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第1部 本

描画技術

水彩画 リアルレッスン(福井良佑)

『水彩画 リアルレッスン (自宅で学べる水彩教室)』2014/11/21
福井良佑 (著)


(感想)
 実際に水彩画教室で教えている福井さんが、「教室でのアドバイス」「水彩で陥りやすいケース」「教室内の写真」などを盛り込んで、水彩教室に通っているような臨場感を味わいながら、自宅で水彩画を学べるように指導してくれる本です。
「第1章 水彩画を描く前の心得」「第2章 基本をマスターする」などの基礎講座から始まって、実際に描くときのコツとして「第3章 手順のヒント」「第4章 樹木と水面について」など具体的なアドバイスがあります。
 作例がとても豊富なので、技術的に参考になるだけでなく、絵そのものからも多数のヒントを得ることが出来ます。「樹木はシルエットを大切に」という項目の、夕暮れの空にそびえる樹木の絵などには、思わず引き込まれるように見入ってしまいました☆ こんな絵が描けたら、本当に素敵だろうなあ……。
 さて、参考になったことは多数あったのですが、なかでも「第2章 基本をマスターする」の「絵の具は乾くと2割淡くなる」、「樹木の色にパーマネントグリーンやビリジャンを多用する人を多々見かけますが、緑系の絵の具は彩度が高く穏やかな葉の色を表現するには不向きです。落ちついた色にするために他の色を幾つも混ぜるよりは、最初から青系と黄系(または橙系)の二色だけで混色をすれば素早く樹木の色をつくることができます。」という文章を読んで、今まで何となく抱いていた不満や疑問がようやく解けました(汗)。
 また「補色同士または遠い色同士を混ぜてグレーをつくりましょう。」……そうか、陰影部分を予め灰色で描いておく「グリザイユ技法」に使うグレーは、白と黒の絵の具で作るのではなく(こうすると不透明水彩になってしまう)、こうやって補色同士を使って作った方がいいんですね……(汗)。その他の混色例も、実際にその色で描かれた絵とセットで見せてもらえるので、すごく分かりやすかったです。

 さらに「第1章 水彩画を描く前の心得」の「塗り残しは単なる余白ではなく、空間や物として表現できるのです。そこが透明水彩の最大の魅力であり、特権と言えるでしょう。」という話も、確かにそうだなと思いました。「塗り残し」があると未完成品みたいで、つい何か色を塗りたくなってしまいますが(汗)、「塗り残し」にこそ味がでるのかも。
 そして最後の「透明水彩7訓」も、とても参考になりました。なかでも4の「待つこと」が。「ぼかし」など濡れているうちに素早く塗らなければなければならない技法以外は、乾くのをじっと待たないと、色が濁って絵が台無しになってしまうんですよね(汗)。「水彩の極意、それは待つこと」……心に刻みたいと思います。
1)透明水彩とは水と上手く付き合うこと
2)光と影に着目する
3)失敗ではなく発見と考える
4)水彩の極意、それは待つこと
5)実物描写ではなく、水彩の世界を描く
6)筆の置き所とはいわば妥協点
7)技法の前に描きたいものありき
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 とても参考になる水彩画技法書でした。実際に生徒さんを教えている福井さんならではの、分かりやすい説明&豊富な参考作品のおかげで、この本を読むだけで水彩画の技術を向上できそうな気がします(笑)。水彩画に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです。
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 別の作家の本ですが、『増補改訂 今日から描ける はじめての水彩画』、『DVDでよくわかる三原色で描く水彩画 DVD付』、『水彩画 静かな光を求めて―あべとしゆき制作ノート』、『水彩画 小さな光の音楽』、『水彩画 光を奏でるために』、『水彩画レッスンノート』、『イチバン親切な水彩画の教科書』など、水彩画を描く上で参考になる本は多数あります。

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