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第1部 本

ビジネス・経営

HUMAN+MACHINE 人間+マシン(ドーアティ)

『HUMAN+MACHINE 人間+マシン: AI時代の8つの融合スキル』2018/11/23
ポール・R・ドーアティ (著), & 3 その他


(感想)
 製造、サプライチェーン、会計、R&D、営業、マーケティング……様々な分野で、人間とAI(人工知能)との「協働」が始まっています。GE、マイクロソフト、BMW、グーグル、アマゾンなどの先進企業に学ぶ、「これまでと違う仕事」と「これまでと違う仕事のやり方」を教えてくれる本です。
 グーグルなどAIとの協働に成功しているリーディングカンパニーには、次の5つの重要な原則があるそうです。
1)組織のマインドセット:あるべき業務プロセス(人間がAIを改良、マシンが人間の能力を拡張する)を想像する
2)実験:AIをテストしながら業務を再検討
3)リーダーシップ:最初の段階からAIの責任ある使用にコミットする
4)データ:インテリジェント・システムを動かすための「データ・サプライチェーン」を構築する
5)スキル:8つの融合スキルを積極的に開発
 ……そして、この「8つの融合(人間とマシンのコラボレーションを発展させる)スキル」とは、次のものを言うのだとか。
1)人間性回復スキル:仕事に人間らしさを取り戻す力
2)定着化遂行スキル:人間とマシンの共存を日常化する力
3)判断プロセス統合スキル:マシンの力を借りて判断する力
4)合理的質問スキル:マシンから必要な情報を引き出す力
5)ボットを利用した能力拡張スキル:ボットを使いこなす能力
6)身体的かつ精神的融合スキル:心身ともにマシンと融合する力
7)相互学習スキル:マシンに教え、マシンから学ぶ力
8)継続的再設計スキル:マシンとともに変わり続ける力
   *
 この本で強調されているのは、「AIと人間との共存」。最近は「AIに仕事を奪われる脅威」に注目が集まりがちですが、AIが我々の生活を便利で快適な方向に変えつつあるのを実感しているので、AIとは、今後もより良く「共存」するほうが合理的だと思います。この本はそのことの大切さを教えてくれるとともに、今後の方向性を考える上で参考になることを紹介してくれます。
 特に興味深かったのが、「第5章 アルゴリズムを正しく設計する―「責任あるAI」を実現する上で人間が演じる3つの役割」で、それは次の3つです。
1)トレーナー(訓練者):AIを訓練する
2)エクスプレイナー(説明者):AIの下した結論の理由を説明する
3)サステイナー(維持者):AIシステムが正しく動作するのを維持する
   *
 トレーナー(訓練者)には、「データ衛生士(訓練用データに偏見が含まれていないのをチェックする)」の役割もあるそうです。
 またエクスプレイナー(説明者)には、「アルゴリズム・フォレンジクス・アナリスト(AIの結論への道筋を説明可能にする。AIの結論が間違った場合は、一種の「検視」を実施して、その原因を把握する)役割と、「透明性アナリスト(システムの管理)」の役割もあるのだとか。
 さらにサステイナー(維持者)は、AIが適切に利用されるように保証する役割があり、「倫理コンプライアンスマネージャー(監査役やオンブズマン)」の役割も果たすのです。
 ……これらの役割って、なんだか人間の「教育訓練部」、「監理者(監督)」、「人事部」に似ているなーと思っていたら、この本に次の文章が。
「人事マネージャーが人間の従業員を監督するのと同様に、彼らはAIシステムを監督するのである。彼らは人事部ならぬ「マシン・リレーション部」で働き、定期的に組織内にある全AIシステムのパフォーマンスレビューを実施する。このマシンレビューでは、AIシステムの客観的パフォーマンスや、各種のソフトな目標(ダイバーシティの向上といった組織的価値の実現、環境の改善に対するコミットメント等)など無数の要素が考慮される。」
 AIのための教育&人事部、今後すごく重要になるのではないでしょうか。
 人間とマシンが共に働く新しい時代への指針を与えてくれる本でした。
 巻末には、アクセンチュアの保科さんによる「解説 日本語版監修によせて、日本と日本企業が取り組みべきこと」もあり、本書の解説の他、日本におけるAI活用へのアドバイスを読むこともできます。
 将来の企業経営を考える上で、とても参考になると思いますので、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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