ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

しかけ絵本(日本の作家)

絵巻じたて ひろがるえほん かわ(加古里子)

『絵巻じたて ひろがるえほん かわ』2016/9/10
加古 里子 (著, イラスト)


(感想)
 山から海への長い「川の旅」が描かれた絵本です。
「こどものとも」創刊60周年を記念して、「こどものとも絵本」のロングセラー『かわ』を絵巻じたてにしたそうです。折り畳まれたページをひろげると約7メートルにもなるのだとか! 源流から海までの川の旅が一望できます。
 両面印刷になっていて、表面はカラー(4色)印刷、裏面は黒と水色の2色で川の流れの変化がきわだつようになっています。そして、この絵本では、原作の『かわ』の最終場面に2ページ分が追加されて、長い川旅の最後に広大な海が広がるように描かれています。
 川の生まれる場所から最後に流れ込む海までの一本の流れが「絵巻」という形で、「通して」描かれているので、まるで空から川の流れをずーっと俯瞰して追っていくような気持ちになれます☆
 文句なく素敵な絵本なのですが、実は3000円+税もするので、買うのを少し躊躇していました。でも実際に手にしてみたら……「すばらしい!」と感動モノでした。
 表紙の写真でも分かるように、絵本は箱に入っています。青い絵本を箱から出して開いてみると、最初のページにはモノクロの山の絵が。右上に「たかい やまに つもった ゆきが とけて ながれでます。」から始まる文章が書いてありました。
 そして次のページをめくると、その山から流れ出た小川に、他の山上の湖からの流れが合流してきます。「いわから しみでた みず。いずみから わいた みず。みずうみの みずも ながれだします。」文章の響きもリズミカルで、目の前を、川が静かに流れて始めます。そして盆地から平野へ街へ、さらに海へと川が形や幅を変えながら流れ下っていくのです。
 最後に、ようやく広い海に辿りついたなーと余韻を楽しんだ後、再び表紙に戻るので、今度は裏面の方を開くと……目の前には、鮮やかな雪の山嶺が! カラー印刷で、再び川が流れだすのです。
 私はたまたま「モノクロ+水色」→「カラー」で読んだのですが、ぜひ、この順番で読んで欲しいと思います。というのも「モノクロ+水色」の方には、川の流れに沿った文章や説明が書いてあるのですが、「カラー」の方は風景だけだからです。それでもさっき見た、文章や説明のおかげで、ああ、これは「ダム」だったとか、これは「変電所」だったとか思い出せて、鮮やかなカラーの風景を、より「しっかり」楽しめます。記憶力のトレーニングにもなりそう(笑)。
 しかも「モノクロ+水色」の方は川だけに色がついているので、川の動きをじっくり追っていく感じに読んだのですが、「カラー」の方は、川は風景の一部に溶け込んでいて、本当に現実の風景を眺めているような感じがします。川は周囲の環境や物、人々と、こんな風に関わりながら流れていくんだなーと、「モノクロ+水色」の方とは、まったく別の見方が出来ることにも驚かされました。
 絵巻なので、ページで「途切れることなく」川が続いていくのも感動的です。
 とても素晴らしい絵本で、勉強にもなりました。でも「ダム」のところには、「水力発電の原理」を書いてあるともっと良かったなーと、ちょっと欲張った感想も抱いてしまいましたが……むしろ書いてないことで、「調べる」きっかけになりそうな気がします。お子さんと一緒に読んでいて、お子さんが「水で、どうやって発電するの?」と聞いてきたら、チャンスだと思って、図鑑やネットで調べてみましょう。「水力発電の仕組」だけでなく、「分からないことを調べる方法」も教えられて、一石二鳥だと思います(笑)。
 その他にも、「箱の表」に等高線入りの地図が描いてあるので、「これは地図っていうんだよ。うちの近くの川を地図で見てみようか」と言って、「地図の読み方」などを教えるきっかけを作ることも出来そうです。
 ゆったりした川の流れを眺めることで心が癒されるだけでなく、地形と川、人々との関わりなどを知ることも出来る、とても素敵な絵本(絵巻)です。だんぜん、お勧めです☆

※絵本は絵巻風の長い紙を折り畳んであるので、以下のページ数は目安です。裏表の両面に同じイラストが描かれています(表面はカラー(4色)印刷。裏面は、黒と水色の2色(文章入り))
・1~2ページ目:雪の積もる高い山。小さな川の流れ。
・3~4ページ目:高い山、湖から細い川が流れていきます。
・5~6ページ目:森の木立の間から見えるダム。川が流れていきます。
・7~8ページ目:険しい崖の間を川が流れていきます。
・9~10ページ目:平野の始まり。畑の間をゆるやかに川が流れていきます。
・11~12ページ目:田んぼや湿地の間を川が流れていきます。
・13~14ページ目:堤防が築かれているところを川が流れていきます。
・15~16ページ目:広い河原で遊ぶ人々の間を幅が広くなった川が流れていきます。
・17~18ページ目:浄水場や変電所の間を大きな川が流れていきます。
・19~20ページ目:街の近くを大きな川が流れていきます。
・21~22ページ目:大都会を何本もの大きな川が流れていきます。
・23~24ページ目:港から海へと大きな川が流れていきます。
・25~28ページ目:どこまでも水の続く海へ……。
   *    *    *
 加古さんは、この本の原作の『か わ (こどものとも絵本)』の他、福音館の科学シリーズの『人間』、『宇宙』、『地球』、『海』や、『小さな小さなせかい―ヒトから原子・クォーク・量子宇宙まで』、『大きな大きなせかい―ヒトから惑星・銀河・宇宙まで』、『あさよる、なつふゆちきゅうはまわる』などの本を出しています。

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