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第1部 本

自己啓発・精神力

「自分」の壁

『「自分」の壁』2014/6/13
養老 孟司 (著)


(感想)
 脳、人生、医療、死、情報、仕事など、あらゆるテーマについて、頭の中にある「壁」を超えたときに、新たな思考の次元が見えてくる……ベストセラーの『バカの壁』から11年後(2014年)の、養老さんの新たな「壁」シリーズ・エッセイ集です。
「自分」とは「今自分はどこにいるのかを示す矢印」くらいのものに過ぎないのではないか、と養老さんは言います。だから「個性を伸ばせ」「自己を確立せよ」という無理な教育をするよりも、「世間と折り合う大切さ」を教えた方がはるかにましではないかと。
 今回は「自分(の壁)」がテーマのエッセイ集ですが、内容は、エネルギー問題、教育問題、政治の問題と多岐に渡っています。
 なかでも特に面白いと感じた話が三つあり、その一つは「参議院」についての意見。今の参議院は衆議院とあまり違いがありませんが、それを変えて、参議院には、政局と関係なく、大きなテーマ(長期的なエネルギーや自然の問題)を考えるという役割を担わせたらどうかという話で、これ、すごく良い意見だなと思いました。
 二つ目は「いじめ」問題。養老さんはNHKの番組で、どうやったらいじめをなくせるかと聞かれたことがあったそうです。それに対して、「あんなものなくなるわけがない。それが結論です。」と言い切ってしまいます。そして、なくならないからこそ、「むしろ考えておくべきなのは、いじめられたときの対処法です。」「なくすことを考えるよりは、いじめられた子が自分の逃げ場所をつくれるようにしたほうがいい。世界を広げるのです。」と。……そう、その通り!と思いました。「いじめ」は人間社会のどこにでも発生すると考え、いじめられている人に逃げ場所を与えてやることや、「受け流し方」「対処の仕方」のトレーニング(リハビリ)がゆっくり出来る環境を作ってあげる方が、現実的だと思います。もちろん「いじめ」が発生しないようにする環境作りも大事ですが……。
 そして三つ目は「参勤交代」の話。これは、都市に住む人に、年間数カ月は田舎に住むことを義務付けることだそうです。これによって過疎地が変わり、内需拡大も出来るし、新しい視点も生まれるとか……かなり乱暴な意見のようにも思いましたが(汗)、これが現実になると、日本人の生活がより楽しくなるような気がします(笑)。
 これ以外にも、数多くの参考になる意見や提案をしてくれているので、ぱらぱら読んでいるうちに、いろんなことを考えさせてもらえると思います。
 今回のテーマは「自分の壁」でしたが、「目の前に問題が発生し、何らかの壁に当たってしまったときに、そこから逃げずに、迷ったり、ときには面倒を背負いこんだりする」ことが大事なのだな、と感じました。
「何かにぶつかり、迷い、挑戦し、失敗し、ということを繰り返して自分で育ててきた感覚のことを「自信」というのです。」
 ……挑戦し、失敗し、また挑戦し、迷いながらも目の前のことを精いっぱいやっていって、ときおり世の中に役に立つ……私もそんな人間でいたいと思います(汗)。
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 養老さんの他の本、『バカの壁』、『唯脳論』、『解剖学教室へようこそ』、『考えるヒト』に関する記事もごらんください。
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 養老さんは、他にも『養老訓』、『かけがえのないもの』、『養老孟司の大言論I 希望とは自分が変わること』、『養老孟司の大言論II 嫌いなことから、人は学ぶ』、『養老孟司の大言論III 大切なことは言葉にならない』など本を出しています。

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