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第1部 本

脳&心理&人工知能

AI新時代(富士通エフ・オー・エム)

『AI新時代 富士通エバンジェリストが見据える未来ビジョン』2019/7/12
富士通エフ・オー・エム株式会社 (FOM出版) (著), 中山 五輪男 (監修)


(感想)
 富士通のAI技術を中心に、すでにビジネスやスポーツ現場で使われているAIシステムの最新動向を紹介してくれる本です。
 AIは、「未来を牽引する技術」として大手のIT企業がこぞって最も力を入れている分野なので、技術進化と実用化スピードが速いのは知っていましたが、現実に、すでにここまで来ているのか!と驚かされました(汗)。
 AIだけでなく、ナノマシンの最新動向も掲載されています。例えば「2014年には、東京大学の片岡一則教授らの研究グループが、光に反応して治療用の遺伝子をがんに届ける新世代のナノマシンの開発に成功した」そうで、「注射で体内に入れるナノマシンが、治療用の遺伝子をがん細胞に導入する」なんていう驚きの治療法が可能になるのだとか!
 また「人体へのマイクロチップ埋め込み」が最も普及しているのはスウェーデンなのだそうです。「国内での現金による取引がわずか2%ほどしかないほどキャッシュレス化が進んでいるスウェーデンでは、決済などを円滑にするべく、2018年時点で3,000人以上がマイクロチップを手に埋め込んで活用しています。」……うーん、良いことなのかどうかは分かりませんが、なんか凄い状況ですね……。
 そして最も期待させられたのが、富士通のAI「Zinrai」。なんとZinraiは、機械学習によるAIの欠点「AIが判断する過程はブラックボックスで、人間には判断理由が分からない」を克服し、「判断の理由や根拠を説明できる」ようにしたそうです!
「富士通は、前述の「Deep Tensor」と「ナレッジグラフ」という2つの技術を組み合わせることで、Zinraiが導く結果の理由や根拠の説明を可能にしました。Deep Tensorはデータの要素同士の関係性を分析して「結果と理由(推定因子)」を出力します。推定因子はAIが出した理由であるため、人間にわかる表現ではありません。そこで推定因子をナレッジグラフに入力します。ナレッジグラフは実世界の知識の関連性を表すデータベースであるため、人間にわかる言葉で「根拠」を思考のプロセスとして出力できます。」
 この技術は、ゲノム医療での検証が始まっているそうです。このような技術で、AIの思考過程が推定できるようになれば、より安心して「AIによる判断」を受け入れることが出来ますし、AIの判断に疑問を抱いた時にも、その解析や改善を効率良く行えるのではないでしょうか。
 この他にも、「Wide Learning(少量のデータでもAIを活用できる機械学習の新技術)」とか、「組み合わせ最適化問題に特化したデジタルアニーラ(量子現象に着想を得た独自の回路)」、さらには「国際体操連盟が採用したAI自動採点システム」など、富士通が行っている最新のAI技術や事例を、たくさん読むことが出来ました。
 AIの実用化は、すでにここまで進んでいたんですね! 正直に言って、AIが凄いスピードで進化しているのは知っていましたが、それでも人間を凌駕するなんて遥か先のことだろうという根拠のない自信(?)を抱いていたのですが……もしかしたら、そうでもないのかも……? この本には次のような記述がありました。
「2010の時点では1つのICに搭載可能なトランジスタは30億個でしたが、2017年には210億個を超えており、人の脳細胞の数である300億個を超えるのは時間の問題です。もちろん、脳細胞の働きはトランジスタより複雑で、より特殊な機能を備えていますが、トランジスタの数で補える機能もあるでしょうし、新しいアルゴリズムによって代替できる機能も増えてくるでしょう。いずれにしても、今やコンピュータの「頭脳」は、人類のそれと比較できるほどまで進化してきているのです。」
 ……はあー、そうなんですかー(ため息)……人間として、AIと「賢く」付き合っていけるよう、この分野には今後も注目していきたいと思います。
 さて、この本で初めて知った「富士通エバンジェリスト」という仕事ですが、「あとがきに代えて」には次の記述がありました。
「私は富士通に入る前、ソフトバンクのエバンジェリストとして、約10年間活動してきました。エバンジェリストとは、ITのトレンドや自社製品などの「伝道者」です。単なる広報と違うのは、サービスや製品の秘める、スペックだけでない新しい価値を見出し、それを活用することで実現できる未来を提示するという点でしょう。」
 なんだか面白い仕事のようですね。
 日本の会社には、富士通に限らず、「自己アピールしない(黙っていても、きちんとした仕事をすれば分かってもらえる)」という奥ゆかしい気風があるように思いますが、これからは、日本の会社もどんどん世界に向けて自分の力をアピールしていくべきだと思います。技術力をアピールすることで、より高度な仕事を受注できれば、その経験がさらに自らの能力を高めていくことにつながるのではないでしょうか。このような活動(仕事)が、今後、日本の企業の中でどんどん育って広がっていくことを期待したいと思います。
 富士通の先進的なAI技術を幅広く知ることが出来る本でした。AIに興味のある方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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