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第1部 本

 IT

ブロックチェーンをめぐる実務・政策と法(久保田隆)

『ブロックチェーンをめぐる実務・政策と法』2018/3/20
久保田隆 (編集)


(感想)
 仮想通貨等の中核技術であるブロックチェーン技術、関連する分野の専門家が、そのビジネスへの活用から法・会計・税制までの基礎知識を解説するとともに、現在の状況と将来像を展望している本です。
 内容(目次)は次の通りです。
第1部 ブロックチェーン総論(ブロックチェーン理解の落とし穴と本書の構成、ブロックチェーンは経済社会をどう変えるか―経済学的展望)
第2部 実務と政策の視座(ブロックチェーンの法と経済学、フィンテックをめぐる課題と対応の方向性について、金融機関の戦略)
第3部 日本の法制度の詳解(ブロックチェーンと仮想通貨をめぐる法律上の基本論点、日本における仮想通貨の業法上の取扱いと課題、仮想通貨に係るマネーロンダリング規制とコンプライアンス上の課題)
   *
 仮想通貨やブロックチェーン技術に関して、法・会計・税制などの各分野の専門家が解説・考察してくれているので、実務的な知識を得ることができるだけでなく、今後の展望を考える上ですごく参考になりました。
 今後、仮想通貨は、おそらく現行の「通貨」に代わるものとして利用がさらに進むと予想されますが、現実的な問題もまだまだ数多くあることを痛感させられました。
 例えば、税制問題。「仮想通貨」は現金なのか、それとも株式や金などと同じように見なすべきなのか? とか、乱高下する価格のどれを税収対象と把握すべきか? とか、仮想通貨はどこにあるとみなすべきなのか(課税する国はどこになるのか)? とか、仮想通貨のパスワードを紛失したなどを装って税金逃れをしようとするのをどう防ぐか? とか、差し押さえは可能なのか? とか、税制問題一つとっても、かなり困難な課題が山積みのようです。
 さらに介護や相続問題。最近は認知症になる高齢者も多いですが、認知症の人の保有する仮想通貨はどうなってしまうのか? とか、急死などの緊急事態で葬儀などに多額の出費が発生した時、故人の仮想通貨で支払えるのか? とか、遺産相続でもめた場合、いったん誰かが占有してしまった仮想通貨を取り戻せるのか? とか……考えると頭が痛くなるようなリアルな問題が……。仮想通貨は「実体」がないだけに、特に認知症の人や、急な事故で脳に障害を負った人の仮想通貨がどうなるのかは、すごく深刻な問題になりそうな気がします……。
 ところで、この本の中のコラムで、ビットコインは「バーチャルカレンシー(仮想通貨)」ではなく「バーチャルゴールド(仮想金)」ではないか、という意見がありましたが、確かに「価値が乱高下している」現状を考えると、「通貨」というよりは「金」のような性質がありそうですが、「金」には実体があり、その美しさ・加工しやすさという性質から、時代を超えて皆が欲しがるものですが、仮想通貨にはまったく実体がなく、パスワードを忘れると「蒸発」するという「仮想」のものに過ぎないんですよね。そういう意味で、個人的には、仮想通貨はバーチャルゴールドではないと感じました。仮想通貨は、現金や金以上に、取り扱いに大変な注意が必要な財産なのだと思います。持ち歩きや海外送金には便利なのかもしれませんが……。
 また「通貨」というものが、実際にはもともと「情報」に過ぎないことを考えると、今後、仮想通貨が現行通貨を代替していくことは確実だと思いますが、自分が実際に使う場合には、最低限、現行通貨のように、それなりに安心して保有出来て、支払実行を保証出来る仕組みが欲しいと思います。この本を読んで、今後の仮想通貨は、匿名で使用できる仮想通貨と、中央銀行のような監督者がいる(実名で使用する)仮想通貨の二つがあるといいのでは? と思いました。現在のインターネットが、大多数の「一般」と、少数の「闇」ネットの二つがあるように、通貨も「信用性重視」のものと、「簡便性重視」のものに分かれてもいいのではないでしょうか(もちろん「通貨」の場合は、インターネットよりも堅牢な仕組みを持たせて欲しいし、「一般」と「闇」は厳密に区別して欲しいと思いますが)。
 犯罪者やテロリストのことを考えると「闇」ネットは撲滅したいような気もしますが、政治不安など人道的な意味で「闇」ネットを切実に必要としている人のことを考えると、「闇」ネットも必要悪なのかなと思ってしまいます。同じような理由で、「簡便(匿名)重視」の仮想通貨も必要なのかも知れません。ただし「簡便(匿名)性」の方は、あくまでも自己責任という姿勢で取り扱ってもらうことにすれば、非常に難しい仮想通貨の規制・管理問題が、少しは解消できるのではないでしょうか。
 それにしても……仮想通貨を「現実」社会に取り込むためには、すごく困難な問題がまだまだ多数あるのですね。それに気づかせてくれ、とても勉強になる本でした。関心がある方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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