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第1部 本

防犯防災&アウトドア

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今そこにある山の危険 山の危機管理と安心登山のヒント(岩崎元郎)

『今そこにある山の危険 山の危機管理と安心登山のヒント (ヤマケイ新書)』2014/11/28
岩崎 元郎 (著)


(感想)
 35年の登山指導者経験を持つ岩崎さんが、実例をもとに安全な山を楽しむための基礎知識を教えてくれる本です。
 近年、山での遭難事故が増加の一途をたどっているそうです。過去の遭難事故のトップは転倒・滑落だったそうですが、ここ数年は「道迷い」が事故のトップに躍り出ました。そうなった理由は、登山初心者の勉強不足にあるのではないかと岩崎さんは考えています。
 岩崎さんが登山を始めた五十年前は、登山技術や知識の習得は山岳会に入会して、先輩から直接指導を受けるのが一番早くて確実な方法だったとか。現在はそのころより登山用具も洗練されてきていますし、携帯電話などで救助を呼ぶことも出来ます(実際、携帯電話のおかげで救助されたというニュースも聞きます)。登山道なども五十年前よりは整備されてきているのかもしれません。また元気な高齢者も増えて、健康増進をかねた楽しみで登山を始める人も増えているような気がします。お金を支払って登山ツアーに参加することも出来るので、ガイドさん任せの登山を始める初心者の方もいるのではないでしょうか。しかも仕事の都合がつく日に休暇をとって登山をする場合は、多少天候が不安でも、せっかくここまで来たのだからと、無理して登ってしまうこともあるのかもしれません。
 でも「山」は天気が変わりやすい場所でもあります。気温の変化に対応できるようにし、万が一のための食料や装備を持ち……あっという間に荷物が重くなります。街の生活でなまった身体で、坂道を登るだけでなく重いリュックを背負わなければならないのです。重い荷物を抱えて「道迷い」したら……と思うとゾッとしてしまいます(汗)。
 楽しいはずの登山で、危険な目に遭わないようにしたいものです。
 この本は、前半の「山の危険認識と危機管理」で、まず山の持つ危険性について事例をあげて教えてくれます。
 すごく怖いと思ったのは、「山の雷の怖さ」。高所では雷は「横から」来るそうです。閃光が横からなぎ倒すような角度で突き刺してくる……考えてみれば、山にかかる雲は、山頂から「下」に見えることすらあるので、雷が横から来るのは不思議ではないのかもしれません。最近の雷は「いきなり」が多いとか。都市部でもそうですから、山でも同じなのでしょう。残念ながら「いきなり」の雷撃は避けようがないそうです。
 本の後半は「安全安心な山歩きのためのヒント」。
 「いきなり」の雷撃や火山ガスなど避けようがなさそうな危険はしかたないとしても、熱中症や低体温、疲労、道迷いなどは、準備やトレーニングで、かなりの程度、克服できるものだと思います。
 山でバテたくなかったら、1)ゆっくり歩く、2)水をよく飲む(たまに梅干しも食べる)、3)日頃のトレーニングが大切、だそうです。
「安全安心な山歩き」のためには、用具の準備、日頃のトレーニング、地図や道標をよく確認して登ること、不安だと感じたら引き返すことなどが大切なようです。山では天気が急変しやすく霧などのために周囲が見えなくなることもあるようですが、この場合は、確信が持てなかったら「じっと待つ」ことが肝心だとか。
 この本の「はじめに」に、山道で道に迷って大変な思いをして下山してきた登山者が、道標をもっと増やせと文句を言っていた、と書いてありましたが、重い荷物を背負って、道迷いをしてしまったら、そういう気分になるのは無理もないと思います。
 でも山は大自然にあるもので、登山は大自然を感じるためにするもの。そして山は、大自然だから素敵なのだと思います。
 事故を防止するには、一人一人の登山者の自立が必要だそうです。山登りは危険なものだと認識し、準備やトレーニングをした上で、登山を楽しみたいものです。
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 別の作家の本ですが、『山岳遭難の教訓 --実例に学ぶ生還の条件--』は、雪崩、高体温疾患、爆弾低気圧、低体温症、道迷いなど、の山岳遭難事故の背景を検証しながら、学ぶべきポイントを指摘してくれる本です。
 また、『山登りABC 山のエマージェンシー』、『山登りトラブル回避&対処マニュアル』、『実例から学べる! 山の病気とケガ』なども、とても参考になると思います。

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