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第1部 本

医学&薬学

丁寧に考える新型コロナ(岩田健太郎)

『丁寧に考える新型コロナ (光文社新書)』2020/10/14
岩田健太郎 (著)


(感想)
 長期戦が予想されている新型コロナウイルスについて、感染対策・検査・マスク・治療などの項目を、数字の意味や読み解き方、状況判断やコミュニケーション、専門家のあるべき姿、政府対応の問題点などの視点を絡めて考察している本で、項目は次の通りです。(なお、巻末には、数理モデルによる疫学研究を行っている西浦博さんとの特別対談 「西浦博先生に丁寧に聞く(西浦博×岩田健太郎)」も掲載されています。)
ファイル1 なぜ国ごとに差が出たのか。そして第二波がどうなるか。
ファイル2 検査について
ファイル3 マスクについて
ファイル4 緊急事態宣言の考え方
ファイル5 プール、温泉……そして、「専門家」と「信用」の基準
ファイル6 楽器、音楽、コンサート――リスクヘッジの方法
ファイル7 治療について
   *
「感染症の防御、感染症流行の抑止に非常に効果が高いのは、「感染経路の遮断」です。」ということで、対策の概要は次の通り。
・ウイルスがどこにいるかわからないなら、どこでもいると考えて、感染経路ブロックのために手指を消毒する。
・病院に行くとき、咳やくしゃみがあるならマスクをする。
・家族がコロナになったら、こまめに手指の消毒、患者はマスクをつけ部屋の換気をよくする、患者の服は熱湯に5分漬けた後に普通に洗濯する。
 などなど。なお「免疫力はアップさせるのではなく、バランスをよくすることが大事。そのための方法は、休養、睡眠、適度な運動、食事栄養のバランス」とか、「無症状の場合は、基本的に周りにうつす心配はない」のだとか。
 また、プールでの新型コロナウイルス対策は、「水中よりも、水上・更衣室・付き添いがリスク」だそうです。
「理論的には、プールで感染する可能性のあるウイルス感染症は、糞口感染と皮膚からの接触感染だと思います。
 過去には、アデノウイルス、A型肝炎ウイルス、ノロウイルスなどの、水泳プールでの感染アウトブレイクが起きてきました。プールの水や浮き輪、はしごなどに付着した鼻水、唾液、糞便、などが感染源のようです。
 しかし、こうした感染症は、プールの消毒が十分に行われていない状況で起きたものがほとんどで、塩素系の消毒を適切に行った場合は、プールの水の細菌やウイルスは即座に死んでしまいます。
 よって、適切に塩素系の消毒が行われているプールであれば、水の中で新型コロナウイルスに感染する可能性はほぼないと思います。水中でのマスクやフェイスシールドも不要です。
 もちろん、水上で、咳などから飛沫感染をする可能性は(プールの内外で)残ります。ですから、やはりソーシャルディスタンスは大事でして、2m程度の距離を他の人と確保することが大事です。(中略)
 狭いプールサイドで十分な距離を確保できない場合は、(プールの外では)マスクを着用するのも一案でしょう。また、ドアノブなどに触れたときの手指消毒もとても大事です。これはプールとは無関係に適用できる一般的な対応策ですね。」
 プールでの対策に関しては、日本スイミングクラブ協会がガイドラインを作っているそうなので、気になる方はそれもチェックしてみてください。
 温泉については、「温泉の温度は場所や浴槽により異なりますが、40℃台のところが多いようです。この温度では、新型コロナウイルスは即座には死にません。」だそうです。温泉についても、日本温泉協会が新型コロナウイルス対応ガイドラインを作っているそうです。
 さらに楽器の演奏などに関しては、クラシック音楽公演運営推進協議会、日本管打・吹奏楽学会が「クラシック音楽演奏・鑑賞にともなう飛沫感染リスク検証実験 報告書」を出しているのだとか。
「これによると、フルートやオーボエ、クラリネットなどの管楽器では、楽器先端部でこそ微粒子を測定するものの、距離が離れた測定点では微粒子の検出はなかったようです。微粒子発生の多かったトランペットやトロンボーンですら、2mの距離をとれば測定はわずかになりました。バイオリンなどの弦楽器も(予想通り)周囲への微粒子の発生はわずかでしたし、声楽ですら、口元以外からの微粒子の測定はわずかでした。」
 感染症のことをあまり気にせずに、運動や音楽、旅行などを存分に楽しめる日がくることを願っていますが、それまでの間は、これらのガイドラインに沿った行動を心掛けたいと思います。
 なお、岩田さんは、マスクの効果については懐疑的のようでしたが、個人的には、マスクをするのがとても辛い状況(非常に暑い・運動中)や、明らかに周囲に人がいない状況でなければ、マスクをしたいと考えています。コロナに感染しても症状がでない人が多いようなので、気がつかないままコロナに感染している可能性がゼロでない以上、自分から感染を広げるリスクは最小にしたいので……。
 また、「巻末特別対談 「西浦博先生に丁寧に聞く」」も読みごたえがありました。特に、コロナをきっかけに、仕事のやり方を見直そうという、岩田さんの次のご意見には共感を覚えました。
「コロナの時代であろうと、コロナが克服されようと、必要のないものはどんどんこの機会にやめてしまって、それでもっと楽になろうぜ、って。この「もっと楽をしようぜ」というのがそもそも許される、励行されるエートスを作るのが大事です。」
 例えば、現在の感染症の届け出システムは、入力項目が多すぎて問題になっているようです。次の感染症に備えるためにも、この機会に、無駄な決まり事や儀式は省略する方向へ、どんどん進んで欲しいと思います(私自身もそう心掛けたいと思います)。
 参考になることを、いろいろ知ることができる本でした。コロナウイルスなどの感染症に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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