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第1部 本

歴史

ネオ階級社会はここから始まった 1974年、見過ごされた転換点(林信吾、葛岡智恭)

『ネオ階級社会はここから始まった 1974年、見過ごされた転換点』2010/9/16
林 信吾 (著), 葛岡 智恭 (著)


(感想)
 一九七三年のオイルショックを乗りこえたかに見えた一九七四年を転換点として、「日本型」の政治・経済システムの変化を振り返る本です。近代から現代までの日本の歴史(政治・経済)をとても分かりやすく解説してくれています。
 実は、日本の歴史について学校で詳しく学んだのは、明治時代ぐらいまでで、大正時代以降のことは、第一次、第二次世界大戦のことをさらっと勉強したかな、という記憶しかありません(汗)。なぜか学校の授業では、現代に近い歴史を、三学期の終わりごろに「時間がなくなったから各自で読んでおくように」と言われて終わったような気がするのは私だけでしょうか? その結果、現代史については、「あ、やらなくても構わないんだ」と素直に(?)受け止めてしまい、きちんと勉強しなかったので、この本を読んで、「現代の日本の歴史って、こういう経緯をたどってきたんだ……」とようやく理解できたような気がします。
 しかも歴史について、遠慮のない表現で解説しているので、すごく分かりやすいのです。
 例えば明治維新について、
「そもそも明治維新とは、日本が、一足早く「文明開化」を成し遂げた欧米列強によって、侵略・植民地支配されてしまうことへの危機感から生じた、受動的な革命であった。(中略)
 もう少し具体的に述べると、誕生まもない「明治国家」は、こうした庶民階級の不満と世襲の特権を取り上げられた、旧武士階級の反発に向き合わねばならなかった。
 対外的に、日本はれっきとした国民国家である(したがって、宗主国を持つ必要がない)ということを示す必要があったと同時に、内部的にも「国家」の求心力を高めていかねばならなかった。ここから導きだされた答えが、天皇神格化であり、その天皇を頂点とする国民統合であったと言える。」
 という風に、直接的な表現で明快に語りかけてくるのです。
 なるほど、こういう見方(評価)もあるんだなあ、と現代日本史(政治・経済)への新しい視点を与えられたような気がしました(筆者のすべての視点に、完全に同意するわけではありませんが……)。
 これ以外でも、例えば、大半の日本人にとってすでに「過去の歴史」となっている第二次世界大戦について、一九七四年に帰国した小野田元陸軍少尉の話から始めるなど、できる限り身近なものとして感じられる素材を使って解説しようとしてくれているように思います。
 一九七四年前後には、ニクソン・ショックや、ニクソン大統領と田中首相の辞任など、政治経済の方向を左右する大きな出来事がいくつかありました。この年で、官僚主導で大国の地位を目指していた日本の政策は完全に行き詰り、「日本型」の政治・企業風土などが一気に崩壊過程に入って、現在の閉塞感に覆われたネオ階級社会への道筋がつけられたと著者たちは言っています。
 近代~現代の日本の政治経済に関する解説書というと、専門用語で漢字だらけの文章を読むだけで頭が痛くなり、数ページで挫折する……という印象でしたが(汗)、この本はとても明快で読みやすいだけでなく、飽きてきそうな中盤には、プロ野球や企業スポーツの話で興味を持続させる仕組みもあり、最後までいっきに読み通すことが出来ました。おかげで、欠けていた「近代~現代の日本の政治経済に関する教養」を、ちょっぴり補完できたように思います。
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 林さんは、他にも『大日本「健康」帝国―あなたの身体は誰のものか』などの本を出しています。

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