ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

ビジネス・経営

HARD THINGS(ホロウィッツ)

『HARD THINGS』2015/4/17
ベン・ホロウィッツ (著), 小澤隆生 (その他), & 1 その他


(感想)
 強力ライバルからの反撃、会社売却、起業、急成長、株価急落、最大顧客の倒産、3度のレイオフ……IT企業を経営してきたホロウィッツさんが、CEOとしての壮絶な実体験を通して得たすごく貴重な教訓を、惜しげもなく教えてくれる本です。
「マネジメントについての自己啓発書を読むたびに、私は「なるほど。しかし、本当に難しいのはそこじゃないんだ」と感じ続けてきた。」という文章で始まるこの本は、ネットスケープ、ラウドクラウド社、オプスウェア社のCEOを経験してきたホロウィッツさん自身が、自分の企業時、経営の苦闘時に本当に知りたかったであろうことを、自分自身の苦闘経験を通して語ってくれます。
「本当に難しいのは、大きな目標を設定することよりも、大きな目標を達成しそこねたときに社員をレイオフすること。(中略)本当に難しいのは、優秀な人々を採用することではなく、その優秀な人々が既得権にあぐらをかいて不当な要求をし始めたときに対処すること……」などなど、ホロウィッツさん自身が実際に苦しんで対処してきた体験を、赤裸々に話してくれているのです(涙)。
 ただし「非常に複雑で流動的な問題には、決まった対処法はない。ハイテク企業をつくるマニュアルなどない」のです。
 それでも「困難な経験から得られる教訓もあるし、有益な助言もある」と考え、「ゼロから何かをつくり上げようとして苦闘していう人々に、何かの手がかり、インスピレーションになるよう」に、この本を書いたそうです。
 読み進めるうちに、複雑な問題と苦闘する姿の圧倒的なリアリティに胸が苦しくなるほどでした。会社の売却やレイオフなどの記述が多く、日本の会社の状況にそのまま通用するわけではないと思いますが、問題への対処の仕方、レイオフの仕方、精神力の保ち方など、これから会社を起業しようと思っている方や、経営者を目指す方には、ものすごく参考になると思います。
 例えば、「つらいときに役に立つかもしれない知識」として紹介されるのは次の5つ(ここでは項目だけ紹介します)。
1)ひとりで背負い込んではいけない。
2)単純なゲームではない
3)長く戦っていれば、運をつかめるかもしれない
4)被害者意識を持つな
5)良い手がないときに最善の手を打つ
    *
 また、「なぜ偉大なCEOたちが迫りくる自らの運命にウソをつくのか」の理由として、「人間、特にものをつくる人たちは、良い先行指標にしか耳を貸さない。たとえばCEOは自社サービスの登録者数が通常の月間成長率を25%上回ったと聞けば、切迫した需要の大波に耐えらえるよう、すぐにエンジニアを追加するだろう。一方、登録者数が25%減少すれば、CEOは同じくらい熱心かつ緊急に言い訳の説明をするだろう(ポジティブな指標に対してのみ行動し、ネガティブな指標に対しては説明を探すだけだ)」という話には、すごく説得力がありました。
 そしてこれは、自分へのウソではなく、むしろ合理的な行動だとも感じました。なぜなら「登録者数が急増している=市場が拡大している」時にすぐに手を打たないことは、「利用者の不満を招いて自社離れを起こさせる」ことに直結しますが、「登録者数が急減」した時には、まずやるべきことは「原因追求」で、原因を除去すれば登録者数が回復するのかもしれないから、すぐにエンジニアを解雇するべきではないからです。……そうは言っても、この例を読むだけでも……CEOが「正しく」判断すべき問題の困難さがよく分かります……(汗)。
 ホロウィッツさんは現在は投資家として、創業者CEOの手助けをしているそうです。この本の出版もその一環なのでしょう。
 これは創業者CEOの方が、迷った時、悩んだ時に指針を与えてくれる、本当に「血の通った経営方法」を教えてくれる本だと思います。ぜひ一度、読んでみてください。
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 別の作家の本ですが、『アントレプレナーの教科書[新装版]』、『起業のファイナンス 増補改訂版 ベンチャーにとって一番大切なこと』、『起業のエクイティ・ファイナンス---経済革命のための株式と契約』、『経営者になるためのノート』など、起業や経営の参考になる本は多数あります。

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