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第1部 本

防犯防災&アウトドア

防災

災害ボランティアの心構え(村井雅清)

『災害ボランティアの心構え (SB新書)』2011/6/16
村井 雅清 (著)


(感想)
 ボランティア活動を実践するための心構えを、世界各地で災害復興に携わってきたベテランボランティアの村井さんが解説してくれる本です。
 阪神淡路大震災、東日本大震災など、大災害の多い日本。テレビなどで次々と伝わる被災地の惨状を目の当たりにして「自分も何か彼らの役に立てないだろうか」と考える人も多く、災害現場で多くの人々がボランティア活動をしているのを目にするたびに、日本は本当にいい国だなーと、心の底から感動し、感謝させられます。
 この本は、阪神淡路大震災で初めてボランティアを経験して以来、継続的にボランティア活動を行ってきた村井さんが、災害ボランティア活動の現状、内容を具体的に紹介してくれます。
 本書の冒頭では、2011年3月11日に発生した東日本大震災の時、すぐに神戸から被災地に向かったボランティアグループの仲間からの状況報告が紹介されていましたが、その悲惨な状況の生々しさに、胸が痛みました。
 被災地ではさまざまなニーズがあり、それにいち早く応えられるのは、被災地全体に目配りすることを求められる行政よりも、個人として被災者と個別に柔軟に対応できるボランティアなのかもしれません。村井さんは次のように言っています。
「私は阪神淡路大震災で初めてボランティアを経験して以来、「ボランティアは何でもありや!」を考え方の中心に置き、実践においてもそのスタンスを貫いてきた。非常時に行政がやることのすき間を埋めるのがボランティアだから、ボランティアは「十人十色」「多様多彩」であるべきで、自発性・独立性・創造性を併せもつ存在でなくてはならないと主張し続けてきた。」
 ……本当にその通りだと思います。
 とても素晴らしい活動をしている村井さんですが、「管理される」ことを嫌っているようで、本書の中で、マニュアルやボランティアコーディネーターなどいらないと批判しているのが、少し気になりました。確かにあまりに細かいマニュアルや、管理を気にするあまり行動が遅くなりがちなボランティアコーディネーターなら、「ない方がまし」と思うのかもしれません。でも現実には、両方とも必要なものだと思います。なぜなら初心者は「何かで学ばなければ、自分がどう動けば被災者のためになるのか分からない」のだし、大勢の人が協働する時には、誰か調整役がいないと、作業分担もうまくいかないし、誰にどう連絡していいのかも分からないのではないでしょうか。そのためにも、どんなマニュアルにすれば、みんなが(自分のレベルに合わせて)活動しやすいのか、ボランティアコーディネーターには、どう働いて欲しいのかについて、具体的に提言して欲しかったなと、少し残念に思いました。
 本書の中では、内閣府が2005年に定めた『防災ボランティアの「お作法」集~活動に参加するあなたへ、みんなでまもりたいこと』という手引書(ウェブ上でも公開中)の内容が紹介されていましたが、その中には、「災害ボランティアは、水・食料・常備薬・適切な服装・保険等、必要な備えをして自己完結を原則に被災地に入りましょう。(以下略)」の他に、「ボランティア活動を終えて自宅に帰る前に、観光地やショッピングセンターなど気分転換できるところに寄って、心をクールダウンさせてから帰りましょう。」のような、本当にボランティア活動をしたことのある人ならではの項目が入っていて、個人的には、なかなかいいマニュアルのように感じたのですが……。
 でも村井さんが懸念しているように、このような「マニュアル」になっていると、「自分の頭で考えなくなる人が増える」可能性もあるので、マニュアルは必要最小限のもの、ボランティアコーディネーターは能動的に動く(管理する)というより受動的に動く(調整役を果たす)、というように決めておいた方がいいのかもしれません。
 例えば「マニュアル」は次のようにしたら、どうでしょうか。
「・災害ボランティアの心得
1)命は大切にしましょう
2)自分でよく考えて行動しましょう。
・ここでのルール
1)朝×時に××に集合して定例ミーティングをする。
2)なにか困ったことがある場合は、ボランティアコーディネーターの××さんに相談する」
 そして「ボランティアコーディネーター」の役割は、ボランティア初心者への支援(活動の一般的な内容、周辺の地図や関係先連絡一覧表のコピーを渡すなど)の他は、「何か頼まれたことの調整役」を果たすことだけに限定する方がいいのかもしれません。 
 さて、被災者支援ボランティアの方々は、心の温かい人ばかりなだけに、被災地の悲惨な状況に心を痛め、自分の体力・精神力以上の頑張りをしてしまいがちなのではないかと心配してしまいます(本書の中でも「燃え尽き症候群(バーンアウト)」を防ぐための配慮がなされていました)。
 災害からの立ち直りや自立は、原則として被災者本人が行うべきことで、被災者支援ボランティアはそれを「支援」するという立場であることを忘れないようにしたいと思います。長い目でみれば、それが最も、みんなのためになるのではないでしょうか。
 最後に、この本の中で紹介されていた「補完性の原理(ローマ教皇ピオ11世の回勅(1931年))」を以下に紹介させていただきます。
「個々の人間が自らの努力と創意によって成し遂げられることを、彼らから奪い取って共同体に委託することが許されないのと同様に、より小さく、より下位の諸共同体が実施遂行できることを、より大きい、より高次の社会に委譲するのは不正である。社会のあらゆる活動はその機能と本性のゆえに、社会の成員たちに補助を提供せねばならず、彼らを破壊し吸収するようなことはけっしてあってはならない。」

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