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第1部 本

ビジネス・経営

再起動 リブート―波瀾万丈のベンチャー経営を描き尽くした真実の物語(斉藤徹)

『再起動 リブート―――波瀾万丈のベンチャー経営を描き尽くした真実の物語』2016/12/16
斉藤 徹 (著)


(感想)
 バブルに踊らされ、金融危機に翻弄され、資金繰り地獄を生き抜き、会社分割、事業譲渡、企業買収、追放、度重なる裁判、差し押さえ、自宅競売の危機をようやく乗り越えて、たどり着いた境地は……注目のベンチャー企業経営者の迫真の告白ノンフィクションです。
「僕は4回死に、そのたびに復活した」
 波瀾万丈のベンチャー経営を描き尽くした真実の物語。4回の失敗と復活……本当にジェットコースターのような凄まじい浮き沈みっぷりに驚かされました(汗)。本の冒頭で「僕には四度、死ぬチャンスがあったんだ」と語っていたので、危機を乗り越えた後に旧友を誘って再挑戦する事業の行く末も(ああ……これもダメになるんだ……)とあらかじめ想像できてしまい、上手く軌道に乗っている時の話ですら苦しい気持ちで読んでしまいました(涙)。それでも……何度どん底に突き落とされても、知恵と根性と体力さえあれば、また立ちあがることが出来るのだなと痛感させられました。
「一度しかない人生だ。せっかくこの世に生まれてきたからには、困難な壁に挑戦したい。」
 そう思って斉藤さんは、日本IBMを退職してベンチャーの世界に飛び込んだそうです。
 最初に創業したフレックスファームは、ダイヤルQ2ブームに乗り、瞬く間に月商1億円を突破。アダルト路線はやりたくなかったので、「プロレス道場」を始めたところ、たちまち大ヒットしたのです。システム開発が得意な斉藤さんは、Q2番組のコンサルティングや運用代行サービスも始めました。こうして会社は急成長を遂げましたが……ダイヤルQ2に陰りが出始めると、たちまちバランスを崩して危機に陥ってしまいます。そしてまるでドラマのような転落人生へ一直線(涙)。嫌だったはずのアダルト系事業にも手を出すことになり、脅しまがいのクレームへの応対、火事場のような資金繰り対策、口座差し押さえと裁判への対応……難局が絶え間なく押し寄せてきます。そして窮地に陥った彼を(いったんは)救ってくれた経営コンサルタントへの依存を深めることになり、容易に足抜けできない泥沼に落ちることになってしまいました。借金をしながら高級車を乗り回し……この頃の姿は、ご自分でも認めていますが、放漫経営者そのものです(涙)。
 自殺がリアルに感じられるほど追い詰められながらも、斉藤さんはなんとか踏みとどまりました。「今起きているトラブルは、すべて僕の甘さや判断ミス、そして恐怖心から来たものだ。そこから目を背けずに、正面から向き合おう。」覚悟を決めた斉藤さんは、売上の大半を占めるアダルト系事業を経営コンサルタントに無償で譲渡し、借金を丸抱えして再出発を図ります。
 こうして背水の陣でのぞんだ一度目の再起動(リブート)は成功し、フレックスファームはテクノロジー・ベンチャーとして復活しました。そしてベンチャーキャピタルから出資を受け、光通信から大型プロジェクトも受注して順風満帆と思われた矢先に、銀行から貸しはがしにあい、一転して苦境に……しまいにはフレックスファームを追い出されてしまいます。
 生活費にも困るようになった彼は、手持ちのものをヤフオクで売ったことから、今度は「中古オフィス資産」をネットで売買するビジネスを立ち上げます。まさに不屈の精神。
 さらにSNSの可能性に目をつけた斉藤さんは旧友の福田さんを誘って、新会社のループスを立ち上げます。本当に懲りない面々です(笑)。この時、彼が仲間を誘った際に言った言葉は、ベンチャー魂そのものだと思います。
「人生の密度が濃くなる感覚は、ちょっと形容しがたいですね。一度経験してしまうと元に戻れない。言葉は悪いけど、起業には一度ハマるとやめられない依存症のような魅力があるんですよね」
 そういえばベンチャーって、もともとの意味は「冒険的な企て」。まさに冒険家なんですね。
 とは言っても、もっと慎重なビジネスプランのもとに起業するベンチャー経営者も多いのだと思います。ここまで「絵に描いたような波瀾万丈のベンチャー経営」を続けるには、相当な胆力が必要なのではないかと思います。……胃が痛くなりそう(汗)。
 この本では、斉藤さんが創業した会社の経営にもがき、幾多の危機を切り抜けてきた経緯がとてもリアルに描き出されています。4回の失敗も成功も、ベンチャービジネスの経営者にとっては、とても参考になると思います。心に響く言葉も、たくさん見つけることが出来ました。
「苦しい時こそ素直になることが何よりも大切だったな。反省し、心を開き、助けを請い、誠実に振る舞うこと。そうすることで新しい自分が生まれてくるんだと思う。」
 ……個人的には、読むことで励まされたというよりは、ベンチャー経営者の大変さや危うさを思い知らされた本でしたが、危機に陥った時の「心の立て直し方」を知ることが出来て、とても有意義だったと思います。この本を書いてくれたことに感謝します。そして、今後の事業の成功をお祈りします☆
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 斉藤さんは、他にも『ソーシャルシフト 新しい顧客戦略の教科書』、『超高齢社会マーケティング---8つのキーワードで攻略する新・注目市場の鉱脈』などの本を出しています。
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 別の作家の本ですが、『事業再生学 中小企業の経営管理と危機対応』、『いのちの再建弁護士 会社と家族を生き返らせる』、『魂の会社再建 ―ドキュメント 再建弁護士の会社救済ファイル2』など企業再生の参考になる本は多数あります。また『再生』は、波乱の半生を歩んだプロ野球選手が自らのありのままを語っている本です。

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