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第1部 本

脳&心理&人工知能

現実を生きるサル 空想を語るヒト―人間と動物をへだてる、たった2つの違い(ズデンドルフ)

『現実を生きるサル 空想を語るヒト―人間と動物をへだてる、たった2つの違い』2014/12/10
トーマス・ズデンドルフ (著), 寺町朋子 (翻訳)


(感想)
 人間と他の動物とはどこが違うのかについて、動物行動学、心理学、人類学などの広範な研究成果をもとに探っていく本です。
『われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか』
 これはフランスの画家ポール・ゴーギャンの大作絵画の有名なタイトルですが、人間は自分が何者かについて、心理学や動物学などさまざまな観点から考察を加えてきました。この本では、心理学者のズデンドルフさんが、これまでの広範な研究成果をうけて、人間の心がもつ2つの性質が、高度な知性と人間らしさを生みだす様子を描きだしていきます。
 原書のタイトルは『The Gap(ギャップ)』。人間と他の動物とのギャップを説明するものとして、本書では、とくに6つの候補、「言語」「先見性(心の時間旅行)」「心の読み取り」「知能」「文化」「道徳性」に焦点をあてています。
 とりわけ人間にもっとも近い霊長類のサルと人間はどこが違うのかについて、これまでのさまざまな実験などの研究を具体的に紹介してくれるので、心理学に興味のある方への入門書としても役に立つと思います。
 人間とサルなどの他の動物は、どこが違うのか? 「言語」とか「文化」とか、違う属性の項目をあげるのは難しくなさそうに思えますが、実証するのは簡単ではありません。たとえば「言語」をとりあげても、類人猿は手話を使って意図を伝達することがありますし、霊長類やクジラも、動作や声で集団特有の行動を互いに伝え合っているようです。
 この本を読んで、人間と他の動物の違いについて、心理学者や動物学者が、どのように検証してきたかを知ることが出来て、とても興味深かったです。
 人間は、大きな脳の作業記憶容量を駆使して、さまざまなことを想像し(なんと実行不可能なことまで想像できます!)、情報をまとめたり組み合わせたりして新しいものを作り、言語や絵で記録し、過去の知識を活用したり、他者と広範なコミュニケーションを取ったりすることができます。
 それに対してサルは、より現実的に生きているようです。
「言語」「先見性(心の時間旅行)」「心の読み取り」「知能」「文化」「道徳性」の6つの領域では、動物も各種の能力を持つことがあるようですが、いろいろな点で人間の持つ能力が格別です。またこれらの領域で、明らかになってきた人間の2つの特性、すなわち「想像する能力(入れ子構造を持つシナリオ構築力)」と「心を他者の心と結びつけたいという衝動」が、人間と他の動物とのギャップを拡大させてきたようです。
 この本では、人間と他の動物との違いだけでなく、旧人類に関する研究についても概観することができます。幅広い観点から、人間の心の本質に迫る科学ノンフィクションです。
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 別の作家の本ですが、霊長類や進化を研究した本には他にも『道徳性の起源: ボノボが教えてくれること』、『モラルの起源―道徳、良心、利他行動はどのように進化したのか』、『私たちは今でも進化しているのか?』、『若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来』など、多数あります。

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