のような記述がありました。
「北西太平洋の赤道海域は、世界でもっとも海面水温が高い海域のひとつで、それだけでも熱帯低気圧が発生・発達しやすい状況です。しかも、この海域で発生した熱帯低気圧や台風はその後、太平洋に面した陸地に向かって進んでいきやすい性質があります。
 台風は自力で進むことはできず、ほうっておかれると、わずかに北に移動するだけです。台風を動かしているのは、周囲の風なのです。台風が発生する赤道近くの海域は、ふだん太平洋高気圧から吹き出す偏東風、赤道貿易風が吹いているため、この風に流されて台風は西へ進みます。そのままベトナムやフィリピンに上陸する場合もありますが、この海域は、太平洋高気圧の西端に当たって吹き出す風が、東風から南東風、南風へと、西へ行くほど時計回りに向きを変えていることが多い場所です。
 偏東風に流されてきた台風は、この太平洋高気圧の縁の風に乗ると、進路を徐々に北寄りに変えて、北上してきます。あとは、太平洋高気圧の西への張り出し具合で、大きく西に張り出していれば中国大陸に向かい、太平洋高気圧の縁が日本列島に当たっていれば、日本列島を直撃します。」
 ……そうだったんだ……台風というと「強風」「渦を巻いている」イメージが強かったので、台風自身の強力なエネルギーで動いているのかと勘違いしていました……。
 最近は巨大台風や豪雨が増えているように感じますが、「第4章 異常気象」によると、地球温暖化の影響が強いようです。次のようなことが書いてありました。
・台風が発達する、あるいは衰えずに来る原因は、海面水温が高くなっていることが考えられます。
・最近は気温が年々高くなる傾向があります。
・気温が高いということは、空気中に含まれている水蒸気が多い可能性が高いということでもあります(豪雨、落雷、雹の危険性が高まる)
 また、「大雪」も増加傾向にあるそうですが、なんとこれも地球温暖化の影響なのかもしれません。気温が高くなってきたために、空気中の水蒸気が増えていることが関連していると考えられているのだとか。……なるほど、温暖化しているのに大雪になるのは、そういう理由なんですか……。
 そして地球温暖化の原因の一つとされる温室効果については、次のように説明されていました。
「地球全体の気温は、平均15℃。しかし、太陽から受け取るエネルギーと、地球が宇宙に放射する熱量から計算した平均気温はマイナス18℃になり、33℃の開きがあります。これは、地球の大気に含まれる二酸化炭素や水蒸気などが、地球から宇宙に放射される熱の一部を吸収して、大気を温めているためです。
 これが「温室効果」であり、その原因となる物質が「温室効果ガス」です。温室効果ガスの代表的なものは水蒸気で、33℃のうち半分ほどが水蒸気によるものです。次いで、二酸化炭素の影響が約20%、そして雲の影響も20%近くになります。(中略)
 水は時間や場所によって、その量も、存在する形も絶えず変化しており、一定ではありません。このため、地球温暖化にどの程度影響しているのかを推測するのは困難です。
 いっぽう、二酸化炭素は、空気中に含まれる量は0.04%ほどの微々たるものですが、温室効果への寄与度が高く、本来その濃度はほぼ一定であるはずです。しかし、この二酸化炭素濃度が、十九世紀半ばと比べると40%以上増加しています。増加に応じて世界の平均気温も上昇していることから、二酸化炭素濃度の上昇によって温室効果が強まって気温が上昇、気温が上昇すれば大気中の水蒸気量も増えるため、さらに温室効果が進み、温暖化が進む、と考えられています。」
 温度が高くなると水蒸気も増えて、さらに温度が高くなってしまう……うーん。「水」は量が多いだけでなく生命に直結するだけにコントロールは難しそうですが、「二酸化炭素」の方は、どうやら私たち人間が人工的に増やしてきたらしいので、減らすことも可能だと思います。この本にも書いてあるように「化石燃料の消費を減らす」、「二酸化炭素の吸収源である森林を保護する」などの方法を、積極的に進める努力をするべきなのでしょう。
 異常気象も含めて、天気や気象の基礎知識を分かりやすく教えてくれる本で勉強になりました。興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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