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第1部 本

医学&薬学

iPS細胞の研究室:体のしくみから研究の未来まで(京都大学iPS細胞研究所国際広報室)

『iPS細胞の研究室:体のしくみから研究の未来まで』2020/4/1
京都大学iPS細胞研究所国際広報室 (編集)


(感想)
 2012 年、山中伸弥博士がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、一躍有名になったiPS 細胞。この本は、いろいろな病気の治療に役立つ可能性があるといわれているiPS細胞とは何かという疑問を入口に、生物学の歴史や最先端の研究について教えてくれた上で、iPS細胞研究の未来についても考察しています。
 Part1は、iPS細胞についての分かりやすい解説。Part2では、ヒトの体の仕組みや生物学の説明。そしてPart3は、iPS細胞の研究者へのインタビューです。
 iPS細胞が、1)人工的につくられた細胞で、2)ほぼ無限に分裂し数を増やすことができ、3)体を作るほぼすべての細胞に変化できるという特徴を持っていることは知っていたので、「iPS細胞から作った細胞を患者さんに移植する再生医療」に特に期待していたのですが、実は、薬を作るためにも利用できるそうです。
「患者さんの細胞からiPS細胞をつくると、病気の種類によっては、そのiPS細胞が病気の記憶を引き継いでいることがあります。」……病気の記憶をもったiPS細胞を利用して、薬の効き目を試すことも出来るんですね!
 またiPS細胞の作り方も、どんどん改良されているようです。
「科学者たちは、ウイルスが遺伝子を送り込む力を利用して、特定の遺伝子を細胞に入れることを思いつきました。特に、レトロウイルスというウイルスは、核にあるDNAを1カ所切って、そこに自分の遺伝情報をまぎれこませることができます。そこで、iPS細胞をつくるための4つの遺伝子をレトロウイルスに入れて、それを皮膚や血液の細胞に送り込ませたのです。ところが、この方法には問題がありました。細胞の中にある重要な遺伝子を切ってしまう可能性があるのです。重要な遺伝子が切れてしまって、その遺伝子がはたらかなくなると、細胞ががん細胞に変化してしまう恐れがあります。これはiPS細胞を医療に使っていくために、克服しなければならない重要な問題でした。
 レトロウイルスの問題を解決するために登場したのが、エピソーマルプラスミドです。エピソーマルプラスミドは、輪っかのような形をしたDNAで、核の中に入っていかないのが特徴です。核に入りこまないので、もともと細胞がもっている遺伝子を傷つける心配はありません。実は遺伝子は、細胞の中に入りさえすれば、核の外にあったとしても、mRNAに写し取られてはたらくことができます。そこで、細胞に電圧をかけて穴をあけ、そこからエピソーマルプラスミドを送り込みます。すると、エピソーマルプラスミドがもつ遺伝子はしっかりと機能して、iPS細胞ができあがるというわけです。」
 今ではレトロウイルスを使っていないんですか。しかも「遺伝子は、細胞の中に入りさえすれば、核の外にあったとしても、mRNAに写し取られてはたらくことができる」とは……新しい事実を知ることが出来て、とても参考になりました。
 この本は、iPS細胞だけでなく、ヒトの体のしくみなどの基礎的な知識の他、最先端の研究も教えてくれます。また研究者(お医者さんではなく理学療法士の方や、免疫システム研究者の方)ののインタビューもありますので、将来、iPS細胞の仕事をしてみたい方にとっても参考になるのではないでしょうか。興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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 京都大学iPS細胞研究所国際広報室、他にも『iPS細胞の歩みと挑戦』などの本を出しています。
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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