ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

ユーモア

無脊椎水族館(宮田珠己)

『無脊椎水族館』2018/6/21
宮田 珠己 (著)


(感想)
「人生の路頭に迷ったら水族館へ行こう。」と勧めてくれる面白水族館紹介本です☆
 なぜ「人生の路頭に迷ったら水族館」なのか? というと、動物園=明るい、水族館=暗いという対比が成り立つからだそうです。
「(前略)暗い館内は黙って陰気な顔をしていても見えにくく、明るくふるまわなければならないプレッシャーとは無縁な空間になっている。つまり陽気で社交的でなければ浮いてしまう動物園に対し、陰気で孤独であっても、ありのままになじめる空間だということ。それが、水族館の知られざるもうひとつのいい点である。」
 ……なるほど(笑)。私も水族館が好きですが……そういうことだったのか、納得……。
 だから「水族館には三人以上で出かけてはいけない。必ずふたりまでだ。三人となればそれはもう小さな社会であるから、なるべく社会から遠ざかりたくて水族館にいくのに、わざわざ社会を持ち込んでは意味がない。ただし全員が無口で陰気である場合は、三人までは許される。」のだとか(笑)。
 ……なんかもう出だしから絶好調って感じで、読んでいて笑いが止まりませんでした。どうしてこんなに面白いの、ちくしょうめ、と悔しくなるほど文章が笑えるだけでなく、フルカラーの写真で紹介される海洋生物たちが、どれもこれも変なヤツばかりで最高です☆ やっぱり宮田さんには、自分の好きなものを書かせておくに限りますね(笑)。この本で宮田さんは、「これはただ自分を癒すために書いている」と断言していますが、だからこんなに面白いのでしょう。
 なお、この本で紹介される水族館は、次の通りです。
 葛西臨海水族園、新江ノ島水族館、マリンピア日本海、寺泊水族博物館、アクアマリンふくしま、横浜・八景島シーパラダイス、鳥羽水族館、海響館、うみたまご、須磨海浜水族園、越前松島水族館、名古屋港水族館、加茂水族館、アクアワールド大洗、海遊館、京都大学白浜水族館、エビとカニの水族館、串本海中公園、いおワールドかごしま水族館。
 葛西臨海水族園とか横浜・八景島シーパラダイスとかは、いつも若いカップルの見学者が多いので、低評価かと思いきや意外な高評価に驚きました。もっとも水族館の目玉となるマグロの回遊大水槽(葛西臨海水族園)とか、イルカショーなどには眼もくれず、無脊椎動物がいる薄暗くて小さい水槽の紹介がメインですが(笑)。どの水族館についても、ありきたりな観光案内的な紹介でないところが素晴らしく、妙な生物についての薀蓄も参考になります。例えば、ジンガサウニの写真に添えられた説明は、こんな感じ。
「ジンガサウニ:トゲが尖っていないウニ。『海の極限生物』という本によると、長く水中にいるとおぼれて死んでしまうとのこと。ウニなのに。鎧が緻密すぎて呼吸がしにくいらしい。進化するときにもっとよく考えるべきだった。」
 その他にも、ホヤは幼生の頃にオタマジャクシみたいな形で泳ぐのに、岩に定着してホヤの形になったら、もう動かなくていいので自分の脳みそを食べてしまう(!)とか、驚愕の事実も知ることができました。大人になったら脳みそいらないって……そんな生き物がいていいのか?(苦笑)。もっともこの本、「まずエイより始めよ(注:正しくは「まず隗より始めよ」)」のように、ときどき真面目な解説のような文章で「ボケ(大嘘)」が書いてあるので、うっかり油断ができないのですが(しかもこの解説が「ボケ」だという注意書きもないのです(怒))。だから「写真」はともかく、文章(解説)の方は本気にしないほうがいいかも(汗)。
 えーと……ゆるーい文章に大笑いさせられ、妙な生き物の写真には眼が釘付けになってしまうという困ったユーモア紀行エッセイ(無脊椎動物中心の水族館紹介)でした。海洋生物で癒されたい方、ちょっと笑える話を読んで心を癒したい方は、気が向いたら読んでみてください(笑)。
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 宮田さんの他の本、『東南アジア四次元日記』、『なみのひとなみのいとなみ』、『おかしなジパング図版帖』、『だいたい四国八十八ヶ所』、『いい感じの石ころを拾いに』、『四次元温泉日記』、『日本ザンテイ世界遺産に行ってみた。』、『日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編』、『私なりに絶景 ニッポンわがまま観光記』、『東京近郊スペクタクルさんぽ』、『ニッポン47都道府県正直観光案内』に関する記事もごらんください。

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