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第1部 本

社会

「危機感のない日本」の危機(大石久和)

『「危機感のない日本」の危機』2017/9/8
大石久和 (著)


(感想)
 かつては繁栄を極めた日本がどうしてこうなってしまったのか……元官僚の大石さんが、国土・インフラ・経済・法律・制度・言語など多岐にわたる側面から、現代の日本に起きている問題を考察し、われわれに問題提起している本です。
 1995年頃には世界のGDPの18%を占める水準だった日本が、最近は、6%を切るレベルに落ちてしまっています。しかも所得格差も拡大しているそうで、「OECD加盟国のなかでも、わが国は相対貧困率がかなり高い国となっている。」のだとか。
「わが国が「先進国のなかで相対的に最も後退している国」「世界のなかで唯一経済成長しない国」になったのは、「われわれの選択の結果」なのであって、「世界の経済情勢のせいだ」などと言えるものではない。なぜなら日本以外のすべての国が、この間も経済成長してきたからである。人工の増加国も減少国も、日本以外は成長してきたのだ。」そうです(汗)。
 この本は、日本が直面している諸問題について鋭く指摘しています。目次は次の通りです。
はじめに──日本国が溶解し始めている
第一章 世界のなかで唯一経済成長しない国
第二章 新自由主義経済学による日本破壊
第三章 深まらない安全保障議論と憲法
第四章 東京首都圏一極集中という危機
第五章 先進各国に大きく遅れをとるインフラ環境
第六章 壊れていく日本語
第七章 日本を弱くした選挙制度
第八章 揺らぐ日本の土地所有
第九章 国家の根幹「公務員制度」の危機
第一〇章 崩壊していく子供たち
第一一章 人生一〇〇年時代の制度設計
おわりに──われわれが気づけば、豊かさは取り戻せる
  *
 どれも、まさに我々一人一人が真剣に考え、対処しなければならない問題だと感じました。例えば「第三章 深まらない安全保障議論と憲法」では、自衛隊と憲法や原子力発電所というデリケートな問題に関して、はっきり意見を述べています。
「志願制であれ、徴兵制であれ、すべての国は侵略から国を守るためには、武器をとることをためらわないという覚悟を内外に示している。日本は憲法の議論、あるいは太平洋戦争(大東亜戦争)の反省からとして、そういった努力を結局は放棄してきたと言っても過言ではない。平和憲法という言葉を盾に、世界のなかで日本が唯一そうした努力をきちんと行ってこなかったということ、また世界が日本について、そうしたむなしくもつらい努力とまともに向き合ってこなかった国だ、と見ていることをわれわれは十分に認識しておかなければならない。」
「他の国に比べても小さくない自衛隊という組織は整っているものの、憲法上の制約等々もあって、自衛隊を動かす諸制度が実に不十分なのである。」
 ……日本の自衛隊は、「いざという時、動けない」のだそうです。個人的には、「自分の国は自分で守る」のが原則だと考えていますし、自衛隊には「いざという時に機敏に動いて欲しい」と願っているので、危機発生時に自衛隊がどのように動けるのかについて懸念を抱いています。危機発生時に、どこかに書類申請しなければ動けないとか、法律で縛られていて動けないとかいうことがあると、自らを護ることも出来ない自衛隊になってしまうのではないでしょうか。
 また「第6章 壊れていく日本語」は、「流行語の乱造で壊れていく日本語」を嘆く内容なのかと思いきや、もっと本質的な問題に関するものでした。
「東日本大震災時に当時の菅直人首相が、東日本大震災からの復興に向けて三原則を打ち上げたことがあった。それは、「地域の要望を尊重する」「全国民の英知を結集する」「未来志向の復興を目指す」というものであったが、これに対して日本経済新聞は、これでは何も言っていないに等しいと批判した。言う必要もないほどの当たり前のことばかりなのだ。(中略)この三項目のどれも、具体の方法ということになると簡単ではないのである。方法論なくして主張に内容なしなのである。」
 この章では、政治家の話やマスコミ報道にも、「具体的でない」「理由も方法論もない」「価値観もない」、何も言ってもいないに等しい文章が多いことを指摘しているのでした。……うーん、確かに……。
 これに関しては、自分自身にも思い当たる点があるので、反省しなければいけないな、と思わされました。
「日本の抱える諸問題」に関して、驚くほど本音でズバリと指摘している本です。この本の内容すべてに共感したわけではありませんでしたが、いろいろ考えさせられ、反省もさせられました。あなたはどう思うでしょうか。ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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