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第1部 本

ビジネス・経営

イノベーションの知恵(野中郁次郎、他))

『イノベーションの知恵』2010/10/21
野中 郁次郎 (著), 勝見 明 (著)


(感想)
 イノベーションを成し遂げた変革のリーダーに共通する知の作法を、徹底解明している本です。
 取り上げられている成功事例は、「旭山動物園」や「エキュート」など全部で9つ。成功を導いた優れたリーダーには、「現場で個別具体のミクロの背後にある本質をつかみ、普遍的なマクロの概念に結びつけて判断する」実践的な知恵、「実践知」があるそうです。
 この本では、成功事例を「物語編」と「解釈編」に分けて解説しているのですが、解説部分だけでなく物語部分もあるので、具体的な状況がよく分かり、実感として「実践知」をとらえられるのではないかと思います。
 成功事例として詳しく紹介されている事例は次の9つです。
1)動物園の奇跡 旭川市立旭山動物園(「目的×手段×行動」が実現した「日本一」)
2)学校の奇跡 京都市立堀川高等学校(「受験」と「生きる力」の二兎を追う)
3)エキナカの奇跡 JR東日本・エキュート(「通過する駅」から「集う駅」へ)
4)トヨタの奇跡 トヨタ自動車・iQ(「カイゼン」を超えて「飛ぶ発想」へ)
5)霞ヶ浦の奇跡 アサザプロジェクト(「死の湖」から「トキが舞う里」へ)
6)障害者福祉の奇跡 社会福祉法人・むそう(知的障害者の能力を「地域再生」に)
7)オフィス空間の奇跡 再春館製薬所(「監視」から「共創」へ)
8)過疎の町の奇跡 いろどり(葉っぱがお金に化けた!)
9)都市の奇跡 銀座ミツバチプロジェクト(東京・銀座は「ミツバチの天国」だった!)
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 これらの事例を通じて、「理論的三段論法」ではなく「実践的三段論法」を身につけることや、「モノ的発想」から「コト的発想」へ転換すること、「考えて動く」ではなく「動きながら考え抜く」など、「イノベーションの本質」として重要なことをいろいろ考えさせてくれます。
 参考になること満載の本でしたが、個人的に一番驚かされた事例は、実は、上記の9つ以外のものでした(汗)。序章で、「脱藩浪士の組織」を結成し「維新」を実現した老舗企業の挑戦として紹介されていた内田洋行の話。
 内田洋行は、激変しつつある情勢に対応するためビジネスモデルを変えようとしていたのですが、既存の縦割りの事業部制を解体しようとしても抵抗が強く、なかなかうまくいかなかったそうです。そこで発想を転換し、古い体質に染まっていない新入社員だけを集め、既存のマネジメントの枠から完全に外す独立組織(合法的脱藩浪士の組織)をつくったのだとか。そして、この新入社員だけの組織がきちんと育つまで、既存の組織に潰されないよう鎖国政策をとってコクーン(まゆ)として大切に育て、彼ら合法的脱藩浪士たちが見つけ出した新しい価値が世のなかに認知されるようになってから、既存のおじさんたちもそこへ移っていくという方法で、新しいビジネスモデルを作り上げたそうです。なるほど……既存の体質から脱皮するために、こんな凄い工夫が出来るような老舗企業があるんですね……。
 また「生徒が自分で考え、学ぶ教育」を実現するために、「探究科」を始めた京都市立堀川高等学校の取り組みも素晴らしい☆ 生徒が年々「考えること」をしなくなってきたことを憂慮して始めた取り組みのようですが、「最初は「型」にはめ、「守・破・離」で自分のやり方に変えさせる」という方法は、企業での社員教育の方法としても活かせそうな気がします。
 新しい技術革新のスピードが速すぎて、世の中の動きについていくだけで必死ですが、効率ばかりを追いかけていると、改善を考える余裕もなくなって、いろんな問題が続出してきてしまいます。一度立ち止まって、この『イノベーションの知恵』などの本から、自分の仕事に何かヒントを得られないか(改善できないか)を考えてみることが、より良い企業経営(仕事)に繋がっていくのではないでしょうか。
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 野中さんの他の本『知的機動力の本質』、『全員経営』に関する記事もごらんください。
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 野中さんは、他にも『イノベーションを起こす組織 革新的サービス成功の本質』、『アジャイル開発とスクラム~顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント』、『失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇』、『知識創造企業』、『知識経営のすすめ―ナレッジマネジメントとその時代』などの本を出しています。
 なお社会や脳科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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