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第1部 本

社会

デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか(エイヴェント)

『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか』2017/10/20
ライアン エイヴェント (著),? Ryan Avent (原著),? 月谷 真紀 (翻訳)


(感想)
 デジタル革命による自動化、グローバリゼーション、スキルの高い少数の人間の生産性向上により、労働力が余る時代となっています。この時代を私たちはどう生き抜いていけばいいのかを考察した本で、序文では、全体の構成が次のように解説されています。
「本書では、問題を大きく四つに分ける。まず、テクノロジーの進歩によって社会変化が加速し、企業からグローバルな貿易協定まで、産業経済の基盤をなす制度への信頼が揺らいでいるという前提で、現状を概観する。次に、労働者が余るこの新しい世界の進化を方向づける経済的、社会的、政治的な主要因を探る。そして、労働力の余剰が経済の流れ――都市、金融市場、貿易パターン――を懸念すべき形で変えていくさまに迫る。最後に、この変化を乗り切るために私たちが取れそうな方法と、最も成功が期待できる領域、成功が見込めない領域について、私の考えを示したい。」
 そしてこの構成に沿って、グローバル化したデジタル時代の現状が、労働力の余剰、貧富の差の拡大、ソーシャル・キャピタル、教育、ベーシックインカムなど、さまざまな角度から検討されていきます。これらは特に目新しいものではありませんでしたが、それだけに「確かに現状はそうなっている」と思えるようなものが多く、納得のいくものだったように思います。これらの課題のほとんどには「トレードオフ」があり、例えば移民に関しても、その受け入れ・排除の両方に、メリットとデメリットがあることが、分かりやすく述べられていました。……確かに、「社会の問題」を考える時に、いつも「すごく困難な問題」だと思ってしまうのは、常にこの「トレードオフ」があるからで、万人が納得できる「適切なバランス」にするのは、不可能なのではないかと感じてしまいます。たとえ「最適解」であっても、全体的には、60%程度の満足しかもたらさないのかもしれないと……。
 それでも、それを「神の見えざる手」に委ねてしまっては、いけないようです(汗)。著者のエイヴェントさんは言います。
「(前略)すべてを見えざる手に丸投げできると思うのは甘い。放っておけば、見えざる手は強者の握りこぶしになるだけだ。」
 より多くの人(出来れば「みんな」)が幸福を感じられる社会というのは、どんな社会なのか私にはよく分かりませんが、現在の「貧富の差が拡大」している状況には、やはり問題がある気がします。エイヴェントさんが言うように、「可能なかぎりこぼれ落ちる人を出さない。富の恩恵を広く行き渡らせる」ための「再分配の仕組み」が必要なのでしょう。
 ピケティさんの『21世紀の資本』は、「自分は富者の側ではない」と思って気楽に読んでしまいましたが、この本の場合は、世界的に見ると、やはり「超・恵まれた側」にいるのかも、と感じてしまいました(汗)。低欲望人間で、今までは「節約」を美徳としてきましたが、「世界経済(の需要拡大)に貢献するために」、もう少し贅沢をすべきなのかなーとも反省してしまいます。……まあ、自分に出来ることを、無理のない範囲でやるしかないわけですが……。
 さて、スマホが普及する一方で携帯電話が急速に廃れてしまっていることを考えても、デジタル革命が急激に進み社会が激変していることを実感していますが、人間が「社会の激変」を経験するのはこれが初めてではないことを、エイヴェントさんは思い出させてくれます。本書のエピローグで、次のように語っています。
「今楽観すべき最大の理由は、人類には産業革命の体験があることだ。人類は苦しい変化をくぐり抜け、産業革命の数々の危険を目の当たりにし、最終的にはそれを広範囲に及ぶ生活向上に役立てる方法を知った。」
 ……確かに。産業革命の時代には、以前の仕事が無くなった一方で、新しい仕事が生まれ、人間は新しい職業に就くことで新しい人生を切り拓いてきました。私も知恵と勇気をふりしぼって、この激変する社会に適応していきたいと思います。
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