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第1部 本

ユーモア

パーマネント神喜劇(万城目学)

『パーマネント神喜劇』2020/4/25
万城目 学 (著)


(感想)
 派手な柄シャツを小太りの体に纏い、下ぶくれの顔に笑みを浮かべた中年男……に見えるけど実は神様(笑)。ちょっとセコくて小心で、とびきり熱い神様が贈る、ほっこり幸せな気分になれる縁結び奮闘記です。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
 この物語は、いくつかのエピソードで構成されている連作短編集です。
 最初のカップルは、超慎重な真面目人間の篠崎肇と、その恋人の坂本みさき。同じ会社の同僚ですが、最近、恋人のみさきが何やら不機嫌そうで肇は困っているのです。
 その悩みの相談にのってくれたのは、神様ではなく、篠崎の先輩の水森。このアドバイスにはすっかり感心してしまったので、ちょっと長いですが以下に紹介します。
   *
「いいか、篠崎」
 数日前、職場で隣の席に座る、三つ先輩の水森は、後輩から恋愛相談をもちかけられ、おもむろに足を組んでこう答えた。
「女は生き物として、共感型に分類できる。彼女たちが怒りに任せて話すとき、正確な反論や、正しい状況の説明なんて、最初から求めていやしない。彼女たちが求めているものは、ズバリ『共感』だ。だから、お前はとにかく共感しろ。そして謝れ。そうすれば、道は自ずと拓けてくる。あと、ひと言つけ加えさせてもらうならば、ウチの部長も同じタイプだ。五十二歳の『共感』型おっさんだ。だから、俺は共感する。ひたすら、おっしゃるとおりです、を連呼する。しかるのち謝る。すると、部長の前に、細い細い道が拓ける。ただ、女とちがうのは、その結果、仲直りできたとしても、まったく気分がよくならないということだ」
 水森は重々しくうなずくと、イスから立ち上がった。彼が担当する取引先とのトラブルの件で、朝から相当機嫌の悪い部長の元へ、ネクタイを締めなおし、「じゃ、行ってくるわ」と覚悟の表情で向かっていった。
   *
 ……な、なるほど! 実際にはなかなかしてもらえないほど、ためになるアドバイス!
 しかもこういう「共感型」の人って、女性だけじゃなく割とよくいるタイプかも……。ん? もしかして私自身も……? と少し反省してしまいましたが……合理主義者の私の場合、相手が「ひたすら、おっしゃるとおりです、を連呼する。しかるのち謝る」行動をとってきてもウザく感じるだけだろうし、その後、相手が怒りの直接の原因を修正しないようなら、こいつは結局、口だけ野郎なんだなと思ってしまいそうなので、少なくとも共感型ではないのかも(苦笑)。
 そして坂本みさきも共感型ではないようです。篠崎肇は水森先輩のありがたいアドバイス通りに頑張るのですが、この二人の関係を改善してくれるのは、なんと、あのちょっとサエない「神様」なのでした!
 ……神様って、ひょっとしてすごく頼りになる?
 ……神頼みも、してみるものかも……。
 ……困ったときには、神社に行くのもアリかも……。
 読んでいるうちに、だんだんそんな気になってくるエピソード満載です(笑)。
 面白くて、とっても癒される素敵な神様物語でした。
 万城目さんの周囲には、きっと嫌な人が一人もいないんだろうなーと感じさせられるほど、読んでいて愛と幸福感に満たされました。短編集なので気軽に読めるのもいい感じ。みなさんも、ぜひ読んでみてください。きっと癒されますよ☆
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