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第1部 本

自己啓発・古典&定番

アレキサンダー最強の帝王学

『アレキサンダー最強の帝王学―「自分の可能性」に挑む、奇跡の10年!』2005/2
ランス カーク (著), Lance B. Kurke (原著), 青井 倫一 (翻訳)


(感想)
 わずか十年でヨーロッパとアジアをまたぐ大帝国を築いたアレキサンダー大王。その生き方を通じて、34の史実とエピソードに学ぶ「人の上に立つ人」のための帝王学です。
 学校の歴史の授業で初めてアレキサンダーの偉業を知った時、まるで映画の主人公のようなドラマチックな生きざまに驚嘆しました。二十歳でマケドニアの王位に就き、わずか十年でヨーロッパとアジアをまたぐ大帝国を築いたのに、三十三歳でバビロンで病死、そして大帝国は崩壊……。まさしく「邯鄲の夢」、というか、巨大な蜃気楼のようです。
 この本では、アレキサンダーが自分の可能性に挑んだ奇跡の10年に焦点をあて、彼がどのように困難に勝ち抜いていったかを教えてくれます。
 その原動力は、戦闘能力よりも、むしろ非凡な問題解決能力と巧みな心理戦にあったとか。優れたリーダーになる資質とは何か、アレキサンダーの生き方から、リーダーシップへの四つの鍵が見いだせるそうです。その4つとは、
1) 問題を「組み立て直す」(「得意技」で勝負する・「第三者」をうまく動かす 等)
2)「提携」を作り上げる(「降した敵」を忠実な「信奉者」に・懐柔策か懲罰か 等)
3)「一体感」を確立する
4)「象徴」を使いこなす
 だそうです。
 なかでも「1)問題を「組み立て直す」」には、参考になる多くの考え方がありました。
 最初のエピソード、難攻不落「テュロス要塞」の攻略時、ペルシャの200隻もの無敵海軍に対し、アレキサンダー軍には小さい沿岸艦隊と食糧運搬用の小さなはしけのみ。この圧倒的な戦力差に、アレキサンダーは敵に正面から挑まず、「海軍を地上戦で破る」という快挙をなしとげました。具体的に言うと、自分のはしけの航路から二日分の漕艇圏内の「真水」の供給源を掌握してしまったのです。敵の大艦隊にはもちろん大量の「真水」が不可欠なので、それを供給するテュロス島への突堤を築いて包囲攻撃したのでした。
 またペルシャを支配した後、今日のアフガニスタンへの進撃の時には、多くの戦利品をかき集めすぎて軍の機動力がそがれてしまったことがあります。アレキサンダーはすべての兵士を集めて、機動力の重要性を訴え、戦利品を積んだ自分の荷馬車を燃やしました。すると他の兵士もそれに従って自分たちの戦利品を燃やしたので、機動力を回復できたそうです。
 この本では、このように具体的なエピソードを通して、リーダーとしての資質は何かを教えてくれます。
 トルコ征服などの初期の戦いでは「奪え、破壊せよ、焼き尽くせ、それを先触れして伝えよ」と残虐さが目立ったアレキサンダーでしたが、ペルシャとの戦いでは、敗れた王族たちは手厚く扱われました。初期のアレキサンダー軍には使える兵力も資力も少なかったので残虐になるしかなかったのですが、後期には余裕が出てきたので雅量を示すことが出来るようになったのだと著者のカークさんは分析していますが、アレキサンダーは、ペルシャよりさらに「東」を見ていたから、ペルシャを寛大に扱ったのではないかとも思います。さらに東を征服するためには、広大で強大なペルシャに離反されたくないと考えたので、ペルシャを懐柔しようとしたのではないでしょうか。
 この本を読むと、アレキサンダーには非情で残虐な性格や軽率な行動もあったようで、必ずしも「優れたリーダー」とは言えない面も多いようですが、非情なほどの力強さがなければ、短期間でこれほどの快進撃を遂げられなかったのではないかとも思います。
 そしてなんといっても若き王アレキサンダーの凄いところは、いつも自らが戦いの先頭に立って指揮をとり、敵から奪った財宝を兵士と分かち合ってきたところ。だからこそ兵士たちはアレキサンダーに自らの命を預け、必死で戦ったのでしょう。彼の緻密に戦略を練る力と、部下を大事にし自ら先頭に立って戦う力の両方があってこそ、偉業をなしとげることが出来たのだと思います。
 すごく昔の英雄的偉人ですが、21世紀の今でも、私たちに貴重な教えを与えてくれると思います(一部、反面教師なところもありますが(汗)、それも大事な教訓になると思います)。

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