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第1部 本

ビジネス・経営

成功は一日で捨て去れ(柳井正)

『成功は一日で捨て去れ』2012/3/28
柳井 正 (著)


(感想)
 数々のヒット商品を生み出し、グローバルな挑戦を続けるユニクロ。その背後には大企業病の阻止、後継者の育成、海外展開、社内構造改革等へのたゆまぬ努力の連続があった……世界一を目指す組織はいかにして作られたのか、経営トップの柳井さんが明かしてくれるユニクロ変革の記録です。
 ユニクロというと、店内壁面を埋め尽くしていた色とりどりのフリース、スキニージーンズ、ヒートテック、ブラトップなど数々のヒット商品がすぐに思い浮かびますし、主要駅近くに大型店がたくさんあって、快進撃を続けているイメージが強かったのですが、この本を読んで、数多くの失敗もしていたのだと意外に思いました。
 そう言えば、失敗の一つの「野菜事業」は、発表された当時「マジか」と驚きをもって受け止め、結局は撤退することになったのを知って「やっぱり……」と感じたものでした(汗)。なぜなら、最初からあまりシナジー効果が期待できないと思っていたからです。恐らく「安全で新鮮な野菜を消費者にとどけたい」という気持ちから始めたのだとは思いますが、そもそも衣料品と食品は、作り方から流通・保管の仕方までまったく違うので、これまでの資産の活用も難しかったのではないでしょうか。それでも、ユニクロは本当に、「自分の頭で考えて」「失敗を恐れずに実行する」企業なのだなと思い知らされる出来事だったと思います。
 このような失敗が少しはあったことは知っていましたが、それでも売り出し日の大型店の混雑っぷり、繁華街を歩く数多くの人々が持つユニクロの袋などを見ると、安定成長している大企業って凄いなと思っていました。
 この本では、それなりに安定成長を続けてきたユニクロでも、内部では大企業病と戦っていたり、M&Aに失敗していたりと、苦労してきた様子が克明に描かれています。事業の拡大、各種の店舗展開、多角化路線の参入と失敗、他社買収・提携、海外展開……休むことなく、精力的に経営してきた経緯を、経営者の柳井さんが、自らの経営哲学とともに語ってくれるので、色々な意味ですごく参考になりました。
「企業経営は、何でも実際にやってみないと分からないことが多い。完全なものができるまで待っていたら、何にもできない。自分の会社や事業として、単純に「こんなことをしたい」のではなく、常に「どうあるべきか」を考えて決断しなくてはならない。多くの人が、自分に果たしてできるだろうか、自分には能力がないのではないか、こんなことよりも自分は別のことをしたほうがいいのではないか、などと思い悩む。それで失敗するのだ。」
「やってみて失敗だったと気づいたら、それを素直に失敗と認め、すぐに変更していけばいい。今まで上場以来、ぼくはそれを躊躇することなくやってこられた。それが良かったのだと思う。野菜事業やファミクロ・スポクロの失敗と撤退はその典型だ。」
「ぼくは常日頃から会社というのは、何も努力せず、何の施策も打たず、危機感を持たずに放っておいたらつぶれる、と考えている。常に危機感を持って会社経営することが正常なのである。「正常な危機感」とでも言おうか。」
 ……読んでいると、ハッとさせられる文章にいくつも出会うことができました。
 とくに「失敗を恐れない姿勢」「危機感を持って変わり続けようとする姿勢」は、変化が激しい現代の経営者にとって、すごく参考になるのではないでしょうか。
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 柳井さんとソフトバンクの孫さんの対談などが付録に掲載されている本『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者』に関する記事もごらんください。
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 柳井さんは、他にも『経営者になるためのノート』、『一勝九敗 (新潮文庫)』などの本を出しています。
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 別の作家の本ですが、『プロフェッショナルマネジャー』は、柳井さんの経営のバイブルと言われている本で、図解版の『超訳・速習・図解 プロフェッショナルマネジャー・ノート』もあります。

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