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第1部 本

生物・進化

海洋生命5億年史 サメ帝国の逆襲(土屋健)

『海洋生命5億年史 サメ帝国の逆襲』2018/7/20
土屋 健 (著), 田中 源吾 (監修), 冨田 武照 (監修), 小西 卓


(感想)
 海洋生命5億年の歴史を、豊富なフルカラーのイラストで紹介してくれる本です。
 タイトルに『サメ帝国の逆襲』とありますが、現在の海で最強の生き物の一つ「サメ」だけに焦点を当てた本ではなく、現在に至るまでの海洋生命の歴史を紹介してくれる本なので、サメ愛好家(?)の方には物足りないかもしれません。それでも、陸上と同じように海洋でも熾烈な競争や環境の激変によって、さまざまな生物が栄枯盛衰を繰り広げてきたことが、迫力のあるイラスト(想像図)で描かれていて、歴史(とくに生命の歴史)に興味がある方にとっては、とても読み応えのある古生物の本(図鑑)だと思います。内容は次の通りです。
第1章 壮大なる序章 「アノマロカリス」から「ウミサソリ」へ
第2章 剛と軟。主導権を握るのは? 「甲冑魚」vs「初期のサメ」
第3章 最強と最恐。海洋覇権をめぐる決戦 「サメ類の絶対王者」vs「モササウルス類」
第4章 新勢力は「海の王」となるか 「クジラ」vs「メガロドン」

 39億年以上前に最初の生命が海で誕生し、約5億年前のカンブリア紀、海では武装する生物(棘・眼・ハサミ・角・鱗・顎・歯)が急増しました。
 約4億年前に始まったデボン紀になると、海の主役は魚へと交代し、さらに陸上が「恐竜時代」を迎えた中生代では、海でも「爬虫類帝国」が築かれて、当時の海洋生態系の頂点に立っていたサメ・クレトキシリナとの覇権争いが発生。
 そして小惑星による大量絶滅によって海棲爬虫類が姿を消して、新生代に入ると、40cmほどの陸上哺乳類が半陸半水生活を始めて、クジラの歴史が動き出します。そのクジラ類を迎え撃つのは、サメ類史上最大級のメガロドンでした……。
 海の世界の生命進化の歴史が、古生物のイラストとともに鮮やかに語られていきます(ただし古生物のイラストは、顎や歯など身体の一部しか化石として残っていないものが多いので、想像図が多いのですが……)。古代の海の世界が、リアルに感じられました。
 ところで、この本の「はじめに」では、次のような指摘がありました。
「『生命の歴史』と聞いて、次のような「王道の物語」を思い浮かべませんか? 海の中の「顕微鏡サイズの微生物」からはじまって、魚の登場、両生類の出現で舞台は陸へと移り、大森林を歩く初期の爬虫類と単弓類(哺乳類の祖先を含むグループ)。そして、やがてくる大恐竜時代……と、ここでストップです! 両生類の登場で陸に視点が移ってしまいがちですが、海の生命史がそこで終わったわけではありません。海には「海の物語」が存在し、陸上世界に負けず劣らずのダイナミックな展開が繰り返されてきました。」
 ……確かにその通りでした!(汗)。私が読んできた「生命史」も、だいたいシーラカンスぐらいの時代でスポットライトは「海」から「陸上」へと移っていき、現代の陸上の覇者「人間」へと至るものがほとんどだったと思います。だから、「クジラはいったん陸上へと進んだ哺乳類が、海へ戻っていって進化したもの」ということは知っていても、その先祖となる哺乳類がどんな姿をしていたのか、まったく知らなかったのでした……(汗)。
 海洋生命の歴史にスポットを当てたこの本では、もちろんクジラの生命史も知ることが出来ます。例えば、クジラ類が生まれる前の「クジラ類に最も近い陸上哺乳類」として、「インドヒウス」のイラストを見ることができるのですが……なんと「マメジカ」みたいな可愛い姿をしています! また最古のクジラ類は、「パキケトゥス」。ワニのような頭を持つ犬みたいな生き物(ラブラドール・レトリーバーとほぼ同サイズ)でした。さらに一歩進んだクジラ類の「アンブロケトゥス」は、毛の生えたワニみたい……これらは化石分析から、半陸半水の生活をしていたようです。
 知られざる「海洋生命」の5億年史を知ることが出来る本です。古生物学に興味のある方は、ぜひ読んでみて下さい。
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 土屋さんの他の本、『化石ドラマチック』、『化石の探偵術』に関する記事もごらんください。
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 土屋さんは、他にも『古生物のサイズが実感できる! リアルサイズ古生物図鑑 古生代編』、『古生物のサイズが実感できる! リアルサイズ古生物図鑑 中生代編』などの本を出しています。
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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