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第1部 本

社会

100年予測(フリードマン)

『100年予測 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 』2014/6/6
ジョージ・フリードマン (著), 櫻井 祐子 (翻訳)


(感想)
「影のCIA」の異名をとる情報機関ストラトフォーの創設者のフリードマンさんが、21世紀に起こる政治・経済の危機、国際紛争、宇宙や自然エネルギー開発を、地政学的見地から予測した本です。
 予測によると、 2020年までに中国は分裂の危機に瀕し、ロシアはアジアや欧州に進出するものの混迷を深めていきます。そして2050年、勢力を増した日本とトルコは、米国、ポーランドと世界戦争に突入、その後、世界の中心は北米大陸に移り、メキシコと米国が頂上決戦へ……という方向へ進んでいくというのです。
 正直に言ってこの予測が的中するとは思えませんが(汗)、各国の実情や地理的条件、「歴史は繰り返す」ことなどを踏まえた上で予想しているので、かなりの説得力を感じたことも事実です。
 この予測の中で日本は、21世紀半ばに、なんとアメリカと宇宙戦争(?)を起こすのですが、その原因の一つがエネルギー不安と高齢化による労働力不足だという分析は妥当なものだと思いました。でも、その解決策として日本が、その時点で不安定化している中国やロシアに進出を企ててアメリカとの緊張関係が高まり、同様に西側から中国・ロシアへ進出を企てているトルコと同盟を結んでアメリカと戦争を始める……というシナリオにまで進むとはとても思えません。なぜなら日本は労働力不足問題を「戦争で解決する」道を選ぶよりは、「高齢者の労働力活用とロボット技術で解決する」道を選ぶだろうと思うからです。60歳以上でも元気な高齢者というのはすごく多いですし、本人の楽しい老後のためにも、働く気のある方には働いて稼ぐ第二の人生を送ってもらうべきではないでしょうか。もちろん若者と同じぐらいバリバリ働くというのには無理があるので、体力的にあまりきつくない仕事をしてもらう必要があるとは思いますが……。もっとも、実用化が始まっているロボット技術を活用し、そのオペレータとしてなら、高齢者にも「体力が必要な仕事」も出来るようになるかもしれません。いずれにせよ、戦争に突入するよりは、マシな選択肢がいくらでもあると思います。
 ということで「予測は当たらないだろう」とは思います(というか、外れて欲しいです)が、それでもこの本を読んで、すごく勉強になることがたくさんありました。特に、第二次世界大戦以降の近代の世界的な歴史や各国情勢を俯瞰することができた点や、それらを踏まえて合理的に予測する道筋を見せてもらえた点などに、すごく価値を感じました。本書の解説で、戦略学博士の奥山さんが「本書の最大の特徴は、その予測の正確性にあるのではなく、むしろ予測を導き出す際に著者がどのような質問を「土台」として想定しているのか、その予測の「アプローチの仕方」がどのようなものかを、あますことなく教えてくれている点にあるのだ。」と言っている通りの内容だと思います。
 世界情勢に興味のある方は、ぜひ読んでみてください☆
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 この本には、続編となる『続・100年予測』、『新・100年予測――ヨーロッパ炎上』があります。
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 別の作家の本ですが、『マッキンゼーが予測する未来―――近未来のビジネスは、4つの力に支配されている』、『超予測力:不確実な時代の先を読む10カ条』、『予測の技術 微分・積分と確率・統計で ビジネスの未来を読む』、『なぜあなたの予測は外れるのか――AIが起こすデータサイエンス革命』など今後の社会を予測する上で参考になる本は多数あります。
 なお社会や脳科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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